感想4『少女サクラの刀剣日記』 小脇 進(こわき すすむ) 様
■ こんにちは!天音朝陽です!
風に触れる、光に触れる
春の空の元、桜の花びらが散る
透明な金魚鉢の底に沈んでいくような、繊細な物語のはじまり。
『少女サクラの刀剣日記』
作者 小脇 進(こわき すすむ) 様
https://kakuyomu.jp/works/16816927861591420924
~15話までの感想
*感想には(おそらく問題ない範囲での)ネタバレが含まれます
★一話ずつ読むより、まとめてじっくり読みたい
★タイトルから予想される『サクラ大戦』みたいなノリでは全くなかった
★戦闘シーンが、刺さる人にはささるでしょう
★静けさの中に動きがあり、動きの中に静けさがある
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イチ読者として、作者さんへ一番伝えたい感想
この物語の背景にあるのが作者さんの心の世界であるのならば、私はこの作者さんが最高に好きです。いい。
人は人に何かを伝える際、どうしてもその人の人となりが表れると思うのですが、その配慮、思慮、力の加え方、そう言ったものが表れ、それを物語から感じられます。
作者さんの伝える姿勢というものは、私にとって心地よいものでした。
と作者さんに第一に伝えたい。
ですので物語の感想というよりは、もっと大きな範囲内での感想が第一にきてしまいました。
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没入感
そして、まだまだ物語の感想にはいる前に伝えたい事があるわけですね。
『没入感』
独特の繊細ではかない、詩的な世界へと引きずり込まれてゆきました。
文章(文体というのでしょうか)が読みやすい。
しかし、軽く薄っぺらなものではない。では、重みとか、深みといったものがあるのか?というとまた違う。
『質感』でしょうね、全体をとおした一文一文のもつ統一されたようなクオリティがあります。
そして、そこに沈み込んでゆく。
冒頭でも書きましたように、巨大で透明な金魚鉢の底に 水面を見ながら沈んでいく感覚みたいなものを味わいました。
金魚鉢のガラスの透明さ
その中を満たす水の透明さ
そこに射す光
感じる自分の浮力を合わせた重み・・・・
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物語の感想
けっして軽くはない、災害と災害後の描写は非情に重いものであり私自身胸が詰まる思いです。
指定範囲は15話まででしたが、続きが気になり17話まで読み進めました。
おそらくこの後、主人公サクラさんが刀剣を手に取って、戦う決意をされるのでしょう。
15話までに対し、読者として感想を・・・となった場合、やはりどのシーンがどうであったというよりかは、全体を覆う透明感だけが感想になるのですよね。
文章ではなく、感覚が感想になってしまいます。
あえて一番に出てくるものを文章化するなれば、春の風景の中、桜が舞い散る日射しの中に「ハル」さんと「サクラ」さんがいる風景が思いだされる感じです。
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キャラクター
キャラクターが弱いという訳ではないのですが、物語全体のもつ雰囲気が強く、そちらがやはり心に残っています。
サクラさんの体験が、今現在~今現在戦いシーン~過去 とつづられていきますが、サクラさんに感情移入したというより、経験の内容に感情を持っていかれた感じがあります。
「ああっ!サクラちゃんが大変だ!可哀そうに!」という感想ではなく「ああ・・・、こんな事件があったんだ、主人公サクラちゃんが当事者かぁ」みたいな感想になりました。
良し悪しではなく、作品の持つエネルギーが キャラ一個人よりも、それを取り巻く世界から発せられているように思います(繰り返しますが、良いとか悪いとかではなく私の感想です)。
主人公サクラさんの向き合っているものは、表面上は目の前の帝王だったり、ハルさんを助けないといけないのにという葛藤です。
しかし、それを越えた、、、もっと大きな、人間が社会を作ったがゆえに抱えたものと言った巨大なもの、人間の全体としての在り方に、無意識化で対峙しているように感じます。
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戦闘シーンの質感
いままで戦闘シーンというものは、硬質なものでスピード感などが重視されると思ってきましたが、その思い込みが覆されました。
もちろんスピード感も十分にありましたが、主人公の想いというものが前面にあったように思います。
ここはイチ創作者として『このような戦闘シーンの描写があったのか!』と敬服いたしました。
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印象に残ったシーン
1位 第2話の以下の部分
>学校最寄りの駅。
>電車がホームに入り、ドアが開いた。
>出てすぐに、景色に見とれる。
>桜の散るとてもきれいな景色だった。
>ホームから見える山。
>風で運ばれ、サクラの足下にはなびらが届く。
最後の2行が好きですね。
主人公の名前の音、現実の桜
これが桜の景色を鮮明に私の頭脳に描かせました。
「ドアが開いた」「見とれる」「桜の散る」「風」「届く」
サクラの足元には、『桜』の花びらが・・・
同率2位 7話 刀を見つけるシーン
>サクラはまじまじと見ていた。
>鞘の先端から鍔より下の末端まで目線を移した。
>刀剣の鞘には色艶の光沢があって、なんだか引き込まれる魅力を感じた。
この神社のシーンも良いですね。
おそらく闇の中なのですが、さまざまなものが光を放っています。
光の存在が、重苦しい闇を感じさせないように思います。
そして闇と恐怖の中での、刀剣との出会い。
サクラの目線が移動することで刀剣の『長さ』を感じました。
そして光沢、引き込まれる魅力。
静けさの中に動きがあり、緊張感の中に静けさがあるシーンで好きです。
同率2位 11話 定期訪問から帰るロボットを見送る
>サクラは後ろ姿のロボットに手を振った。
>ロボットは背後に気がついたのか、一旦止まって後ろに向きを変えた。
>サクラを見ている。
>サクラはもう一度手を振った。
>「バイバイ」
これ、人間が人間相手にやる、本当に何気ないシーンだと思うのですが
人間とロボットで行われることで、このやり取りって実は『すごく人間っぽい、懐かしくも暖かい』ものなのだと気づきました。
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終わりに
では、今回の感想は以上になります。
1話1話を日毎に読むより、休日に時間をとってゆっくりと読むような物語だと感じます。
物語としても十分面白いのですが、もっと大きなスケールの何かを訴えかけてくる作品でした。それこそが、この物語のテーマなのでしょうね。
イチ読者として、創作者として大変貴重な学びの場となりましたことを感謝したいと思います。
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