第7話


香奈たちは偵察隊の魔法使いたちと一緒に空を飛んでいた。

それは姫さまの救出の為だ。

カッシーの想像だとそろそろ隣国が動きだすのではないかという事だ。


偵察隊の魔法使いたちが先導で香奈たちがその後ろにつく。

「ここから気をつけてください」

魔法使いたちに言われて気を引き締めて空を飛ぶ。

地上から何か飛んできた。

見ると火の球だ。先日の花音を思い出す。

「アレが当たったら死ぬね」

花音がびっくりした様子で言ってくる。

確かにアレが当たったらひとたまりがない。魔法使いたちの戦いはこんなカンジなんだと分かる。

しばらくすると攻撃は収まってきた。

魔法使いたちはある建物に入って行く。その後について香奈たちも入って行く。

建物の中はごく普通の部屋の作りがあった。

寝室と残り2部屋。その内の一部屋に姫様がいた。

姫様が気づいて近づいてくる。

「あなたたちが香奈と花音ね。あとはカッシー?」

姫さまに知ってもらっている事も驚きだがすごく若く見えて驚きを隠せない。



香奈は姫さまの服装が気になった。

体型を隠す様な服装にお腹回りがふっくらしている。

「あゝ、これね。」

姫さまも香奈の考えが分かったようでお腹に手を当てて笑顔を見せた。

周囲に隣国の人たちがいないことを確認してから話始めた。

「この国がどう出るか確認する為に一芝居打つ事にしたの」

姫さまの説明にカッシーが食い付く。

「レオナルド様は何と?」

「大丈夫だと言っているわ」

「ですが、バレたらただではすまないなのでは?」

「そうなんだけど、最初の一歩はこちらからがいいだろうとなって」

姫さまは困惑していた。

たしかにここまで反応するとは思わなかったようで戸惑いが見えた。

カッシーは何か考えている。香奈はその様子を見ていた。

姫さまに危険が及べば救出しなければいけない。その為、佳奈は部屋の様子を頭に叩き込む。


「血行は明日朝」

カッシーの言葉に重みが感じられる。


当日の朝、香奈たちは集まっていた。

「俺が合図するまで動かないで」

カッシーの言葉に熱がこもる。

姫さまの部屋につくと香奈たちは散らばって気配を消した。

今姫さまの部屋には魔法使いが10人はいるみたいだ。

「お子が出来たみたいですね」

隣国の大臣の一人が、姫さまにいやらしい笑みを浮かべ話しかけていた。

「両国の礎になる子です」

姫さまの言葉は当たり障りないけど、それが気に食わないのか大臣は急に笑いだす。

「確かに両国の礎になりましょう。よくわかっておられる」

大臣はそれだけ言うと部屋から出ていった。

その時、そばにいた隣国の魔法使いたちに何か合図をしていた。香奈はそれが気になり大臣を見ていた。

大臣の視線は姫さまのお腹に注がれている。


姫さまのお腹の子に何かするつもりだろうか?

だが、今子が亡くなれば隣国は正当な後継者を失うことになる。それは避けたい筈だ。

だが心が騒つく。何かあるはずだ。見落としていないか記憶を探る。

そうしているうちに隣国の魔法使いたちが動き出した。


姫さまが隣国の魔法使いたちに囲まれた。

リユウが姫さまに防御魔法を使った。

隣国の魔法使いたちが姫さまのお腹目掛けて魔法を使った。

リユウの防御魔法と隣国の魔法使いたちの魔法がせめぎ合い光を放つ。

しばらくすると姫さまが倒れる。

それを見た隣国の大臣は笑みを浮かべて姫さまに近づいた。

そばにいた魔法使いの一人が姫さまのお腹から赤子を魔法で取り出す。

その赤子を手に大臣は高らかに笑う。

香奈は何が起こっているのか分からなかった。しかし、大臣が手にした赤子を高く持ち上げると床にたたつけようとした。マズイと思ったが、リユウの魔法が赤子を包み赤子は無事だった。


大臣が消えた赤子を探して焦っている。先程の魔法使いとは別の魔法使いが赤子を抱いてやってきた。大臣はその赤子を受け取りまたしても高らかに笑った。

花音の魔法が大臣が持つ赤子目掛けて放つ。

一瞬のことで何が起こったのかわからない。大臣が手にしていた赤子は消えていた。大臣は焦って周りを探すが赤子が消えたのが分かると先程の魔法使いを見る。

魔法使いはまた、赤子を作り出した。大臣はその赤子を手にして走り出した。

花音の魔法が赤子目掛けて放つ。

「どうして?」

香奈は分からず花音に聞く。

「わからない?あの赤子はダミーよ。姫さまの子として国の後継者にするつもりよ」

花音の説明でやっとわかった。

姫さまが生んだ赤子は後継者になる。出産まで待つ事もない。偽の赤子があればそれで充分だ。大臣はそれを狙っていたのだ。

それを阻止する為にリユウと花音は動きだした。

香奈も戦闘体制に入る。

「香奈!」

花音に呼ばれて駆け付ける。

姫さまの救出が先と判断されたのだ。

香奈は花音と一緒に姫さまを連れ出す。

「姫さまをお願い」

花音は香奈に姫さまを託すとどこかに行ってしまった。

香奈は姫さまを連れて屋敷から出る。庭園だろか、広い場所に草木が綺麗に植えられている。

ここなら、香奈は姫さまの腕を掴んで飛び立とうとした。

その時、リユウがやってきた。

リユウは姫さまを抱えて飛び立つ。

香奈も続いて飛び立つと屋敷の付近で大きな音がした。

花音が火の玉をボールのように扱って敵陣に投げ入れている。

急いで空を飛び姫様を連れて国に戻る。花音とリュウが援護射撃て敵の魔法使いたちを蹴散らしてくれる。

城に戻ったな香奈と姫さまは城の一室に通された。

「どうして戻って来た?」

イルドが姫さまを睨みつけながら怒なった。

香奈が反撃をしようとしたらカッシーが止める。

大臣たちが集まってきて隣りの部屋で会議が始まった。

仕方がなく、部屋で待つ事にした。

香奈と花音、カッシーとリュウは侍女が入れてくれたお茶を飲みながら大臣たちの会議が終わるのを待った。

「香奈さん、気づいていると思いますが、未来は話さない方がいいと思います」

リュウに言われてハッとした。

少し前から疑問に思っていた事。

花音がの腕は大丈夫そうに見える。

香奈が知っている花音はバレーボール選手で肘を故障して選手生命を断たれた人物だが、今、目の前にいるな花音は肘の故障をしている様にみえない。連れて来られた次代が違うのだ。香奈は花音より未来からきている。その為花音の未来を知っている事になる。リュウは香奈が知っている未来を言わない方がいいと口止めしているのだ。

それで言うとカッシーは確か大学生で起業した青年実業家として話題になっていた人物だ


香奈は複雑な気持ちを落ち着かせる。


暫くしすると大臣たちが隣室から出てきた。

イルドと姫さまが最後に出てきた。どうなったのか聞きたいけど話しかけれる様子はなかった。

イルドはあたりのものに当たりながら何やら喚き散らしている。隣りの姫さまは無表情でイルドの後に続いている。香奈はカッシーを見る。カッシーはイルドと姫さまの後から出てきた大臣たちを見ていた。

花音と目配せをしてカッシーの判断を待つ。

カッシーはイルドと一緒に出てきた大臣の一人を捕まえて話しを聞いている。その間香奈と花音は周辺の魔法使いたちに話しを聞いた。

「大臣たちは真剣に考えていないと思う。先程届いた隣国からの親書もかなり過激な内容が書かれていたみたいだけど、姫さまを送り返せば収まると考えている節があるから」

香奈は花音の顔をみ見て姿を消した。

「どこに行くの?」

花音の質問に笑顔を返した。

「隣国の親書を確かめに行くの」

香奈は姿を消したまま大臣たちのいる部屋に忍び込んだ。

大臣たちは皆頭を抱えている。

「姫さまはどうして帰ってきたんだ!」

一人の大臣が怒鳴る。

他の大臣たちは異論はないようで、皆俯きで苛立ちを隠さない。

香奈は部屋を見渡す。先程怒鳴っていた大臣の近くに書類があった。香奈は確かめようと近付いて手を伸ばした。

その書類には姫さまの懐妊と皇位継承者について書かれていた。

隣国の思惑がはっきりとわかってのだ。大臣たちは自分たちの考えが誤っていたことにやっと気づいたようだ。

この後はどうなるか気になったが、偵察の魔法使いが合図を送ってきた。

香奈たちは魔法使いたちに後を任せて部屋から出る。

「どこまで姫さまを利用すれば良いのか、呆れるばかりね」

花音は怒りがおさまらないのか声をあげている。

香奈は静かに部屋を出る。

後に続いてきた花音が聞いてきた。

「どうするの?」

「姫さまに確認したい事があるの」

「確認?」

「あの赤子のこと」

香奈が言うと花音も思い出したようで考えこんだ。

香奈は花音と姫さまがいる部屋に行く。

姫さまの部屋には侍女が一人いるだけで護衛すらいなかった。

香奈が侍女に話しをするとすぐに部屋に入れてくれた。

「やっぱり来たのね」

姫さまは香奈たちをみて呟く。

「確認したい事があります」

香奈は姫さまに問いかける。

「来てくれると思っていました」

姫さまの言葉に安堵した。これで拒否されたら次がない。

姫さまの部屋の更に奥の部屋に香奈と花音は招き入れられた。

「私から話せるのはあまりないけど、よかったら聴いてください」

姫さまの話しは香奈と花音が驚くばかりだった。

「ではレオナルド様は両国の思惑を洗いだす為にあの事を企んだですか?」

香奈は聞き返す。

「そうです」

「あの赤子はどういう事ですか?」

香奈は疑問に思っていた事を聞いた。

「あの赤子は隣国の魔法使いが創り出した偽物です。レオナルド様の命を受けた魔法使いが協力してくれています」

香奈は納得する。

それなら今すぐ継承問題が出ることはない。

レオナルドは自国の行動も怪しんでいるのがわかった。

香奈たちはカッシーとリユウが戻ってくるのを待った。

暫くするとカッシーが戻ってきた。

「カッシー、どうしたの?」

花音が聞くとカッシーはニヤリと笑う。

「これから作戦会議だ。みんなを集めて!」


カッシーに言われて花音は香奈たちに声をかけた。








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空からまじょ 小手毬 @aoide

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