第35話 再会

 三年の月日を経て、シャトルはようやくランデブーポイント間近へと迫る。


『バルト』は既にポイントに到着しているようで、プリン船長たちの合流を待っている状態だった。


「プリン!『バルト』が見えたよ!」


 すっかりお友達となったお調子者のミルキーが、興奮した様子でプリンに話しかける。


 負荷トレーニングを終えたプリンはタンクトップを来て汗だくになっていた。


「ええ~!!またトレーニングしてたの~?」


「特にやることもないからな。それに、三年も無重力だと、重力下に戻った時に、流石に色々と弊害が出るだろう。」


 シャトルには、様々な訓練設備が整えられていた。


 足腰を鍛えるために、重量に頼らずに重量を調節できるスクワットマシン。


 無重力から重力下に入った時に歩けるように訓練するため、上から圧力を受けたままで歩く練習をするウォークウェイ。


 重力下で起こるであろうと予測される起立性低血症の症状を防ぐため、血液を脚側に流すように、手と胴体を縛られて、手の側の方向からジャイアントスイングされるマシン。できるだけ大きく回るように作られているとはいえ、少し目が回るのが難点だ。目が回らないようにするコツは、目を閉じることだ。


 プリンは少なくとも毎日何回かに分けて数時間、これらの設備を利用していた。


 その他、全身の筋肉が衰えたり骨が衰えることがないようにするための、様々な筋トレに対応した負荷マシンが使え、プリンは頻繁に筋トレを行っていた。


「お前たちこそ、トレント以外はトレーニングをサボっていたようだが、重量の影響を受け始めたら、慣れるまでまともに立つことだってできやしないかもしれないぞ。」


「またまた~。プリンってば、そんな脅かして。そんなん大した事ないっしょ。暑苦しいってば~。トレントは元々身体鍛えるの趣味みたいなやつだったし~。」


 ミルキーは意にも介していないようだった。


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 そしていよいよ、『バルト』と合流することができた。


 プリンたちはポッドに入るように指示され、回転が始まり疑似重量がかかり始める。


 ポッドが開いた時には、疑似重力はしっかりと機能していた。


 ミルキーはポッドから出るとさっそく四つん這いになってゼーゼー言っていた。


 よくみると、トレント以外の全員が似たような様子だった。


(言わんこっちゃない…)


 プリンは見ちゃいられないという様子で顔を手に当てていた。


 少し離れたところで気配を感じたので、振り向くと、そこにはスーツ姿のシゲキ船長がいた。


『バルト』に辿り着く前、プリンはシゲキに何と言おうとシミュレーションしていた。


『約束を反故にしようなんて、良い度胸しているな。』


『このお人好しが!ぶん殴りに来てやったぞ!』


 プリンの想像が駆り立てられる。


『寂しそうだからな、会いに来てやったぞ。』


『船長も飽きたんでな、最後は少しぐらい違う環境で、と思ってな。』


 まあ、いきなり殴るのも良くないか…


 そんな事を考えていたが、愛する男を目の前にして、全てが吹き飛んでしまった。


 プリンの目から、涙が溢れてくる。


 シゲキ船長は、目を細めながら、プリンのところまでやって来た。


 プリンは少し視線をずらす。残った言葉は、どうやら飾らないものだったらしい。


「お側に…いさせてください。」


 シゲキはプリンを抱きしめた。


「もう、放さないよ。」


 抱き合った二人を見て、ゼーゼー言っているミルキーたちが、パチパチと力ない拍手をする。


 トレントは、それを見て、やれやれといった様子で溜息をついた。





 第36話『新たな希望』へと続く


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