感想12『トムとライラの道中記』八木羽研(やきうけん)様

 ■こんにちは、天音朝陽です。


『トムとライラの道中記』

 作者 矢木羽研(やきうけん)

 https://kakuyomu.jp/works/16817330652722918070

 全編12万文字を読んでの感想


<レヴュー書かせていただきました>


世界というものには意味がある。


ひとつの始まりは、ひとつの終わりであり

その逆もまた然り・・・


パーティーを自ら去る男

・・・しかし世界はまた彼に役割を与える


聖書のなかに以下のような言葉がある

「神はすべてに立場をあたえ/この世界に老いたる者も、若き者も /対等に招き入れた」と。


姿を変え行く世界の中で、また変わらぬものもあるのだ


 ★一気読み、もしくは23か24話あたりで切っての上下読みがおすすめ

 ★ファンタジー世界を構成する理論

 ★テンプレではない、ダークファンタジーでもない、冒険譚のカタチをとっているがそうでもない、ならば何と?

 ★Wizardryファンならば必ず見るべし★


 ■

 作者さんへの第一感想


 永遠に繰り返される生命の輪廻 《第29話より》

 この一言です。


 繰り返される様々なものごと、つまり

 歴史伝承、人(不死を含む魔物も)の一生、社会のありよう、人の役割の移り変わり、季節、魔物の亡骸すら意味のある道具となり・・・。


 それぞれの終わりが、またそれぞれの始まりとなる。そこには論理的と言う言葉では説明が追い付かない『深遠な神羅万象のはたらき』がある。


 手塚治虫という漫画家が『火の鳥』という話でテーマとしたようなものに似ているのですが、火の鳥のような残酷な描写はなく、葉脈を透かす太陽の光のような生命の輝きを感じさせる物語でした。


 そういったものを語る力を、人にわからせる力を、文章は持つことが出来る。

 このような思いを抱きました。


 ■

 おそらく作者さん以外の方もこの投稿をご覧になっていると思うので、この作品について僭越ながら私が少し解説します。


 この作品は「まえがき」として置いてある「読書ガイド」にかかれていますようにWizardry(ウィザードリィ)というゲームを下敷きとした設定になっています。

 このゲームは、現在ほとんどの人が知っている「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」の基礎システムとなっているゲームです。

 もちろんWizardryを知らなくても楽しめる物語ですが、知っている人は是非物語を読んでみてください。

 物語終盤にWizardryファンにはたまらない、とある魔法が登場します。正確には魔法ではないのですが、そこは読んでのお楽しみです。


 この物語は、ストーリーの進行と共に世界のありようが論理的に解説されていきます。ですので

【ファンタジー世界の世界観や、論理的な説明】が欲しい創作者にとっては、良い勉強の機会になると思います。

 私が思うには、もう少し肉付けすれば【創作者向けファンタジー世界の世界観ガイド】として販売できると思います。私なら買いますね。


ですので、私の読者としての感想のひとつは

・攻略本を見ながら

・物語を楽しむ、ゲーム実況を楽しむ

ような感じであり、実に新鮮な読書感でした。

批評家の人は『これは小説とは少し違う』というかもしれませんが私にとっては小説より面白いものでした。


私が子供の頃『Wizardryのすべて』という素晴らしいWizardryの攻略本があったのですが、その攻略本を読んでいるようなワクワク感がありました。

その本の帯に書かれたキャッチコピーが『迷宮世界の神羅万象』だったように思います。


YouTubeでWizardryのBGMをながしながら読むこの作品は、実に味わい深いものでした。


そこに世界があり、太陽の光があり、風が吹き、人々の営みがあり、喧騒が聞こえてくる そのような物語です。


では、このあたりから視点を身近な所へ落とした感想を書いていきたいと思います。


組織戦としての戦闘シーン


ほとんどのファンタジー小説では、一対一の勝負かパーティ戦での戦闘描画がほとんどだと思うのですが都市の総力をあげての組織戦はロジスティクスで見ごたえのあるものでした。

良い意味での例えですがファイナルファンタジータクティクスを見ているようでした。

その戦闘シーンですが、Wizardryというゲームでは『全滅』がよくあるパターンですので、それを知っている私は、物語中の戦闘シーンでの緊迫感がとてつもないものでした。


現実感


第18話 パーティ内での金の管理について

>「逆の立場から見れば、駆け出しの戦士というのは仲間からの借り物で戦わざるを得ないわけだな。それを全部買い上げて自分のものにしたとき、戦士は初めて一人前になると言ってもいい」


これですね、これはゲームをしていた時には持てなかった視点で「たしかにそうだよな」とつぶやいてしまいました。

また、その納得感は物語への没入感を強めました。


妙に現実感がある一文

第18話 ポールは親戚宅に間借りしている

第24話 オリバーとメリナは故郷に帰ったぞ。そろそろ種まきの季節だからな。


これは、なんとも言えないんですが、すごく好きな描写です。もう、彼らならきっとそうしているとしかいう納得感しかありません。


恒例の個人的に好きなキャラランキングです!


1位 グリフォンを仕留めた男・ジャック

理由:他のメインキャラクターが完璧な印象のなか、なぜかこの男だけが完璧でないような何か(悪さ感?)を感じさせた。一応冒険者としては成熟した男な感じなのですがね・・・、どこか惹かれるところがありました。


2位 ライラ

理由:問答無用に獣人娘すきなもので・・・ハアハア。寝て起きたら裸になっているという基本設定も刺さりました。ラストで裸になっているのも刺さりました。なにか彼女からは積極的にエロに持ち込もうという姿勢が感じられ刺さりました。

*叡智シーンが無かったのが悔しい所ですが、それは主人公や設定のせいで仕方ないのでしょう。サイドストーリーを見てみたいものです。


3位 イザ

理由:最初の主人公との別れのシーンの能力や性格の描写でグッときました。とくに現実的な性格とあるのに『炎のロッド』を主人公に渡そうとするあたり。

エルさんも良いな~と思うのですが、上記の理由でイザさんが上位に来ました。

 

今回、私がまる一日を使えたため作品を通して読ませていただきました。

これが大当たりで1日1話読むより、時間をとって好きなBGMをかけながら楽しめる作品だな~と感じました。


そしてテーマは深いんですが、体力の消耗はすくない。

(体力が消耗する作品が悪いという意味ではありません)

五月の爽やかな新緑の力を目にするような読後感に包まれました。


私自身も、このように(自分が現在の実力で作れる範囲で)良い物語を作ってみたい! 世界というものを描き出したい! 

そう感じさせる作品でした。


では、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。


作者さんの次回作に期待します。


(PS 矢木羽研(やきうけん)→野球拳→脱がす という意味ですか?)



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