第28話 説教
「反王家派貴族によるグロリアの反乱は、その筆頭であったガネク伯爵の死によって終結した」
グロリアの民たちにはこれ以上の不安を与えないよう、そう伝えた。
地下牢獄で最後に黒水晶の『死魔法』が発動したとき、イララはアロス水晶の魔力で黒水晶の魔力を完全に消滅させた。
その後、彼女たちはグロリアの現王夫妻にその御子、ショウル公爵夫人を無事に運び出すことに成功。
地下牢獄で起きた事の顛末はフォール国王にだけ全てを伝え、グロリア王国の反乱は幕を下ろした。
反乱の余韻が残っている内はフォール王国がグロリアの内政を担当することに。
結局、ガネク伯爵家は家を継ぐ者がいなくなったことで廃家することになった。また、グロリアの全貴族の半数近くを占めていた反王家派貴族は、その全てが同じく廃家となる予定らしい。
廃家となった家が管轄していた領地の領民は城都で暮らすことになり、良くも悪くも城都の賑わいは反乱が起きる以前よりも増したのだとか。
グロリア宰相レンラント・ガイズは反乱において戦死扱いになっている。彼の人としての奇怪さ、破綻性については一部の者だけが知るものとなった。
魔力が消え去った黒水晶は、さらなる被害が及ばないよう念のためスキャルが丁重に保管している。
かつてはこの大陸でも盛んだったと言っていた『魔力』についてはまだまだ考えようがある、という結論に至り、スキャルはその危険性または有用性についてを説く論文を書くと工房にこもってしまった。
結果的に内乱が起きてしまったグロリアは早急に王が必要となった。だが、現王夫妻はイララたちによって助け出された時の衰弱様からしばらく療養することに。
王がいない王座にはかねてより思案していた通り、ネクシスが就くことが推された。
しかし彼はそれを自ら断り、そして変わりにあることを提案した。
今回の内乱でグロリア王家の権威は地に落ちる形となった。だがそれは、逆に考えれば国を変える良い機会ができたとも言えるのだ。
ネクシスが提案したのは新たなグロリアを作っていくこと。
これまでのグロリアの慣習は捨て、王は将来的に女の御子が就くことに決定した。
こうしてグロリアの新たな国への変革はもたらされた。
◇◇◇
グロリアの内乱が終結しイララたちがフォール王国に帰ったのは、終結から四日後のことだった。
無事フォール王国に帰ったイララとカイリは反論の一つもできず、こっぴどくネクシスに叱られた。
地下牢獄に助けに行った時点で説教宣告はされていたものの、その実際の説教時間は二時間にも渡っていた。
「ねぇー。もうわかったから、説教はやめてよー」
説教開始からすでに二時間が経過しようとしていたところでカイリは我慢できずに口を開いた。
「駄目です。やめません。しっかりと反省するまでは絶対にやめませんから」
「はんせいしてます。ごめんなさーい。」
と言って、カイリはふかふかソファに飛び込む。
「その態度が反省してないんですよ。まったく・・・・・・」
「まあまあ。皆無事に帰ってこられたんだから、いいでしょ」
「結果論並べてないで戻ってきてください。まだ説教は続けますよ」
「いっ!? まだ続くの」
「当然。ようやくグロリアの事後処理が終わって帰ってこられたんですから」
「ええーーー」
カイリは愚痴を呟きながらもこちらに戻って来る。
いつもの光景。
グロリアでの戦いが終わり、イララはこの日常がいつもよりも愛おしく思えた。
「お祖母様、もう少しだけ頑張りましょう?」
「うんー。なんでイララは説教受けることに対して前向きなの?」
「ネクシスに説教受けることくらい、覚悟の上で助けに行きましたもん」
「・・・・・・まあ、それはそうだけど」
不服そうに彼女は席につき、再びネクシスは説教を始めた。
結局その日、さらに二時間説教は続いた。
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