防犯カメラは語る
俺たちは今、再びあの公園に来ていた。
昼間の公園は賑やかで明るい。午前中は子ども連れのお母さんたちや、犬の散歩に来ているマダムなどで賑わっていた。夜はムーディな噴水近くのベンチには、スーツ姿のオジサンや本を読んでいる人で既に埋まっていた。
俺と斗真、そして
昨夜の風呂でのことを思い出すと、恥ずかしさで叫び出したい気分になる。が、隣を歩く
「
「うん? ちょっとさ、公園内の防犯カメラってどうなってるのか確認したいってことと、もう一度あの子に円香ちゃんと一緒に去っていった男の話を聞きたくてさ、探してみようと思ってるんだ」
「昼間なのに…で、出るの?」
そう、彼らにとっては昼も夜も関係ない。彼らの想いは街中どこにでも存在しているし、生きている人達と同じ様に行動しているモノもいる。そう言う人はまだ自分が死んでしまったことに気付いていないことが多かったりするのだ。
「いるよ。昼も夜も彼らには関係ないんだ。だからこの時間でも、薫くんに会えるんじゃないかと思って」
「そ、そうか。ひ、昼なら怖くないな」
おいおい…完全にビビってるように見えますけど。
あまりにも分かりやすい斗真を見て、俺も
『ボクちゃん、それで私は何をすれば良い?』
「そうだね~、俺と斗真は公園の管理室に行ってみるから、その間薫くんを探してもらえる?」
『ついていっちゃダメ?』
『わかったわ。見つけたら連絡するね』
「あぁ、よろしく」
そう言うと俺たちの前から彼女はスーっと姿を消した。
って、
「ま、いっか。行こう」
「あ、あぁ…。っていうか、この状況に慣れていく自分が怖いよ」
「そ、そうだよな。俺もだいぶ慣れてきてる」
俺たちはその後無言で公園の管理室に向かった。防犯カメラなんて見せてもらえるわけがない。でも、あの日のデータが残っているか、他にも何か気になることが起きていなかったか聞きたいって思ったんだ。
「聞いていいか?」
「何?」
「円香ちゃんが見つかったら、その後お前、お前に憑いてる子、その…なんだ…どうするつもりなんだ?」
斗真の横顔が急に大人っぽく見えて、ドキッとする。
「うーん、そうだな。その時がきたら考えるよ」
「そっか、彼女は、いや、何でもない」
斗真が言いたいことも分かる。俺は「彼女になってあげる」という彼女の言葉を、今となっては普通に受け入れてる自分がいる。考えると恐ろしい。
彼女の心残り、願いってなんだろう?
いつか斗真にも
そんなことを考えていると、少し先に古い建物が見えてきた。壁は枯れ草で覆われている。きっと夏は緑豊で建物自体が公園に溶け込んでいただろう。
「
「あぁ、行ってみよう」
近付いてみると管理室はログハウス風の建物で、中に入ると程よく暖房がきいていた。
「すみませーん」
「はーい」
受付から中を覗くと、何人かの人が常駐しているようだった。その一人、中から初老のオジサンが出てきた。首からメガネを下げて、農園の見るからに優しそうな雰囲気の人だった。
「どうしました?」
「あ、えっと。伺いたいことがあって」
俺がオジサンに質問をしようとした時、背後から声が聞こえてきた。
「邪魔するぜ」
どこかで聞いたことのある声だ。
「あ、はい。何でしょう?」
オジサンが声の主の圧に臆したかのように、俺たちから目線をはずす。だから俺たちもオジサンの目線を追いかけて振り返った。
「「えっ?」」
「おや? 君たちは…」
「刑事さん…」
何でここに? という言葉は飲み込んだ。強面のこのオヤジ、円香ちゃんの失踪翌日に警察署で会った人だ。
「はじめまして、お仕事中申し訳ございません。ちょっと伺いたいことが」
今度は軽やかな女性の声が聞こえてきた。
「はぁ」
「私は、警視庁広域特命係の如月と申します。こちらは守屋です」
「警視庁…の方が何か?」
如月刑事は俺たちに気付いていないのか、職務を遂行している。
そんな彼女を横目に守屋刑事が俺たちのところにやって来た。デカイ、無駄に筋肉鍛えてるんじゃないか? と疑いたくなるほど、デカイオヤジだ。
「君たちは確か」
「先日はどうも」
「うーん」
覚えてないんかい? 守屋刑事は腕を組み思い出すポーズを見せる。
「青山 円香さんの件で、相談をさせていただいた都筑と九条です」
「九条?」
「はい。九条
「そうか、君が」
守屋刑事の俺を見る目付きが鋭くなった気がする。気のせいだろうか?
「あの、円香ちゃんのことでここに?」
「君は?」
「俺は、こいつの友人の都筑 斗真です!」
あぁ~、と興味無さそうに返事をする守屋刑事。でもここに来たっていうことは、何か事件性があるってことだ。
「ふ~ん、君が弥勒の」
「えっ?」
なぜここで弥勒義兄の名前が?
「守屋さん、管理人室の防犯カメラデータ、確認できます。行きましょう」
「あぁ、如月今行く」
守屋刑事は俺から目線を外さず、相棒の如月刑事に素っ気なく返事をする。俺は何も悪いことはしていないのに、ごめんなさい、って謝らなければならない気分にさせられていた。
「あの…」
「
「えっ?」
「君も来るといい」
「えっ? 俺?」
守屋刑事に言われるがまま、俺たちはこの男についてデータ管理室に向かった。
謀らずも、あの日の防犯カメラの映像をこの目で確認できるのだ。
でも、なぜだ?
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