第19話 魔王の憔悴


 ゴブ子を抱きしめ……泣いた。その声はダンジョンの中を揺らし続けた。


 思いが蘇る……。産まれたばかりのゴブ子をあやす魔王。外の残虐な殺し合いを唯一忘れさせてくれるひと時であった。独り立ちをしたゴブ子を見守り続け無事を毎日祈った。今回の戦闘でも安全な後方に配置されていたはずだ。

 

 食事は取れず、不眠で泣き続けた。


 それから魔王は1ヶ月自室から出てこなかった。


 当初は疲労困ぱいの魔王を心配するモンスターたちだったが、1ヶ月も顔を見せない魔王に戸惑う。命令も「ダンジョン待機」のみ。


 とうとう幹部達は、「見境なく人を襲う」と宣言し、ダンジョンから出て行った。


 残った者達も魔王に対する忠誠が薄まり将来を心配した。


 

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