義父のイタズラ(ハロウィン編)
ゆる弥
義父のイタズラ
今日は五歳になる娘が幼稚園でハロウィンパーティーだったようだ。
俺が仕事から帰ると真っ先に玄関で出迎えてくれた。
「パパー! 今日はハロウィンなんだよぉ!」
「そうなんだな! どんな日なんだ?」
「トリックアートっていうとお菓子を貰えるんだよぉ!」
娘は得意気にいう。
最近俺が知らないことを言って感心されるのにハマっている。
知らないフリなのだが、それを言ったら野暮だろう。
「へぇ。凄いな! じゃあ、パパにも仮装を見せてくれよ!」
「しょうがないなぁ。いいよぉー」
返事をするや否やリビングへと駆けていく。
すぐにリビングで妻の手伝いの元、着替えをしていた。
「幼稚園でもやったんだろ?」
「そうよ。朝もルンルンで登園したのよ?」
「俺たちよりハロウィンを楽しんでるよな?」
妻は遠い顔をして何かを思い出しているようだった。
「私達もそんな時代もあったわよねぇ」
「今は渋谷には行かないもんな?」
「流石に人が凄いもの。家で充分」
話しながら準備していた娘は魔女の姿に変身していた。
「可愛いじゃないか! 似合うなぁ」
「えへへぇ。そうでしょ?」
こうしてみると自分の子供の成長を感じて嬉しくなる。こういった行事で泣きそうになるのは成長を感じた時だ。
「あぁ。よく似合ってる」
こんな会話を嫁に行く時にもするんだろうか。
そんな考えまで浮かんできて涙がすぐそこまでくる。
「トリックアート! お菓子くれないといたずらしちゃうぞぉ!」
魔法の言葉に思わず涙を出る前で止めてお菓子を取りに行く。
この為に用意してあったのだ。
「はい。どうぞ!」
「ありがとう! じっちにも行こう!」
そう言い放つと娘は今年亡くなった妻の父の遺影の前で大きな声で言った。
「トリックアート! お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ! じっちぃ!」
──ドサッ!
遺影を置いていた棚からお供えに上げていたお菓子が落ちてきたのだ。
「わぁーい! じっちからもお菓子貰えたぁ!」
「はははっ! よかったな!」
止めていた涙は溢れ出てきてしまった。
こんなこと起きたことないのに。
これが俺が見たお義父さんの初めてのイタズラだったのかもしれない。
義父のイタズラ(ハロウィン編) ゆる弥 @yuruya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます