第17話 イリナの服

『ううう……』

しばらくしてイリナが落ち着いてくれた。


『イリナ、ごめんな』

『シド……うん、私こそごめん』

イリナも落ち着いたので僕はイリナから離れようとした。


『まってもう少しこのままでいて』

イリナが僕のことを引っ張った。


『え?』

(また、泣かれても嫌だしまあいいか)

僕は言われた通りにそのままにした。


『シド……』

今度はイリナから僕を抱きしめて来た。


『ん?』

イリナの服をよく観るとすごくボロい。ダンジョンでは暗くて気づかなかったし、宿でも何故は気づかなかった。奴隷商人から貰った服はイリナにサイズがピタリだけど、古い。新しいのが必要そうだ。


『イリナ、服を買いに行こう』

『え?』


『イリナの服ボロいし』

『そうだけど。私はこれ程度で十分よ、シドがいればいいから』


『そうじゃなくて仲間なら同じぐらいの服着ないと』

僕の服は死んだ時に着ていたジャージを着ている。僕自身服がジャージ以外欲しい。



『そ、そう?わかった』

『そうそう』

僕は立ってイリナを見る。

さっきまで焼け始めていた彼女とは思えないぐらい綺麗な肌に戻っていた。


『行こうか』


……商店街……


ひとまず商店街へ来た。たくさん店が並んで居る。お菓子屋、青果店、服屋、武器屋。いろいろある。


『イリナ、どこがいい?僕は正直服について全然わかない。好きに選んでくれ。僕は別で自分の服を探すよ。予算は金貨4枚でいいかな?』

服のことは正直わからない。イリナに任せた方が良さそうだ。


『え!そしたらシドの服の分がないです』

『大丈夫だよ。男なんて安物の服で十分だし。それにイリナはせっかく綺麗なんだから。もっと着飾った方がいいよ』

すごく臭い発言だけどイリナに綺麗になって欲しいから仕方ない。隣でボロ雑巾みたいな服を着た子を連れていたら虐待で訴えられそうだし。


『え、ああ、わかった!……待ってててね!』

イリナは顔を赤くして足早に僕のところから離れて人混みの中に消えて行った。



……数時間後……


僕はなんとなく入った店で金貨1枚で買えるだけ服を買ってイリナと別れたところで待っていた。

あたりは夕暮れになりどんどん店が閉まり始めた。

いまだにイリナは現れない。相当時間が掛かっている。


『まずいな、そろそろ帰りたいし。探しにいこ』

イリナが遅いので座っていたベンチから立ちあがろうとした時だった。


『シド、ごめん、決められなかった』

別れた時と全く同じ服を着たイリナがいた。


『なんで』

(あれだけ時間あってこれ?)


『ごめんシド、そのお店の人たちが吸血鬼に売るものはないて追い出され続けて』

イリナはショボンとしたかんじだ


『なんで僕に相談しないんだよ』

『だって服一枚すら満足に買えないお荷物だって思われたくなくて……』

イリナはすごい思い悩んだんだろう。あの元気な感じはない。

吸血鬼に対する街の住民の考えはなんとなく予想ができはずだ。なのに僕は気づけなかった。イリナは仲間だけどまだなりたで僕に相談しにくかったんだろう。


『イリナ、別にいいよ。さ、僕も一緒に店を探そう。でも、今度から少しのことでも相談してね』

今できる精一杯の笑顔で僕はそう言った。


そのまま僕は店の並ぶ方へ歩いた。


『ん?イリナ?』

イリナが僕の服を掴んでくる。


『シド、て、手繋いで。怖い』

『え?』

顔を下げているから顔いろはわからないが、怖いのだろう。こんなことになったのは僕のせいだし言うことを聞こう。


(ぎゅ)

僕はイリナの手を繋いで歩いた。


イリナはこの道にある店のほとんどを見たのだろう。だけど全然買えなかた。だからここらへんの店はダメだ。それに夕方だから店も大半が閉まり始めている。


『イリナ、裏道を行こう』

裏道にあるような店なら客が来なくて是が非でも客が欲しいはずだ。吸血鬼だろうと無かろうと関係ないかもしれない。



……裏道……


なんとなく歩いていると不思議な雰囲気の店が目に入った。

外からは中が見えず、なんの店なのかいまいち判断ができない。

試しに店のドアを開けた。


……怪しい服屋……


中に入ってみると女物の服を中心に扱っている店だった。

風変わりな柄や奇抜なデザインの服がある。



『あら、いらっしゃい』

声が後ろから聞こえたので振り返る。


『うわ』

黒いつばの大きい帽子、胸元が強調された黒いドレスをきた金髪の女性がいた。すごい不気味だけど爆弾ボディーで目のやり場に困る。


『あらあら、今日はこちらのお嬢さんのお洋服をお探しにきたんですか?そうですよね?そうであってくださいな』

どうやらこの不気味な女性は店員のようだ。それにしてもすごい食いついてくる。


『そ』

『だって、とても失礼ですけど、こちらのお嬢さんの服装は服を売ってる身としてはとても見過ごせるものではないですもの』

僕が答える前に店員は続けてそう言った。


『ほんの少しお待ちくださいますか?旦那様?この子にぴったりなお洋服を見繕って差し上げます』

『え?シド?』

店員はイリナを舐め回すように見てからそう言ってイリナを連れて行った。



……数分後……


近くにあった椅子に座って待っていると

さっきの店員がやってきた。


『お待たせいたしました』

店員はそう言うと後ろにいた人を出した。


『あ』

店員の後ろにいたのはイリナだった。

黒を基調とした腰のくびれと胸を強調したドレスに首元に赤色のリボンすごく綺麗で可愛いイリナがいた。


『どうですか?お客様?見違えるようじゃありません?』

店員は不気味に笑いなが聞いてくる。イリナは恥ずかしいのか照れているのかモジモジしている。

『シド、どう?』

なんとも可愛らしくイリナが頬を赤ながらボソと聞いてきた。

『あ、ああ、似合ってるよ』


『え』

イリナは両手で顔を隠したが。とても嬉しそうだ。


『年頃の娘にあんなボロボロの布切れ一枚なんてあんまりですわ。こっちの方が素敵だと思いません?……私はこちらのお洋服をお買い上げすることを強くお勧めいたします』



正直普段使いするには使いにくそうだ。でもすごく可愛い。イリナに似合っている。買うか。いくらか知らないけど。

『買います』


『それはそれはお客様。とても賢明な判断ですわ。身だしなみは人の品格を左右しますから……これでこのお嬢さんも旦那様にふさわしい素敵なレディーですわ』


それから僕たちは会計を済まして店を出た。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

多種族ハーレムパーティでダンジョン攻略 ライカ @rururu1123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ