感想17『飛燕の脚 青龍の眼 第一部』 天 蒸籠 さま

 ■こんにちは、天音朝陽です。


 水滸伝のスピンオフ作品、「浪士燕青」が主人公のひとりになる。


『飛燕の脚 青龍の眼 第一部』

 作者  天 蒸籠 さま

 https://kakuyomu.jp/works/16817330653052575053


 *感想上ストーリーのネタバレが含まれます。


 *今回は第20回までの6万文字相当ぶんを読ませていただきました。この第20回で区切りましたのは単純に私の時間の都合です。


 ■

 この『飛燕の脚 青龍の眼 第一部』は中国四大奇書の一つ「水滸伝」のスピンオフ作品とのこと。

 何のご縁か分かりませんが、本家の水滸伝ではありませんが今年(2023年)9月末に私は北方謙三さん執筆の『水滸伝 全19巻』を読了したばかりであり、しかも私が水滸伝中で一番好きなキャラ『浪士燕青』が主人公のひとりであり、かなりの個人的興味を持って読み始めることになりました。


 ■

 まず、作品世界の中で、わかるわかる!これわかる!というポイントが沢山ありすぎて書くことができません。

 一番のわかるわかる!は燕青が張嶺に指導した『攻撃動作の起こり』でした。ただ、ここを書いても、訪問者の皆様には理解不能でしょうから文字数を取って書けないのが残念です。

 とにかく、わかる!わかる!、あ~これが出て来たか!の連続です。


(もうひとつ書くならば祝四嬢のキャラクター名。水滸伝を知っている人間なら、祝家荘の戦いを思い描き、扈三娘を連想したり、家族構成などからオリジナルキャラだと気づいてニヤニヤするわけですよね)



 さて第20回まで読んだ感想として、今作の印象として

[1]浪士燕青と祝四嬢がならず者と妖(あやかし)を倒し、祝四嬢の本拠地に縮地の術で帰還するまで

[2]そこからの旅立ち、旅立って以降

 の二場面にわかれているような読後感があります。


 読後感の問題で現実にはストーリーは連続しています。これは文体と言いますか、密度といいますかそのあたりが関わっているように思うのですが

[1]のほうは、暗闇の中で術師の技が輝き踊る、あでやかな印象

[2]のほうは、登場人物たちの関係性が放つ楽しさや、その世界を知ることの知的満足感が多い

 と、このような明確な読後感の違いが感じられました。これはあくまで私の感想ですが、おそらく一般的な感想もかなり似たようなものになると推測します。


(この点につきまして第3回の批評コメントに答えがあるように思います)


[1]の感想について以下に纏めます。


 浪士燕青が登場し、祝四嬢がならず者・妖(あやかし)と戦い、師匠の先生がひょうひょうと現れる。

 このあたりが本当に最高でした。


 感想として脳裏に残るのは、うすぐらい闇の中を舞うあでやかな祝四嬢の姿ですね。彼女は青い衣装をきているとの描画がありましたが、その布地の繊細さ豪奢な感じまで手触りとしてイメージが湧いてきました。

 彼女が使う礫の硬さ・重さや、刃物の光の反射の美しさ、そのような美しさに魅了されました。



 ■

 さて

 私はこの感想文17作を書いていくなかで


『読者として面白いと感じたこと』

『素晴らしいと感じたこと』

『個人的にぜひとも伝えたいこと』

 これらを念頭に置いていました。


 今回は、感想として、どのような事を伝えるのが『誠実』なのか?を悩んだうえでの以下の感想なのですが、私個人の正直な感想として前述の[1]と[2]の感想を比べると[1]のほうが5倍ほど面白く感じます。

 すごくストレートに言いますが[1]の書き方のほうが好きです、刺さります。


 第3回の批評コメントに物語の進行速度(つまり描画の密度)について触れられていますが、私個人(中年男性)の感想としては全く遅くないんです。完全に「そのままの速度でいってください」と叫びたくなります。


 第1回で主人公の「浪士燕青」について五百文字ほど用いての紹介文がありますが、本当にこの多めの文字数を用いての描写は大正解と思います。

 ラノベなら「うおっ、イケメンって奴ね、この男は!」みたいにさらりと紹介が終わるのでしょうが、この作品は水滸伝のスピンオフであり誰もが「もっと、(天 蒸籠さんのイメージする)浪士燕青を描写してくれ!」と願っているはずです。


「もっともっと水滸伝の世界へ深く深く入り込みたい!沈み込みたい!」と願っているはずです。


 ですので批評コメントは、天 蒸籠さんの『今後の作風』への『出版業界や大多数の人気を得るためのアドバイス』としては的確に的を得た意見であり、コメントされた方もそう書いています。

 しかし今回の作品・水滸伝のスピンオフ『飛燕の脚 青龍の眼 第一部』をさらに良くするための意見としては明確に違うはずです。


 たしかに、ここは天 蒸籠さんの作家としての立ち位置

 ・自分の好きなものを、すきな作風でつくる 

 か

 ・多くの読者が求めている、多くの読者にうける作風でつくる

 か

 という問題があると思いますので、私個人の意見をゴリ押しするわけにはいきませんが。


 ■

 カクヨムのようなWeb上の作品は、圧倒的に『多くの読者が求めている、多くの読者にうける作風』がもてはやされています。


 しかし、作者が自分の思いを込めた、いわゆる

『刺さる人には深く刺さる作品』

『分かる人には分かる作品』

『本当に、その時その人に必要な作品』

 これらを求めている人が少数ですがいる事は確かなのです。


 私もカクヨム上で、なんでこんなに面白い(=私の心に刺さる)のに★の数やPVが少ないんだ!という作品を多く目にします。

(逆に流行りのジャンル・流行りのスタイルというだけで、桁がみっつ間違っていないか?という★やPV数の作品があります。)


 で、よく聞く論調ですが

『ぶっとく刺さる、その人にしか書けない、流行りではない、魂のこもった、そんな作品を求めている人は必ずいる、少ないがいる。そんな人に貴方の作品を届けてほしい』

 という意見があります。


 これは正解だと思います、たしかにそうだと思います。


 ただし、です。

 そういう人達のほとんどは(これも私の推測ですが)作者には、ほぼ何の感想も述べません。

どこがおもしろかったのか?

どこに心を持っていかれたのか?

どこが刺さったのか?

キャラクターは誰が好きなのか?

彼ら彼女らは ♥も★もコメントもブックマークすら残さず、霧のなかからあらわれ、霧の中へ帰っていきます。

【これは相当にきついものがあります】


 何を言いたいのか、ぼやけてきました。すみません。


私が言いたいのは、創作者は、その【相当きついもの】とどう向き合うのか?だと思います。


ありきたりな一般論ですみません。


私個人の、いつわらざる本音の感想としては

『重厚で緻密で世界観がどっぷり凝縮された、天 蒸籠さんの世界をみたい』

というものです。


『短編でもかまいませんので、天 蒸籠さん独自の水滸伝を読みたい』

そう思います。


では、今回はここまでにしたいと思います。










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