第42話 ブラバムの城 (2)

「作戦行動中に司令官寝床に引き摺り込むのってありかぁ?」海尋とクロンシュタットが床下に消えて暫くしてから珍しくスコールイがキレ散らかした。

「珍しい、スコールイが・・・」オトヴァージュヌイが言いかけて椅子の背もたれにグッと体を沈み込ませてませて両手を上げた。スコールイが首筋にナイフを当ててているからだ。

「ちょお、落ち着きや、スコやん、ほれ、天玉うどん」コンソールの上に熱々の湯気が登る

かき揚げの乗ったうどんがコトりと置かれる。置かれたうどんの丼を両手で抱えて一気に飲み込むスコールイ。丼をドンと勢いよくコンソールに置くと

「これが落ち着ける状態かっつーの。海尋ちゃん連れ込まれちゃって、今頃あ〜んなことや、こ〜んなことしたりされたり、うれし恥ずかし楽園、パラダイスストッキングはいた男の娘のお尻をさわさわと好き放題してるに違いない」

そんなことよりもスコールイの奇行の方がよっぽど問題ありだと思うなー。

静かに夜の川を進むクロンシュタット。やがて支流への分岐点に差し掛かると、松明を持った飛びトカゲーー空撃騎兵ーー空兵がオーロラの空の元、方向を指し示す。そんなことをせんでも、こちらの目はオーロラの光だけでも充分明るいのに、松明なんか掲げられてもかえって余計なお手数と言うものだ。我が主人がご就寝中だと言うのに無様な真似晒すわけにもいかんでしょうよ・・・。就寝中、だと?クロンシュタットと・・?まぁ、そうだよな、大抵ヤった後は眠るよな。クロンシュタットは・・・こいつも眠っている。ああちくしょう、主の体抱きしめて夢の中ってか、ああ、羨ましい。クソッ、クソッ、クソ。カフカース?みたく、単独の任務にくっついていって、あわよくば、ってのに賭けるしかないのかね、今んとこ。などとプチイラつくスコールイ。手元に広げたお菓子をがっつきながら計器を眺めていると、

「ん、前方ソナーに感あり、足音かこれ??ー腹擦ってるって音じゃぁないしーー複数の音源が接近中ーーーあ、消えた」

ピリピリしているのはスコールイだけではない、ペレスヴェートもアレッサンドラも、っつーか、CICの中が全て不穏な空気に包まれていた。

「水中で足音って何?」

「わからない、足音みたいな規則正しい音が交互にきこえた。それも複数。方向は支流の分岐点、今はもう聞こえないけど、川底からこっちに向かって」

「魚か何かじゃないの?」

「それはない、ソナーの他に振動感知と照らし合わせてる」

「魚雷でも打ち込んでみる?でなきゃ対潜ミサイル」

やっぱり交戦的だな、この女。とアレッサンドラからの意見に片手を挙げて答えるスコールイ

「ダメよ、何があるかわからないのに無駄な魚雷は使えません!」ピシャリというペレスヴェート。相手が何かもわからない状態では魚雷も対潜ミサイルも悪手だろう。侍女様方がわいのわいのやっていると、

「艦長入室」とペレスヴェートが声を上げる。CICの扉が開いてプラスチックのタンブラー片手に海尋が入ってくると侍女様方の目が海尋に集まり、どこかツヤツヤしている顔立ちは置いといて、普段通りの薄い紫の着物姿を見てホッと一息つく。先ほどの殺伐とした雰囲気はどこへやら、主人の麗しい姿を見て落ち着きを取り戻す。しかし、その雰囲気に頭の上に「?」の

クエスチョンマークを浮かべ立ち止まってCICの中をぐるりと見回す海尋だった。

「海尋様、まだお休みになっていてもよろしいですのに」

アレッサンドラが言うと

「ん、みんなで審議してるからこりゃ寝てもいられないなって、それでどうしたの?」

ざっと経緯と素のままのデータが素のままで頭に入り込んでくる。

「ふうん、なるほどなるほど」

起き抜けなのにどこか楽しそうにレポートに眼を通す様はまるで玩具のカタログを見る子供のようだ。どうにもカン違いしがちだが、落ち着いた外見、物事に動じない彼女達の主はまだ歳13歳の子供の脳ミソなのである。想像力とデータ分析による事実の突き合わせによる対処は彼の経験ーーここよりも酷い環境での死闘を繰り返した経験からくるものなのだろう。その辺は気が向きゃ外伝とかで見聞きできるかもしれないが、そこに自分たちは登場しないだろう。何せ2度目の異世界でも主人にとっては夢現、機会がみせる都合の良い夢なのか、そうと知って足掻くのか、普通の人生を諦めた者の到達点なのか、何のせよ自分は黙ってついてゆく

たとえ破滅の道でも。

「ねぇ、スコールイ。足音って判断したのは、ここ?」

と頭の中のデータの一点を指し示すと、そこには足を踏み出して、踏み込んで、ぎゅむっと沈み込む音、時間にして僅かな時間だが、対象の動きがそこ箇所で遅くなっている。断続的に音を立ててゆっくりと近づいてきているのに、そこの箇所だけがほんの刹那の間だけ遅くなっている。まるで軍人が泥濘の中を進むような慎重な足運びである。そこへ金属センサーやら色々使っても何もでてこない。

「ミサイル準備、目の前に一発カマして泥にうめてやろう」

『対艦?対潜?まぁどちらも無理だけど」

「なして?」

さも残念そうに海尋が聞くとスコールイが

「現在構築中。VLSの設置と他の兵装の兼ね合い。主砲が邪魔になる」

「うええぇ。それじゃぁミサイル自体はあるんだ」

海尋の問いにスコールイが頷くと

「オーケー、四発用意して、甲板に並べといて、諸元は僕の方でやっとくから」

そう言って海尋の姿がCICから消えるとアレッサンドラが

「全く何をやっているのかしら、兵装の変更など”あっという間”でしょうに。

「ミサイルでバカスカ撃ち合うよりも主砲で殴り合う方がクロンシュタットの「好み」。」

「何をバカなことをミサイルの方がスマートでしょうに」

「ミサイルだと撃墜される」

「そこは電子戦でカバーすれば・・・」

「クロンシュタットにそんな細かいことは無理なの。頭抱えて発狂するのがオチ」

「そんな高度な戦法・・・」(まだ無理か)と続けたかったが、それよりも先に納得いってしまったのでそこでアレッサンドラは口を閉じた。それよりも、何か忘れているような気がする。額に指をついてポクポクポクと考える。

「み・・・海尋様っーーーーー!」

旗袍の裾を翻して生足のハイヒールで駆け出した海尋の後ろ姿を思ういうかべて大慌てで血相変えて後を追う。

「いけません!そんな扇状的な格好は、私の。いや、私達意外の前でそんなはしたない格好をしては」男どもが目にしたらどうします、と一体なんの心配をしてるんだアレッサンドラ?

  そりゃ、旗袍の裾から細くて綺麗な脚がドーンと出てりゃぁ、大概の男は皆釘付けになるだろうが、今は夜明けも近い薄暗がり。ましてや艦内の兵員区画は薄暗い。体にピッタリしたタイトスカートでバタバタ走る自分も言えたことではない。太腿なんか丸見えではないか。

しかし一向に追いつかない。いくら船内が狭い上に上下移動があるとは言え、CICから上に一階登って外に出て甲板つっ走ればいいだけの話のはずが、甲板前方の海尋は魚雷の目の前、架台に乗せられた四発のVA-111シクヴァルに両手をついて立っていた。先端がステンレスの銀色で本体は緑色で塗られているその細長い魚雷にはスクリューがなくロケットモーターで推進することからほとんどミサイルみたいなものだ。そのミサイルの小さなパネルを開いて、その中に右手の指を突っ込み、手首の周りを緑色の文字が回ってブレスレットのようにも見える。目の前にパネルが表示されて、翠色の髪の毛が淡く光っているから、諸元を入力中なのだろう。男が3人、海尋を囲むようにして海尋の手元を見ている。マークスとアニエッロとマヌエルだ。

3人とも目を点にして頭に「?」を浮かべている。まぁ無理もない。まだまだ文字を覚えたばかりの原始人なのだから。

  「水の中をどういうふうに進んでどのタイミングで爆発させるか、を入力教えているんですよ」会話の流れは不明だがどうやら「諸元入力」についての説明だろう。それが終わると、あとはコピーした諸元データを残りのミサイルに送り込んで重力制御で「むん」と持ちあげて、そのまま水面に投げ込まれたシクヴァルはロケットモーターの泡沫を残して水底目がけて進んでいった。

  どう考えても無理がある。全長8.2メートル、直径533mm重さにして2,700キロの鉄の塊を痩せっぽちの子供が持ち上げて、河の中に放り込むなんて、重力制御使っって、はーどっこいしょ。と目の前でやられても、目が点になるばかりで、アンビリーバボー、なんだが、マヌエルとアニエッロには魔法だか魔術だかと思われているらしい。

ここらが良いタイミングだろう

「海尋様」サーシャが後ろから声をかけると、青い膝下丈のロングコートを広げて持っていた。「着ろ」ということだろうか、別にこのままでも良いのにと自信がノースリーブの旗袍にストッキング姿であることに別段恥いる訳でもなし、さも当然のように袖に手を通し体に合わせるた二、三ど襟を持ってパタパタとコートを動かす。青いコートはしらえたように海尋の体にピッタリで、特に腰のあたりなぞ細い腰に中央線がよれる事なくたるみもなくしっかりとその身を包み込んでいる。手を上げたときに脇が見えなくなるのは残念だが、後ろ姿もなかなかそそるものがある。記事が薄手のため体にピッタリとして、しかもストッキングの脚が踝のあたりからスッと伸びている。

  「こ、これは新ジャンル・・・?」とうちなる興奮を隠せないアレっサンドラだが、海尋の頭の周りに翠色の光がサークル状にモニターが現れる。

「マーカス、アニエッロ、マヌエル下がれ」と手を横に一扇いっせん「下がれ」とジェスチャーでも示すと「3・2・1・弾着・今」と魚雷の着弾を示唆する。すると、クロンシュタットの前方に水柱が四つ轟音と共に上がり。真っ白な水飛沫が頭の上から降りかかる。それを重力制御で防ぐと、何やら城壁の方が騒がしい。まだ朝日ものぼらない時刻だが、朝の静寂を破った轟音のせいでマスケットやら弓矢を携えた兵士の姿が城壁の鋸壁きょへきに見受けられる。クレールには開口部から野砲が顔を覗かせて、帆船の軍艦のようになっている。

次々に砲門を開閉部から表す野砲はその色から青銅製のものから黒光りする鋼鉄製のものまで多種に渡るが、城壁の高いところに黒い砲門があるのは射程距離の問題だろうか。

呆れ顔で海尋が「やっぱりね」とぼやく。水柱が上がった以外、なんの動きもなく、朝の静けさを取り戻してゆく周りの様子に一つ、また一つと野砲が顔をひっ引っ込めてゆく。頭上を飛び交う見張りのトカゲどもは引っ込んでしまった。水柱のお陰だろうか?これでセンサーも静かになったと注意を戻せば、大の大人が3人、ガン首そろえて、あんぐりと大きく口を開いて何が起こったのか分からずじまいの様子だった。

「手持ちの武器売っぱらかってボーレルはいくら稼いだのかな?」

「はい?・・なんですか藪から棒に」

「せっかく手に入れたクソッタレな神様からのプレゼントを調子よく売っぱらって金に変えて、でも「この考え方」は半島人かな、いくらボーレルの人間がスカタンでも身の回りに並べられるだけで他の武器は売っちまおうなんてことをやるのはよっぽどのアホか中国、韓国人くらいだよ。それとも部品のアテがあんのかな?、粗悪品の複製は半島人のお家芸か」

「確かに自分の国を守れるだけの装備残して、余剰分は他国に売り渡して金に変えて産業の発展にって、マルデ漢「江の奇跡」のようでスネ。他人の金で国力上げてって、まるでFUCK’N韓国人だわ」

「いったいなんの話をしてんだ?」とマーカスが割り込んんでくる。

「畜生民族の浅知恵について思いを馳せておりました」アレッサンドラが答えると

「馬鹿な半島人が自分の首絞めてんのかなってさ、だとしたらおかしくて笑えるよねって話」

  どこぞの半島人を散々コケにした話をしているうちにだんだんと世が明けてきて、徐々に周りが明るくなってくる。ブラバムの城が赤い部分と白い部分を混在させた姿を表すと、だいたい高さは水面から50メートルぐらいで、ダムみたいに垂直に切り立っている様はムガル帝国のレッドフォートのようだで五階立てになっており、縦に5階層、横方向に等間隔に白いアーチ状の凹んだ部分が門のように凹みのあるところには紋章のような彫刻を施されて城壁を見上げる者を見下ろしている。そんなのが川に沿ってずっと続いおり、川を渡って攻め込んでくる者を完全に締め出している。そして六角形の見張塔が等間隔に建っており、その合間を城壁が塞いでいる。六角形の棟には入り口のようにの扉が設けられてはいるが、出入り口という訳だはなさそうだ。船舶用の出入り口は六角形の棟に挟まれた赤い城壁のアーチに型に口を開ける部分にあるらしい。しかし、そこは巨大な鋼鉄の門に閉ざされていて、王の許しが降りない者を拒んでいる。僕らはその門が開くのを待っている。なんでも王の乗る巨大な帆船のために作られたのだとか。マスト高で物凄く高く、聳え立つ山のようだったということからかなり大きな船なのだろう。この城壁といい、そんな帆船を作り出す技術は物凄く興味があるぞ。この目で見るのが楽しみだ。とワクワクしながら、入城を待つとはいかず、水の高さを揃える必要があるとの事で、城の裏口でぷかぷか浮かんで待っていなけりゃならない。CICから艦橋に船の指揮系統を移し、全員楽にしてていいよと伝えて入り口の準備が整うのを待つ。暗いCICよりも外の明るさを感じ取れる艦橋のが宜かろう。なのもないのに緊張状態にあるのは好ましくない。先ほどの雷撃で全滅したか臆したのか、すごすご水底で首引っ込めてくれる分には申し分ない。ただ一警戒だけはしておこう。まだ朝も早い時間なので水面にはもやがかかっている。

しかし長いなぁ、一体何やってんだろか。と門の前でぷかぷか浮かんでいるのもヒマだ。

艦橋で手を頭の後ろで組んで、ボーッとしているとマークスが艦橋に入ってきた。

すでに講習を終えた組がヒマでヒマで仕方ないから釣りをしたいんだが、と言って許可を求めてきたのだが、「いいね、それ」と二つ返事で答えた。ただし、城壁からの監視があるから船の片側、艦橋の影になるところという条件下の下だけど、と答えると、

「堅ぇなぁ、ま、それがいいところでもあるんだけどな」と釣り糸を携えてほぼ全員、船の右舷に甲板だの副砲の上に座り込んで釣り糸を垂れて今夜のおかずにしようと頑張った。釣竿なんかは無いので指先に糸を巻きつけて糸の先に針と餌つけて水の中に放り込む。何か考えていたのと違うなぁ。

「よぉ船長、次は室内戦って聞いたけど一体何処でやるんだ?まさかブラバム公の所か?」

「そうなる可能性は高いかな?後ろの城壁見てごらんよ、やる気満々の重装備だよ」

「それもそうだな、で、船長は釣りの経験はあるのか?」とヌモイが訪ねてくる。

「へ?」これには僕も驚いた」聞けば庶民の娯楽だと思っていたのに、釣りをするのは子供か老人のやることらしい。就労年齢が低めのこの世界ではある程度の年齢になると釣りではなく漁に変わる。生きるためには当たり前のことだ。釣りで遊んでるヒマなぞ無いということだ。あとは身分の低い騎士連中のひま潰し程度のお遊びらしい。僕も釣りはバーチャルでしかやったことがなく、実際に自分の手足使ってやるのは・・・これで2度目だ。ヌモイ曰く、釣り針に紐を結び方キャリアがわかるんだそうだ。素人や初めてまもないやつは固結びか8の字結びで、ちょと上の海釣りになると外掛け結びや打掛結びなど相手が手強くなるので結び方もより強固なものに変わるらしい。

「元は漁師だったんですか?」

とヌモイに聞いたら

「いや、集中力鍛えるには釣りが一番だとき聞いたんだ」

との答えにマークスが

「船長、魔法使いになるにゃ集中力が大事なんだ、自然と対話するには俗世の感覚を断ち切るにゃ、集中して外の世界と対話する必要があるんだと、だったよなヌモイ?」

「?ヌモイさんは魔法使いだったの?通りでカンが冴えてるわけだ」

前から思っていたのだけれど、ヌモイさんはやたらとカンがいい。訓練中に遮蔽物向こうの人員配置とか一歩前に出たらやられるとか、ニュータイプじみた行動が多く、頭に光る例のアレとサウンドが聞こえそうだ。そうなると一歩二歩先読みの動きを余儀なくされる。訓練中でも1対1の先頭には間違えても持ち込みたくない。そんな人だ。

「いや、魔法使いなんてそんなた大層なモンじゃない。艦長のアレを見て折れた」

「アレとは?」はてさてナンジャラホイ。

「僕は魔法なんて使えないし、そもそも使った覚えがない」

釣り糸と針を片結びで結んで餌をつけて川に放り投げる。僕がいつまでもわからない、って顔をしていたらしょうがないと言った顔をしたヌモイが

「おいおいマジかよ、あんなデカくて重いもの浮かして動かすなんて人間技じゃぁねぇぞ。あれこそ魔法だ!俺にゃぁ出来ねぇ」

そう言ってヌモイは背を丸めて頭を抱え込んでしまった。なんだ、そんなことか。僕にはもう手足も同然なんだけどな。

「ヌモイさん、ごめんなさい。僕はズルしてます。あれは僕に搭載されている《機能》で魔法なんかじゃありません」

僕の体には正体不明出所不明な技術が結構使われている。元の骨格が耐え切れないほど重量の嵩んだGwHガンズウィズハンズが良い例で、元の骨格がへし折れるほど重い。インバーキネマティクスに真っ向から喧嘩売ってるその作りは、禁忌の47人と呼ばれた錬金術師達によるもので、こうした方がカッコイイ、より実践向きだ、とか、かなりノリノリで作られたもので、悪巫山戯と魔改造を楽しむ大学生のノリで作成されたものだ。だが、その連中はや得るべきところは「しっかり作り込む」ことででも有名で、試作型から今の形になるのにかなりの時間を要した。何せ最初の起動時に、起動直後に両手が重くて動かせず、無理やり動かせば肘関節の辺りからへし折れる、なんてことになってしまったのだ。で、どうするか、ということで

肘下の軽量化などはせずに、腕ごと重力操作で操ってしまえ、ということになった。筋肉ムキムキのマッチョメンのぶっとい腕にするのは暑苦しいので体が腐って崩れ落ちる前に型取りした3Dデータのまま、華奢な腕のまま多重構造化と「重力なんてでぇっきれーだ無視しちゃうもん(GDMS)と言うものに意志を与えて重力を無視させる」なんて訳のわからないものを頭の端っこに載せることで重量の問題はどうにかなった。出所のわからない中古のパソコンのHDDの片隅に入っていたものだそうだが、そのパソコンもおっかないもので、何処かの世界、何処かの次元に繋がっているらしい。そのため、先生達の間でも解読するのに手こずったそうだ。

んな訳のわかんないもの人の体に載せんなよ、と文句の一つもあるだろうが、かなり使い勝手が良いので僕は重宝意している、それはもう、重宝している。そして同じような重力制御装置が侍女さん’sも搭載しているが、侍女さん’sのやつは23世紀末のしっかりとしたロジックで組まれたもので、精密作業もできちゃったりする。その大元となったのは僕の「GDMS」で、荷運びのためのものから精密作業用にアップデートされたものだそうだ。と回想に浸っている間に魚がかかったらしい。糸もただ手繰り寄せれば良いと言うわけでなく、左手で引き寄せて糸が弛んだところで、右手の親指に糸を引っ掛けて肩と肘を使って肘と親指と人差し指の間でぐるぐると糸を巻き取ってとっ捕まえるのである。で釣ったら後ろの氷詰めた樽に入れておく。樽はもういっぱいになっていて、同じような樽が全部で四つ。血抜きして冷凍しておけば暫くはもつだろう。と言うことで、冷凍庫に持って行こう。今度は自分が凍らないようにしよう。みんなそろそろいいかな。

  「皆さ〜ん、そろそろお終いにしましょう。片付けて中に戻りますよ」

あとは流石に規律の取れた軍人、キビキビと動いて、名残も文句もなく「イエッサー!」と声を揃えて片付けて、そこで釣りをしていた後も残さず、発つ鳥後を濁さず、で餌の取りこぼしやみ図の跡すら残さずに、甲板まで綺麗に拭き掃除までして釣り大会は終わった。最後までモップをかけていたのは僕だけど。で、樽に蓋をして転がして冷凍庫へ運んで終わりかと思ったら、頭落として捌いて内臓とっておいた方がいいとか聞いたものだから「じゃぁやっちゃいますか」と袖捲り。樽から取リ出した魚を調理場に持ち込み、頭を落として3枚に下ろす。野郎四人で横並びになって流れ作業で、頭とって、身を開いて、内臓とって塩振って、と別に長期保存するわけではないから塩は味付け程度に軽く振って、食べる分だけ捌いて残りは冷凍保存しておこう。しかし、この魚なんて名前んなんだろか?白身の魚だからフィッシュ&チップスできるかな?調理場を見渡すとまず小麦が目に入る。続いてバター、これはもう手早く出来るムニエル一択だろう。

「今日に昼初期雨はムニエルしようと思うんだけど、要望ある?」

とお伺いを立てた所、なんだそりゃ?と返答が来たので、バターひいたフライパンで小麦粉塗した魚を焼いたもの、と答えると、上手いのかそれ、とのことで、調理方法よりも味か、こいつら、わかってんな。ちょう魚も3枚に下ろしたことだし、ちゃっちゃとやってしまいましょう。

 そこで全員食堂に、侍女さんたちも集めて軽くミーティングを行う。入場するとなれば、謁見だ。僕と兵が数人と考えるか、それとも僕一人か。身分にうるさい所だから、謁見を許されるのは多分僕一人だろう。僕の肩書きは商人であり、この部隊の隊長であり、重巡クロンシュタットの艦長である、今の所は、一番の責任者ということになる。何にせよ、一番最初に声をかけるべきは僕ということになる。そこで警戒すべきはブラバム公だ。僕が出向いている間、侍女さんs’とマークスさん達はここに待機して、僕からの連絡を待ってもらう。まぁここに隠れて様子を見る。と、そしてマヌエル達ヴォルクは城内の索敵と探索。

  とまぁ、お前自分を招いた領主の城に何しに行くんじゃ?というような布陣だけど、僕からすればこの領主、怪しいことこの上ない。そもそも、癇煩の港での暴動を抑えるならもっと早くに動け、見かねたで聖上様がお試しで僕らを派遣するとしても、僕らの到着前に現地で兵を構えているべきだろうに。

  とりあえず、連絡要因として数名、次女の中から選んでブリッジにつめて、それ以外は艦内で静かに待機。という事にした。時間は昼を回ってだいたい2時か3時あたり。視界の隅

(クロンシュタット艦橋横のカメラ映像)に司祭っぽい格好をした中年オヤジと重甲冑を着込んだ兵士四人と、従者なんでもまだ子供とか二人7人が小舟に乗って鋼鉄の門の隙間から出てきた。なんだ、モロクさんじゃないのか。ほんの少しだけ門を横に開いて、えっさほいさと船を漕いで、間抜け面でクロンシュタットを見上げる。カメラでズームにしなくとも司祭以下全員表情に恐れと慄きが見て取れる。こういった連中に外交官じみた真似をさせてはいけない。それでは僕も準備をしようかね。艦橋にはもうペレスヴェートが入って、全員短機関銃とがガーランドを携えていつでもいけますぜ、って顔つきだ。まだ早いよ。まだまだ隠れ潜んで出し抜く手前だ。司教らしき人間が小声で「出迎えの一つもないのか」これだから田舎者は、と悪態をつき。従者の一人が、なんでもまだ子供だそうですからここは一つ大人の礼儀というものを」「大変見目麗しい人物だそうで、教えるとしたら「こっち」からですかな、はっはっは」

と、とんでもなく失礼なことを宣ってくれやがりますがはてさて、いかがしてやりましょうか。先ずは着替えだ。旗袍からいつもの和服に着替える。きちんとお出迎えするならばきちんとした格好で。自分のインベントリにあるもので手早く済まそう。薄桃色の小紋柄に紫の羽織

鶯色に金の花唐草の帯を絞めお出迎えと行きましょう。さて、どんな教育をしてくれるのか。

鎧と赤のローブにスープの汚れがあるような連中相手に引けはとらないよ。船側面のパイロットドアの滑戸をあけ、声をかけようとしたら、僕の側に銀色の装甲に身を包んだアレッサンドラがいて、こちらヘどうぞと手招きをした。

(00>008どうしたの、その格好。 まぁ奴らの目にはかけたくないけど)

(008>00 あら嬉しい。心配して下さいますの?)

(00>008 そりゃぁ。僕の大事な侍女さんがスケベオヤジのねっちこい視線でジロジロ睨め回されるのは気分がよくないでしょ。僕は大変気分が悪い)

(008>005 あらあら、どうしましょう。(もしかして海尋様ってパワードスーツフェチ?このこうててつのツヤツヤボディがお好きとか、)さて馬鹿やってないで縄梯子下てやらないと。アレッサンドらが縄梯子をおろすと、それを伝って、まず重装甲の騎士らしき男が登ってきた。全体的に丸っこく、腕の可動域を考えてか、た体全面部分が球体から両手の可動域を削り取ったような体型をしており、胸の全面が狭く両脇から抉り取られている。首の部分は胴体部分に埋め込まれている。入り口横の手摺に捕まり、上体を引き上げて床に足をつくと

「失礼する。お出迎え感謝する。我らはスズリ殿のご案内を仰せつかった。スズリ殿にお伝え願いたい」

『僕が鎭裡です。(うぇっ古臭い言葉だ、苦手だなぁ)わざわざ先触れお役目ご苦労様です。どうぞ、範囲は限定させて頂きますが乗船を許可します」

そういうと、騎士っぽいのが残りの司祭、司教、兵士を手振りで招き寄せた。

司教らしき男が縄梯子を伝って、乗り込む手前で手を差し出したアレッサンドラを見てぎょっとした表情を一瞬見せた。何か妙な匂いがするな。ブラハで嗅いだ匂いと同じだ。

「何か?」

「あ、いや何でもありませぬ」」と口にはしているが、腰が引けてるからどうにも決まらない。

「私は王室魔法使いのレズバニア。バックシャーと申す。舵輪はどこですかな」

そう司教らあらしき男がいうと

「舵輪?船の舵ですか、そんなものありませんよ(嘘)。・・・アレッサンドラ」

「はい」とアレッサンドらがギョインギョインと電気的な足音をわざわざ立てて歩み寄る。

「このアレッサンドラに言えば、その通りに船を動かしてくれます。

「何なりと、我が主」芝居がかった様子でアレッサンドが答える。

ですから舵輪などは不要です。して、なぜに舵輪を?」そう聞き返したら

「この先は精霊によって管理されております。そのため、精霊の指示通りに舵を切らないと、最悪船が沈みます」

「ほーん、船一隻分の狭い一本道、道を外れちゃぁ迷いますってか。あんたがたの裁じゃぁ、

できてせいぜいが迷子ってとこでしょ」ここで指をぱちんと鳴らせれば格好もつくんだが、あいにく僕は指を鳴らせない。「アレッサンドラ!」で、代わりに全部丸投げしたアレッサンドラになを叫ぶと同時にクロンシュタットの周りがにオーラロード(笑)っぽいが開く。そうすると、上も下もない奥行きもない異様な空間(隠蔽用テスチャの裏返し(なんか妙な匂いがする)が不可思議な空間が生まれて、空間の渦にここにいると認識の外にあるもの全てが飲み込まれてゆく。

「せめてこのくらいやらないと僕を騙せませんよ」

芝居がかった仕草で大袈裟に、そして効果的に、両手を開いてくるりと後ろを振り返り自称魔法使いの襟を掴んで目をまっすぐに覗き見て

「僕を騙そうだなんて1億年早い」と言って魔法使いの懐から香炉を取り出し魔法使いの顔に近づける。

ぐるぐる回る視界に足を取られて自称魔法使いとお付きの連中もフラフラで甲板に四つん這いになってヒィヒィ言いながら顔を背ける。香炉を自称魔法使いに投げ捨てて、パンと柏手をひとつ。そうすると目の前の風景が一変する。柏手とともに視界が開け、周りの音も耳に届く滝の轟音をはっきりと捉える。目の前には石積みの壁とその上に鋼鉄製の扉。そこから溢れ出す水が滝のように流れる。今クロンシュタットはだだっ広い白い石造りの壁に四方を囲まれて中央にあるプールの上に浮かんでいる。これは閘門だ。高低差のある運河、そうパナマ運河が有名だろう。後ろの扉が閉ざされて水位が上がる。落差は30メートルくらいか、このまま水位を上昇させて最上部の扉の前に持っていくのだろう。こんなことをするためにわざわざ香炉なんぞを使って何をしようとしたのだろうかたかが上下の移動じゃないか。こんなん小細工で驚くほど23世紀末の人間は甘くないとは言っても生きていたのは13年、外の文化に触れたのは半年あまり、それから・・・まぁ何にせよ時代が違うんだよ、時代が。と僕が呆れていると、重装甲の兵士が僕に襲いかかってきた。僕を取り押さえようとでもいうのか、そちらがその気ならこちらも遠慮はしないぞと気構えする。というよりも、サーシャの鉄拳の方が早かった。ヒュッヒュッヒュッヒュ、と4拍子、踏み出す足と肩を始点に突き出された拳が装甲兵の顎の下、喉仏の位置にガンガンガンガンと若い命が真っ赤に燃えて装甲兵をクロンシュタットの甲板に転がす。抜いた剣は体の前で構えることなく甲板に転がる。

「口ほどにもない、とても軍人の足捌きとは思えませんね」と辛辣な一言の後に

(008>00:この装甲、鉄ではありませんね、まるで陶器のような)

う〜ん、確かにマイセンの陶器のように走行の部品の端端に磨かれた白い表面に細かい植物の蔓のじみた模様に見覚えのある幾何学模様とキリル文字に混じってルーン文字が刻まれている。

「これは一体どういう事でしょうか?詳しく話して頂きたい」そう言って自称魔法使いに詰め寄り、先ほど投げ捨てた香炉を手に取って
「これ、幻覚作用のあるお香ですよね、以前知り合いがこれに似たものでキマっちゃいまして、回復に随分と時間がかかりましてねぇ。拷問ってのは面白くないですし、幸いなことに水が溜まるまで時間はたっぷりとありますから一度このお香キメて見ます?天国が見えるかもしれませんよ。どうですか?」

そう聞くと自称魔法使い

「誤解ですじゃ、誤解ですじゃ、これは雰囲気を和ませるために持参したまで、何もやましいことはございません」海尋の裾にしがみついて「誤解だ、誤解だ」と繰り返す自称魔法使いの腹の突き出たオッサン。ついには要らんこと、聞いてないことまで囀りまくる。

(なんか御託並べ出したな、めんどくさいし五月蝿いから黙らせようか・・・)

するとサーシャがどこからかロープを持ってきてオッサンとお付きの二人を菱縄縛りに縛った。

「無駄肉が多くて美しくありませんね。」(僕に同意を求められても困る)

「やはり主人のように細くてしなやかな体の方が、身体に這う縄が六角形が美しく見えるのですが。んふふふふふ」(なんか怪しい方向へ傾き出した)アレッサンドラが自分の体を抱きしめるようにしてクネクネ踊り出す。

「そうだ、私の「お願い」は「これ」にしましょう。縛られて頬を真っ赤に染めて身動き一つとれずに恥辱と恍惚で徐々に昂る情欲に染まりゆく細い姿体、いやん最っ高!」

(ごめん被る!)
「いかがですか、主人。ちょこっとだけ、先っちょだけでも、一度やればわかりますから」

(断じて否!)

クネクネ悶えてトリップするサーシャを冷ややかな目で睨みつけ、

「いつまでやってん時間かかるみたいだから中に入ろうよ」

「ああったまりませんわその腐った海産物を見るような眼差し、ああんゾクゾクきちゃう。讃えよ荒縄!スパッシーバ、ジャパニーズSHI・BA・RI!KINBAKU!心踊るワードに好奇心全開MAXですわ〜。というわけでご主人様、今晩にでも是非一度」

放っておこう。

「まだまだだいぶ時間がかかるな」

水位が少しづつ上がり、水位に伴いクロンシュタットも一緒に上がる。まだまだ水門は高い、

効率が悪いな、こっちの水槽にはどこから水が入ってくるのかなっと。この世界のこの時代じゃぁろくなポンプなんてないだろうから、興味があるな。「あ、」水槽の四隅に目を向ければ四隅の上に排水溝のようなものがあり、そこからパシャパシャと断続的に水が散水されている。排水溝まではどうやって水を汲み上げているのか。ふんふん、四隅のところで筒の中で螺旋状のものを回して水を汲み上げているのか。帆船のポンプみたいだな、そして四隅の螺旋を回しているのは多分皮ベルト見たいなもの使って、どこからか動力を取っているんだろう、よくできてるな。しかし、ベアリングなんかはどうしてるんだろう。縦方向のスラストベアリングが四つは必要になるけど?ま、現状考えても仕方がない。仕方がないから、大人しく頂上に着くのを待つか。

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極光商会繁盛記 マギカロジカオペレッタ 八畳一間 @8jo1ma

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