第16話 イリナとアヤ

『え?誰て……てか、あなたこそ、誰なんですか?』


『質問を質問で返すなんて学がないのね。私はね、シドのパートナーなの、あんたはただの店員。シドに気安く話かけないで』

イリナが僕と会話する時みたいな可愛さをいっさい出さずにアヤさんに言い放つ。


『ぱ、パートナー、わ、私だってシドさんの専属担当です。ね?シドさん?』

アヤさんもイリナに応戦しているけど勢い負けている。なんだか可哀想だ。

『あ、うんそうだったね』


『ふーんそうなんだ、アヤさんだっけ。これからは私がシドの代わりに来るから』

(え、さすがにそれは嫌だ。自分でしたい)

『いや、イリナ。僕は別にそこまでする必要はないから、依頼とか僕が選びたいし』

『そうです。シドさんの言うとうりです。シドさんが来てください』

そう言ってアヤさんが腕を組んできた。

制服からでもアヤさんの胸の感触が伝わる。


『え!?ちょとシドから離れなさいよ!』

その様子を見たイリナが空いている僕の片手を引っ張ってくる。


『あ!ちょっと!』

少し離れた僕を必死にアヤさんが引っ張ってくる。


『いてててて』

左右で引っ張られて腕が痛い。


『シドは私のもの!』

『シドさんは私のー!』

僕を無視して彼女達は僕を綱引きみたいに引っ張ってくる。



『そこまでにしな、アヤ、ムキになってもシドくんに嫌われるよ』

ユリさんが現れてそう言った。


『え?』


『ごめんなさいね、シドくんとそのパートナーさん。この子シドくんのことが好きすぎておかしくなっただけなの。普段は優しい子なの。パートナーさん、許してあげて。母親みたいにシドくんを守りたいのはわかるけど。許してあげて』


『ふん、まあ、いいわ』

イリナが手を離してくれた。


『う、うう』

アヤさんも渋々離してくれた。


『シドくん、よく来てくれたわ。今日はなんのようで来たの?』

ユリさんが聞いてきた。


『え、と魔石の換金をお願いしたくて』


『あ、そうなんですか。わかりました。でしたらカウンターまで行きましょうか。ほら、アヤ行くよ』

ユリさんがアヤさんを引っ張ってカウンターまで行った。


『僕たちも行こうか、イリナ』

その後ろを僕とイリナがついていく。




『では、魔石をお願いします』

カウンターに着くとアヤさんが僕に魔石を渡すように言ってくる。


『はい。これだけです』

今日取った四つの魔石をアヤさんに渡した。


『え!四つ!?しかも大きい!シド様!どうやってこれを?』

アヤさんがカウンターを乗り上げて僕の顔に近づいて聞いてくる。


『え?』

(そんな大きいか?)


『ちょと!あんたシドに近づきすぎ!』

イリナがアヤさんの顔を抑えた

『んん、何よ、あんた』

アヤさんもそれに抵抗している。

なんだか仲が良いのかもしれない。


『はーアヤ!早くしなさい』

そうユリさんがアヤさんを戻した。


『す、すみません』

『本当よ!』

お互い睨みあっている。


『シドさん金貨6枚になります。お疲れさまでした』

アヤさんが魔石の計算が終わったらしく金貨6枚を僕に渡してきた。


『ありがとう、アヤさん』

『え、あ、えへへへへ、それほどでも』

アヤさんは嬉しそうに答えた。


『はい!終わったでしょ!シド行くわよ』

イリナが急に僕の腕を掴んで歩き出してギルドを足早に出た。



……ギルドの外……


『ちょと、イリナ、待ってよ』

『え?なんでよ』


『いや、いきなり出ていくのは良くないよ。だってほらアヤさん達も唖然としていたじゃん、これからもお世話になるんだし。もう少し感じよくしたほうがいいんじゃないかな?』


『え、なんで』

『いや、これからも関係続くんだし……』


『う、ううう』

気づいたらイリナが泣き始めてしまった。

『え、あ、イリナ……』


『シド、シドはこんな独占欲の強い女嫌いなの?……そうだよね、こんな心の破綻してる吸血鬼なんて嫌だよね……』


『いや、イリナのことは嫌いじゃないよ、ただ』

『嘘だ!……だったらなんであの店員の味方するの?あの女の方がいいの?ねえ!そうなんでしょ。もういいシドが私を見てくれないなら』

イリナが躊躇なく被っていたフードを脱いだ

(ジュージリジリジリ)

イリナの頭が太陽に当たって焼け始めてしまった。


『イリナ!』

僕は咄嗟にイリナを押し倒す形で太陽から守った。


『なんで』

『なんで、そんなことするんだよ!やめてよ。僕は別にイリナのことは嫌いじゃい、やめてよ』

僕はイリナを抱きしめてそう訴えた。






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