第18話 死闘その後


 魔王は叫んだ。


「人間共よ! この街から今すぐに立ち去れ!」


「「うぉぉぉ!!!」」


 数万のモンスターが勝利の勝鬨をあげる。完全勝利であった。


 ゴブ子も興奮が止まず。大声で魔王を称賛する。


 感動の渦となる。しかし、そこに頬を掠める魔弾。銃声と共に次々と倒れる仲間。


 なんと人間は、約束を破り不意打ちをしてきた。弱いものから狙われ倒れていく。特に大怪我の魔王に対して集中砲火を繰り返している。


 ゴブ子は何も考えられなかった。とにかく魔王様を守りたい。その一心であった。


「魔王さまぁーー!」


 雨のような砲弾魔弾が飛び交う中、ゴブ子は駆けだした。そして、膝を付いた魔王を庇うように抱きついた。その時、体を無数の銃弾が貫いた。


 ーー突然の銃撃に不意をつかれた魔王だが、ゴブ子が駆けてくるのは見えた。突風の息で遠くに飛ばそうとした。しかし、もう力は残っていなかった……。


 回復魔法も底が尽きている。死にゆくゴブ子を抱きしめることしかできなかった。肌に触れながら……、残る温かみを感じながら……。「魔王様生きてください」と微かな声で言い、息絶える瞬間を見とどける……。


 銃弾が止まぬ中、魔王はゴブ子を抱え立ち上がる。


「みんな、撤退だ……」


 魔王はその卑怯な戦いを許せない。しかし、今はもう戦えなかった。力を制限しながら戦う余裕がない。


 魔王は敵に背中を見せた。ゴブ子の亡き骸を抱えて歩き出す。その大きな背中は今はとても小さく見えた。


 容赦ない銃弾と魔法が、魔王の背中を襲うがダメージを与えるまでには至らない。3組の討伐パーティーが深追いして来たが、生き残ったモンスター達が仕留めた。


「やめろ!」魔王は、そう静かに訴えることしかできなかった。


 人間たちは、魔王や魔物幹部を逃した悔しさはあるが、死者をほとんど出さずに街を守り抜いた武功をお互いに祝福しあった。

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