第6話 母親はぐっすりと眠りたい

チェンが視た夢は凄惨な内容だった。


下校中にミシェルが複数のマスクをつけた男たちに攫われ、廃墟に連れ去られ、惨殺されてしまう。


世にも恐ろしい悪魔の所業にチェンは吐き気を催し、トイレに行きたいが身体が震えて上手くベッドから抜け出せない。


さらに、また叫びながら目を覚ましたらしく、すぐに母親が何事かと部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「一体どうしたのよ!?」


知らずに鍵をかけてしまっていたらしく、母親がドアノブの音をガチャガチャと鳴らし、「開けなさい!!」と喚く。


ガタガタと震える身体をなんとかドアまで持っていき、鍵を開けると、部屋に入ってきた母親は、キョロキョロと部屋の中を見てから、僕の様子を凝視する。


「とんでもなく大きな声で叫んでいたわよ。。。また、怖い夢をみたっていうの!?」


母親の剣幕が凄かったので、チェンは怯んで頷く。


「も、もう大丈夫だから、お母さんはもう寝てていいよ。」


チェンは母親の顔色を伺う。手をだらりと下げた母親は、目を瞑り視線を床に落とす。


「あなたが夜中に叫びだす度に私が目が覚めていること、知っているわよね。」


母親の声は震えていた。


「近所の人にも迷惑だって怒られて、私が謝って回っているんだということも、わかっているわよね…わざと、なのかい?」


「そ、そんな…わ、わざと、じゃないよ。」


「なんでよ…」


「な、なんでって、何が…?」


「なんで貴方はまともじゃないのよ!!」


母親は怒り狂ったよう目を見開き、近くにあったおもちゃを徐につかむと、それを壁に向かって投げつけた。


チェンの身体はビクッとなった。


ふー、ふー、…


静寂に荒い息遣いが響いた。


チェンは足が震えが止まらなかった。


近所から、「うるさいぞ!」という怒鳴り声が聞こえると、母親は無言で部屋を出ていった。


少し経つと、すすり泣く声が聞こえて来て、チェンは恐る恐るドアを閉めた。


母親に構う余裕などなく、チェンはガタガタと震えながらその日は一切眠りにつくことができなかった。



第八話『』

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