英雄の断罪:Alt

小説狸

第1話 戦争の終末には結末が付きもの。

俺達勇者が魔王を降伏させた時世界に平和が溢れた。

魔王は弱体化し,魔国はもう俺達が属する神聖国に

支配されるだろう。

俺達は3年かけて世界を平和にした。

俺達勇者パーティ【フォーフロム】は四人構成の

バランス型パーティだ。

全員が幼馴染で、子供の頃から今を目指してきた。

今は国へ帰る途中の道。

夕焼けが綺麗に見え、自分達の国が見えてくる。

仲間の紹介をしよう。


武力特攻で大斧を振り回す男、ダイア。

金色と橙色の肌。

ダイアは人間とドワーフのハーフだ。

華麗な筋肉は服を着ていても視認できる。

彼は自分の武器を自由に動かせる能力を所持しており、後援にも前線にもなれる。


魔法の後方援護、最強の聖女、ナイル。

人間の完全な純血を持ち、聖なる天使から与えられた祖先の力を使う事ができる。

水色の美しい髪が肩にかかっており、誰もが見惚れる美形だ。ダイアといい関係を組んでいる。


最強の回復対応、エルフ、レイン。

エルフの純血の血を使え弓での狙撃力は常人の数倍。

髪は聖なる金色で、太陽に照らされると美しさが増す。

例え四肢を失った体でも、再生させる事が出来る。

昔から俺とずっと一緒にいるわけでもないが、

誰とでも仲良くできる。


俺の名前は、イヴ。

世界最強と語られた勇者だが、正直名前を気に入っていない。


「これから、どうしようか?」


そう俺が皆に問いかけた時に、

地面が崩壊し、馬車が倒れた。

俺は崖のギリギリに立たされ、丁度レインに手を引っ張られ支えられている。


「「イヴ!」」


そう言ってダイアも俺の手を引っ張る。

ナイルもダイアとレインを支える。


だが、地面が崩壊していく。

このままじゃ全員が落ちて死ぬ。

多分この穴は魔国の僻地と呼ばれる魔国と聖国の道。落ちたらそこで最後。

結局最後は短いんだな。

って思う。

魔力が吸い取られて行く。もう力が手に入らない。


「イヴ!あと少しだ!」


ダイアがそう言って引っ張る。

でも、終わりだ。


地面が崩壊していく。


「皆。俺はお前達と,一緒に世界を救えてよかった。

ありがとな。」


そう言って俺は魔力を全て使い風魔法を使った。


「飛べ!」


風魔法で三人を丘まで飛ばす。

皆の表情がスローモーションで見える。

俺は少し笑って涙を流して落ちていった。

走馬灯のようなものまで見えてくる。


もう皆が見えなくなって行く。

装備している剣が俺から外れ、俺と同時並行で落ちて行く。


「ああ、皆と一緒にいたかったな。」


美しく光を帯びるその刀身が地下の魔力により朽ち果てる様に黒くなる。

勇者の証拠であるローブも空へ飛ばされる。

俺は空に、微かに見える太陽に手を翳した。


その時、右手も黒くなっていることに気づいた。

侵食されていく。


「ダイア。

お前とはずっと一緒だったな。

一緒のコンビとして、幹部と戦った時の楽しさは今でもおぼえている。


ナイル。

お前はダイアと一緒が丁度いいと思うぞ。

正直、お前のことはよくわからなかった。


レイン。

君と過ごしたあの時間はとても美しいと俺は思う。

小さな頃の初恋。

ただ君の姿に見惚れてたんだ。

君が好きだった。

でも、僕はもう消える。

いつか、君と一緒に笑い合える仲間が、相棒が

出来るといいな。

ちょっと切ないけれど、君にお似合いの人を見つけて、そして、天国でその楽しさを教えて欲しいな。


でも、こんなにも魔族を殺した僕は、

天国にすらいけないかも知れないけど。」




そう自分の中の気持ちを吐き出して、切なさを感じていると、魔力が失われて、もう空っぽになりそうだ。


ああ、そうだな。

最後に言い残す言葉といえば、

特に思いつかなかったが、だだこの日々が楽しかったのは事実。この世界に一言くらい言わせてくれ。


「この世界に感謝と愛憎を。」






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