新・家電統合化計画

新・家電統合化計画

　電話が鳴った。

　びくりと僕は、主を呼ぶそれに、そろそろ近づく。

　がちゃり。

　受話器を上げると、ぼわりと澱粉（でんぷん）質の蒸気が顔にふりかかる。

　フーフーと冷まし息を出しつつ、シャモジをかまえ、狭い口から炊き立てのご飯をかき回し始めた。

　政府で打ち出された「新・家電統合化計画」の被験者（モニター）に選ばれた僕の家に、電話と炊飯ジャーを結合した「はじめチョロチョロ中パッパ・テレフォン」が持ち込まれたのは三日前だ。

　実はこの下にアタッチメントで、食器洗い乾燥機とＦＡＸがＦＡＸ台ごとつけられる「洗い場伝送システム」もあったが、ワンルームマンションのドアから入れることができなかった。

　ＦＡＸ台につけるはずのコマ車だけが四つ、むなしくフローリングに転がっている。

　この電話――いや、開発コード名「チョロッパ」は、「新・家電統合化計画」の中核を担っている。

　各家庭に配備される二芯のモジュラージャックから、家庭内の家電使用状況を、政府が管理するＺ80並列サーバーに……僕もあまり機械には詳しくないので細かい所は間違っているかもしれないが

　……とにかく収集して、今後の電力消費削減対策に利用するらしい。

　満を持して出されたはずの「新・エコスタイル計画」も、ランニング型のカッターシャツとハイレグやＴバックのスラックスパンツスタイルがあまりにも不評で、昨年の夏はまた消費電力量が上がった。

　冬は冬で「新・あったかスタイル計画ＧＴタイプＲ」が提案されたが、国民投票でボツをくらっていた。

　だから、政府は今、

　この「チョロッパ」にすべてをかけているのだ。

　さて、今日は中間レポートを研究機関に報告せねばならない。――僕はごはんをよそってから、もう一度受話器を上げる。

　まず研究員には、この電話は底の方の米粒が取りにくいことと、飯時に着信があってもシャモジを手放さなければメモがとれないことを言おうと思う。

　あと、本体カラーは黒以外に選べるのかも確認しておきたい。