レーツェルの……
箱@b_o_o_o_x
レーツェル と いう街
「レーツェルって街を知ってるかい、北側の国々の中にあった小さな街だ」
その街が出来た頃、そこのへんの地域は魔術の全盛期、エルフや精霊が使う魔術を人間も使えるようになり、魔術を生業にする者たちによって、魔法ありきの生活がままなってきた頃。人間は魔法をもっと自在に操りたいと研究を続けた。しかし魔術が発展すれば発展するほど、人間にとって危険なものになるのは明白、その時の国々は魔法に規制をかけるようになった。
しかし研究熱心な魔法使い達は国を離れて、隠れて魔術を極められる場所を探した。
その時見つかったのが、後にレーツェルが建つ場である。
そこは近隣の山々から降りてくる雪解け水、温泉、地下鉱山もある恵まれた土地だった。岬になっていて三方を海と崖にかこまれてたことも、立て篭もり、隠れ住むには良い地だったとされる。
魔術研究者達はそこを拠点にしようとした。
だがその岬は、古代から聖霊が棲みついていた、銀色の毛並みを持つ、狼の精霊達が。
精霊達は人間を追い出そうとしたが、人間も魔術で抵抗をした。 だかこの頃の魔術は、元々は、彼らの扱う領分、精霊達の扱う術には勝てなかった。 人間達は知恵を絞り、協力する魔法使いを呼び、争いを続けた。それでも劣勢だった。
そんなある日、人間に力を貸す精霊がどこからともなく現れる、『頭が二つある羊』の精霊が。
精霊は人間達に自分を祀り、この地で魔術を発展させろと言った。自分の力が及ぶ範囲、自分に忠誠を誓う者が集まるほど、強い力を貸してやろうと。
それからは人間達の猛攻だった。
岬から狼達は消え、1匹の羊が残った。
魔法使い達は強い力を求めて集まり、そこはいつしか魔術を極めたい魔法使い達の街になった。
羊に忠誠を誓い、魔術を極める者達は「魔導師」と名乗り、その証である紋章を喉元に入れ、強い力に順応し、扱えるようになった。
魔導士達は、少しずつ街を広げていった。
強い魔力帯を維持する為に、魔力を街の中に留める結果を巡らせ。 街中は魔力に覆われた。慣れない人間が来ると、酔うような症状が出るほどだった。
だが逆に、魔導士達は街から出ると、力が使えず、急激に衰えてしまうくらいだった。 何より、この地を離れることは、力の主たる『羊』が許さない。
初めは、魔導士達もその暮らしに満足していた。
しかし、徐々に疑問を持つ者達が出て来る。
自分達はこの街の中で一生を終えていいのか?
そう思う連中が増えていった。
魔導士達は二つに割れた、羊を信仰し、魔術に忠誠を誓った「魔導士」達は「ギルド」を結成し、そこに名を連ねる者達のみを「魔導士」、反した者は「魔術師」とした
魔導士は離反者を連れ戻すか、処罰する「狩り」を始め、争いは街中で続いたが、やがて沈静化された。
レーツェルは魔法使いの研究機関として名を知らしめ、魔力の薄い街の外側には、魔導士相手に荷を売る行商人、魔道具の商いをする者、魔導士に知恵を借りにきた旅人や、それを相手取る術者達の市場ができた。
離反した魔導士は、ギルドは離れたが、その市場や周周囲に潜伏した。離反したとしても、街の外には出る事が出来ない。この街そのものの破壊を求め、結界の破壊を試みたが、羊に従した者の魔術では壊す事は叶わなかった。
だがやがて、結界を破壊する者が現れる。
街の地下深くに封じられた『狼』の亡骸に触れた者達は、羊の属隷から外れ、結界の破壊を可能にした。
『狼』に従う魔術師は次第に増え、徐々に魔力を失ったレーツェルの地。
離反した魔術師は少しずつに魔力の薄い街の外界に体を慣らし、街を出る者、残る者、とそれぞれの行く道を選んだ
争いが続き、結界を破壊されたレーツェルには、ギルドのみが残り、今も「羊」を崇める者達のみが暮らしている。
街の周囲は、再び力を取り戻した『狼』の精霊達がレーツェルを囲み、衰退するギルドの中で、『羊』が力を失うのを待っている。
レーツェルの…… 箱@b_o_o_o_x @b_o_o_o_x
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