ゲェッヘヘヘヘへへェオロすぜぇオリャオリャほーれゴカイチーンポロリーンぐベオッ
「ナンデダヨ!?」
裏路地のゴミにつまづいた。声が裏返る。
アカリはそっけなく続けた。
(
「しょうがねーだろ、急にあんなこと言われたらメンタルがいっばいいっばいで」
「そーゆー問題とちゃう」
リアルな声が静かにさえぎる。
「ユートを助けたあの日まで、ずっと迷っとった。ホンマにこれでええんか、って。ルカを犠牲にしたら、自分たちだけは助かるのにって。でも、やっぱそんなんはないって思うた。やからユートの右腕になるんや。自分たちの運命は自分たちで決める。ほかの
低すぎてどこから聞こえてくるのか分からない声。だが、はっきりと耳に届く。
「もう二度と、うちをひとりにせんて約束して」
「分かった約束する」
とりあえず即答する。
「早っ」
当然信じてはもらえない。
「どうせ口ばっかしやろ、人間なんてみんなそうや」
「約束する」
「ホンマやろな。都合のええときだけ利用すんは許さんで。うちはそんな都合のええ女やない」
「どごでそんなセリフ覚えた」
「嘘ついたら
「好きなだけやってくれ」
DNAデータを送って管理者権限の認証を受ける。
背後から銃撃。足元にアスファルトが散る。ハツネがわめいた。
「やべえぞ!」
「先に行け。
ユートは立ち止まった。車道をまっすぐ逃げようとするハツネを狭い裏路地へと方向転換させる。
「テメエひとりで何が……!」
「いいがら行げ」
身をひるがえす。獲物を追い立てていたつもりのギャングは、逆にユートが転進して戻ってきたことに意表を突かれ、狙いを定められない。
射線があさって方向にそれる。
距離を詰めた。前のめりの膝を抜いて姿勢を崩しつつ身体を倒し、筋肉が反応するよりはやく相手の懐に飛び込む。
下から上へ、ギャングの肘をラリアット。ショットガンが宙に跳ぶのを追いかけてつかんだ。
転がりざま振りあおいで引き金を引く。
「悪いな」
相手の肩が骨まじりのミンチになって砕ける。仕方がない。襲ってくる方が悪いのだ。ギャングは悲鳴を上げてつんのめった。
モブ敵残数7。
さらに引き金を引く。カスった。ムキになってさらにガチャガチャいわす。弾切れ。
「あっ、クソ、ケチりやがって」
「ニイチャンいい度胸してんなぁーー!?」
形勢逆転と見たギャングどもが襲ってきた。転がって避ける。一秒前までユートがいた地面を鉄パイプが削り取った。
下卑た笑みが覆いかぶさる。逃げようとしたところを蹴り倒された。相手の腹を下から蹴り上げて抵抗。だが多勢に無勢。次々にのしかかられる。
「ゲェッヘヘヘヘへへェオロすぜぇオリャオリャほーれゴカイチーンポロリーンぐベオッ!」
「変質者やんか」
アカリが上空から降ってきた。ギャングの後頭部にダイレクト着地。両手を真横に伸ばし、背筋をぴんと伸ばした美しい姿勢。骨の折れる鈍い音を踏み台にしてかろやかな伸身宙返り。
「助かっだ、あとは頼む」
ユートはギャングどもの手からのがれて戦線離脱。アカリはウキウキとはしゃいだ声を上げた。
「おっしゃ行っくでぇーーーっ!」
「くれぐれもお手柔らがにな」
「もう遅いわ」
空中にあったアカリは壁を蹴って急降下。電柱のてっぺんに飛び乗った。足場にした衝撃で根本からへし折れる。
倒れ込む電柱を両手で掴む。持ち上げた。振りかざす。中の鉄筋がぶちぶち音を立ててちぎれ飛んだ。火花の五線譜を宙に描く。
「炎のプレリュード第一楽章、鳴きわめけ《
「何ソレずるい自分だけカッコイイの!」
華麗な炎ののの字を書いて一刀両断。
ビルの角を二等辺三角形の断面で切り落とした。真っ赤なガラスの流星が降りしきる。落下したベランダや看板が悲鳴を埋める。
仕上げにスパゲティ電線が発火。あちこちに積み上げてあったらしきゴミ袋に引火した。
アカリは悪びれもせずに電柱を放り投げた。
折れた先が道路の反対車線まですっ飛んで、向かいのビルを串刺しにした。ひときわ強いオレンジの火花が二つ飛んだ。瓦礫と煙が轟音をまき散らす。
「ん?」
視線を空へ向けるアカリ。
ひきずられ中のハツネが、半泣きのうめき声をもらした。
「めちゃくちゃじゃねーかよ……これじゃあ、どっちが悪役か分からねえ」
「うちにやらすユートが悪い」
気を取り直して振り返る。アカリは手のひらについた砂ほこりを払った。悪びれずに笑う。
ハツネは頭を抱えた。
「マジかよ……こんなチビが
「? ってことはいろいろ知ってそうやな。ちょうどええ」
アカリはニッカリと笑った。
「……注射とか、さっきのアンプルとか、校長先生の正体もまとめて
爆発の逆光が笑顔の光と影をめまぐるしく塗り替える。ハツネはびくびくとちぢこまった。
「ぅっ……コワイ」
「あんまりビビらしてやるな。大事な仕入れ先なんだがら」
ユートは苦笑いする。むしろ居場所と正体がバレたのは確実にこちらのほうだ。
なぜいつも
キジも鳴かずは撃たれまい。次の展開は火を見るより明らかだった。
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