最終話 魔王の敗北
勇者は、更に世界中から軍人を召集した。その数、30万。……あの激戦から1ヶ月が経ちダンジョンを全方向から囲う作戦を開始した。
ダンジョンに向かう途中で、20体のモンスターが暴れているという情報を受ける。そこに再編された
ダンジョン手前、警戒しながらの行軍で遅々として進んでいなかった。それに合流する
すると……ダンジョンから魔王が1人で出てきた。すでに周りは完全に包囲していたが緊張が走る。
魔王は突如予想外の行動をとる。……土下座をして敗北を宣言したのだ。
「自分の首を明け渡すので、中のモンスターは見逃して欲しい」と申し出た。
作戦上層部は協議に入る。『魔王の首を切った後にモンスターを皆殺しにする』という結論に至った。魔王さえいなければダンジョンの攻略は容易である。
交渉人が魔王の元へ向かった時、あってはならない事が起こっていた。
その男は、魔王が自らを犠牲にして仲間を助ける姿に同情し、どうしても助けたくなったようであった。
さらに、その男は魔王を自分たちのパーティーに加え、その力を使い、別のダンジョンの攻略に挑みたいと提案してきた。信じられない発言であった。本来なら話も聞かずその男を処断するのだが、なぜかそのパーティーには不思議な力が宿っているように感じられた。
それを上層部へと報告した。上層部としてもそれは何もメリットがない上に、魔王の首を切ってからモンスターを全滅させる計画が破綻する。たとえパーティーに加えたとしても、いつ裏切られるか分からない。そんなリスクを許すわけがない。
交渉人を怒鳴りつけた総司令だが、ふと思うところがあり、どこかへ連絡を取った。短いやり取りの後、結論が出た。「魔王をそのパーティーに入れることを許可する」ということである。上層部の誰もがそれに驚愕し、反論がやまない。
「これまでにどれだけ予算を費やしたかご存じですか? それを魔王も倒さず、モンスターを放置するなど、我々も、軍人も世間も許すはずがない!」
強くテーブルを叩くものがいた。あまりのショックに席を立つ者もいる。
……勇者は地面に剣を叩きつけ、今までの苦労と犠牲になった仲間達のことを思い泣き崩れる。
しかし、その決定を覆す権利を持つ者はいなかった。
結局、いくつかの条件を踏まえ、魔王との交渉に及んだ。
ーーモンスター達は手厚く保護され、労働を強いられながらも平和に暮らすことができた。長らく魔王の寛大な心に触れていたモンスター達は、いつの間にか自己本位な考えを捨て、協調性や従順な心を持ち合わせるようになっていたのである。
その地域は平和と秩序を保ち、豊かな労働力のおかげで街は発展していった。モンスターも人間も、共に幸せに生きたという。めでたしめでたしーー。
……だが、魔王を仲間に加えたパーティーは、その後様々な問題と困難が待ち構えているのであった。チャンチャン♪
うちの魔王が優しすぎる件について スノスプ @createrT
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