考えすぎる女

天皇は俺

考えすぎる女

日に照らされた湖に沿うようにして、長い道路が伸びている。


自動車の助手席に座りながら、高梨伽耶は別れた男のことを考えていた。


彼女は考えすぎる女だ。


何故別れてしまったのか、何がいけなかったのか、彼のどこが好きになったのか、そもそも愛とは、男女とは。


一度考えだすと取り留めなく疑問とテキストが脳から迸り、とにかく落ち着いて眠れない。


気になったが最後、前まで考えていたことなど忘れて、思考に没頭してしまうのだ。


一度廻り出した思考は止まない。

別れた男のことなど当然考えたくもないのだが、それとは別に脳は勤勉に働き続ける。


彼女はふと窓の外の景色をチラと見た。

後ろへ後ろへと流れていくそれらの中で気掛かりなものを見つけた。


それは赤い壁をした古い民家のような建物で、屋根に立てられた黄色い看板に黒い文字で

「すふわん」と書いてあった。


そんな景色も一瞬で流れ去る。



...。


...。


...すふわん?


何だそれは。気になって、手元のスマートフォンで調べてみた。検索結果は0。


むぅ、気になる。

しかし何か確かめようにも、もう走り去ってしまった。

Uターンできる場所もないし、運転してもらってる分際で友人にそんなことを頼む訳にもいかなかった。


ただ、すふわんへの疑問だけがわだかまる。


すふわんとは何だ?何故、すふわん?

すふわんの何が気になったのか、そもそも私の視点が仮想空間でのシュミレーションだという可能性が...


燦々と輝く湖の脇を白い普通車はひた走る。

彼女は考えすぎる女だ。

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