港町の惨状

訓練ばかりの単調な一日、なんて思えるほど心の余裕が出てきた頃、極光商会の責任者様が戦争の予習をしましょうと言って、ヴァンクス宮のハズレ。大きな川に沿って暫く歩くと見晴らしのいい丘陵地隊についた。見渡すかぎり緑の丘で大きな岩があっちこっちにゴロゴロしている。

「それじゃぁ狐狩りでもしましょうか。あ、「狐」は僕やります。僕に一発当てるか、背中に土をつけたら皆さんので、訓練は切り上げ、あとは自由時間とします」

自由時間とくれば、要は休みみたいなものだ。

「イヤッホウ、話せるぜ海尋ちゃん!」と声をあげてはしゃぐ俺たち。いいのか、「責任者様をちゃん付けとか、でもなぁ、しょうがないよなぁ、まだ威張り腐ってくれればいいものの、威厳っつーか、えらそな素振りっつーか、全然そんな態度はおくびにも出さずにいつも黙って

腕組みもせずに黙って後ろで見ているだけなもんだから、すっかり雇い主の”お嬢様”感覚になってる。それが「狐役」って言ったって、ほんまにすーぐに終わるやろ。舞い上がった俺たちは、素直にこれから訪れる自由な時間に思いを馳せて何をしようかと考えていたところへ、

「んじゃスタート」と言って俺達の前から姿を消した。文字通り、本当に消えた。

   

  なんのことはない、俺たちからちょっと行ったところに穴というか。溝が掘られていて

そこに飛び込んだけだ。後を追って飛び込もうとしたが、ヌモイに引き止められた。このヌモイって奴は勘がいいというか、危機回避能力に長けるというか、長く生きたきゃ言う事聞いとた方が良いといった感じの男だ。身長191センチメートル筋肉もそこそこついている、生粋のヴァルキア人で見た目で損をしている。俺も背は高い方だが、ヌモイに頭一つ及ばない。

「待て、これは訓練だ。どんな仕掛けがあるかわからん。迂闊な行動は控えた方がいい」

と言った矢先に、「ボンッ!」と爆発音がして、溝から白い煙が立ち上った。

「ええい情けのない!小童一人とっ捕まえられんとは、ワシに続け!」とジョルジュが先陣切ってライフルを手に溝に降りて行った。溝に降りると、幅は人一人がかろうじて歩ける位の幅で、やたらと折れ曲がって、見通しが効かない。ひょっこり前に姿を現して来るかもしれない。そう思うとライフルを腰だめに構えて中腰で用心ししつつ歩かなきゃならんのだが、

モゾから頭を出して様子を伺うと、容赦無く弾丸が飛んでくる。またリルか?と思ったら、リルは俺の後ろで、後方を警戒している。んじゃ誰だ?誰で見いい。今は関係ない、穴倉に降りた狐を早よ捕まえにゃ。

  

  頭上に青空が広がっても溝の中は暗い、太陽が頭上にくれば明るくはなるだろうが、その分気温も上がる。完全に後ろを向こうとすると銃がつっかえるから、いっぺん銃を縦に構えて

それから銃口を下におろさなきゃならない、曲がり角がある度に数名、3〜4、5名の塊で

動いていたから曲がり角がすぎると、その分人数が減ってゆく。気が付けば、俺の周りにはリルとヌモイとコーバックとあと何故かジョルジュが先頭を我が物顔で歩いていた。ちょうど曲がり角に差し掛かった時、ジョルジュが曲がり角にに悲鳴と共に引き摺り込まれて消えた。

曲がり角の向こうで、「おごっ!」とか「げぶっ」とか!「ごえっ!」と聞こえて、しんと静まり返った恐る恐るライフルを構えて覗いてみると、溝の壁に背中をくっつけて座り込んでいいるジョルジュがいた。両肩の骨を外されて左の膝まで外されている。「あうう、おえええええ」と呻き声にもにた声に顎の骨まで外されてるんかい!と気づく。まだすぐ近くにいるだろう、追撃するなら今だ!。そう思って溝の先を見るが、もう人の気配すらない。

「早いな、あんな一瞬でどうすりゃここまでできるんだ?」とヌモイが思ったことを口にするかたわら。俺が前方を警戒してジョルジュのは外された骨えを嵌める。

「おいジョルジュ、何が起こったんだ、覚えてるか?」と手短に聞くヌモイに、虚だった目の焦点が合った時、ポンッ!」と音がしてあたり一面白い煙に覆われた。

「はい、ご苦労様でした。あなた達が最後の生き残りです」

そう言って、溝の向こうから顔をだす。一体なんなんだ、ライフルで武装したいい年こいた兵隊がいくら穴倉とはいえ、子供一人にいいように扱われて、全滅だって?一体何をやっていたんだ、俺たちは!!

「あーもう、完敗っす」

「そんなわけで、塹壕ってとっても危険で命が危ないとこなんですよー」

「ははーっ!」俺たち一同、草っぱらに座り込んで頭を下げる。

「して海尋様、塹壕ってのはなんすか?」

とコーバックが口にする。

空気を読めよお前ぇわぁっ!全くコーバックのやつにも困ったもんだ、塹壕ってのは今さっきまで俺たちがいた溝だろうがよ、察しろよ!

「まぁ、塹壕ってのは自分を敵の銃弾から守ってくれる代わりにこちらも動けなくなるんですけどね」

確かにそうだ、溝に身を隠しての撃ち合いになったら、首出したらやられる。亀みたいに首引っ込めて撃ち合ってたんじゃぁどうにもならない。だから一人ずつ削っていくしかないってことになるのか?だけどそれじゃぁ。今日の訓練は一体なんなんだ?まさか塹壕ってところの怖さをおれたちに教えるために自ら的になったって言うのか?


  恐ろしいのは塹壕に入った兵隊の全員が海尋ちゃんにノされて終わってるってところか。

みなジョルジュみたいに関節外されたり、投げ飛ばされたりして行動不能にされている。

いっちゃぁ何だが、海尋ちゃんは背が低い。歳はわからんが、俺達の胸よりも下に頭がある。

そして細っこい。手だって掴んでひん曲げれば簡単に折れそうだ。

 

  よしゃぁいいのに誰かが同じことに気がついたのか、海尋ちゃんにサシの勝負を挑んだ、

結果、去なしては投げ飛ばされる羽目になってそれでも納得いかないって。コーバックの奴だった、本当に空気の読めねえ奴だな、殴り合いのスタンスで去なされたその腕の関節を逆方向に曲げられて、ヒィヒィ言いながら蹴りに移ったはいいが、足も掴まれて関節外されてようやく諦めがついたらしい。見物していた兵隊全てがその光景に舌をまいた。あぁ恐ろしい、一体どんな格闘技でなんて言うの技なのか聞いた奴がいた。

「コッポって言うんですけど、まともな人間の使う技じゃぁありません、あと技の名前もありません」

おいおいおい、もう十分まともじゃねぇよ。その日を境に俺たち全員が格闘術に精を出した。

一方で誰も海尋様を女の子みたいだとか舐めた口を聴かなくなった。名前の後は様付で、通り過ぎた際、後ろ姿にその姿が視界から消え去るまで敬礼して見送るようになった。それがバレると頼むからやめてくださいと言われたが、それが俺たちの敬意の表し方だと説明すると、「僕はあなた達から敬意なんて持たれるような人間じゃない」と顔を真っ赤にして反論したが、隣の侍女様に「お立上当然のことです。それが彼らの有効の証です」と言われると渋々ながらも受け入れてくれた。これを謙虚と捉えるかどうか?

そんな中、ヴァルキア帝国が王位不在であり、いつ周辺の国が攻めてくるかもわからない状況であることを知った。現にエリシケの港に軍艦が入港していいるなんて噂もある。この事態をどうするのか、そう聞いたところ、

「そうならないようにあなた方を訓練しているんですよ。数で言えば2個小隊に毛が生えた程度ですが、その力量は2個大体にも勝るでしょう。あなた方の一人が無知な軍人を3人訓練すれば、2個連隊が2個大体になる。そうすれば数の不利は覆せます。」なんてサラッと言ってのけた。そこまで考えて運用してくれているのだ思うと俄然やる気が出てくる。


一方、海尋含め極光紹介の面々は国王不在の今、都市の治安維持にも奔走中だったりする。

各領地、ヘクセン、ラハセン、ハリスの三大領地はそれぞれ、領主の扱いになるのだが、国交問題なりそうなことは帝都の指示を仰ことになっていた。

そんなんわけで、訓練兵の様子はアレッサンドラに任せて警察組織の、治安維持のための相談事を宿舎4階の物置と化した一室で、出しっぱなしのライフルを木箱に詰めながら 

(00>一体どこから話が漏れたんだろう)

(077>町の異変とか小競り合いからでしょうか)

(008>エリシケの方で騒ぎがあったそうです。「この国は俺たちのものだ」と騒ぐ外国人が多く見られます)

(00>1714:馬を4頭貸してもらえるかな)

(1714>00:いつでもオッケー、荷造りしてあるからすぐに渡せるよ)

(00>1714:上出来。>008ヴォルク全員に召集。事の詳細を調査させて)

(008>00:御意すぐに向かわせます)

(007。>00聖上様より、此度の騒動は近衛が鎮火したとのご連絡です)

(>007:?どう言う事、詳細は?それより仕事してたのか。あの人!?」

「私ゃぁニートかなんかと思われとるんかの?」


「どうわぁぁっ!聖上様、ご用があればお呼び立ていただければいつでも馳せ参じますのに」

突然耳元で囁くように言われて、驚く海尋に、

「いや、退屈でな。それよかお主に預けた連中はどうしているかの?」

聖上様から急な問いかけ、

「はぁ、一期生は無事訓練終了間近です。二次選抜をどこから取ろうかと考え中です」

進捗状況を答えこれからの事を大雑破に伝える。


「そこでちょっと相談なのじゃがな、近衛の連中なんとか組み込めんかな、遊ばせとくのは勿体無い」

うーん、確かに勿体無いよなぁ、空撃騎兵の方もやれば航空戦力になるかもしれない。

箱詰めされている直そうと思えば直せるM-1ガーランドがゴロゴロしている、その中からバレルの精度の良さそうなものを選び、選り分ける。そして、ニコイチ、サンコイチの共食い整備でなんとかなりそうな物と部品取用に選り分ける。


「あれ、すでに近衛が数名ヘクセンの港街に入っているのではないですか?」

だがそれは初期の近衛で、リルが数十羽年ぶりに新規で入ったと言うから古参の、しかも初期の近衛は悪魔の軍勢とか言われてるんだっけか、この話をするとリルが目に見えて怯えるから

スルーしてたんだけど。


「お見通しか、やりづらいのう、感謝のチューでも貰おうとも思ったのにのう」

M-1ガーランドの箱に座り込んむ聖上様、まぁ周りをウロウロされるよりはいいか。

「冗談でもやめてください」


「甚く《いたく》本気じゃぞ、そしたら後500年は戦える」


で、ものは相談なのじゃがちいっとヘクセンまで行ってちょくら治安維持活動なんてやってくれはすまいかの?正式な依頼じゃ朕の手の者が2名、とてつもなくデカ鉄鋼船がへエリシケに入港して、乗組員が町の者どものに狼藉働いてくれちゃってるとかで、軍隊の派遣を要請してきおった。現地のじゃぁ、話にならんそうで、こちらも二人では他勢に無勢、数で押し切られて負けよ。先の騒動も気になるが、どうにも奴ら調子こいてるから見てきてくれんかの?

鉄砲で武装してるっつーからどうにも気になってお肌が様子が気になって仕方がない」


「冗談じゃない」


「ま、この事態を第二次統一戦争とするか、単なるクーデターと見るかは今後の出方次第じゃな」

まぁ机の周りをウロウロされるよりはいいか。

「で、ヘクセンからの報告はどうだったんですか」

「癇煩じゃと。癇煩の乗組員が店で女の順番巡って大騒ぎしたんだとよ。全く馬鹿馬鹿しい」

「その船はよくくるんんですか?」

「いいや、全く。いきなり来て国旗掲げて入ってきたそうじゃ。商人カードはボーレルのものだったそうじゃぞ」

「怪しいなぁ、それじゃぁちょっと行って調べてきます。」

ドアを開けて、木製の階段を降りてゆくと経年加工とでも言うのだろうか、手摺がいい塩梅に磨き込まれてなんだか触るのが勿体無い、表面だけに艶があるのではなく、その内側から艶が出てくる感じに見える。さて、確かエルベ川沿いの道は泥ぬたの道だっけか、うーん、ペレスヴェートがいるから兵員輸送トラックも出せるか、あ、でも運転できる人間がいないか、

それと、服装にも気を配るべきだよな。と言うことで上下オリーブグリーンとカーキの服と

軍靴揃いを準備、運転も覚えてもらわにゃいかんなー、とか、綿花の栽培も始めようかなー、あと肉、兵隊養うとすれば、多量の肉が必要だ。拠点に養豚場でも・・・足りねぇよ。



 (00>099 ごめん、クロンシュタット、ちょっとエルベ川下ってエリシケまで運んでほしいんだけど、うん、僕と兵隊11名。通常装備でいいよ、それと武器弾薬満載にしといて。)

「さーてっと、ちょっくら治安維持でもしてきましょうかね」

先行している近衛2名、ロレイン・サンダースさんとユースフ・サーラインさんの二人の報告では・・・・あれ?一体聖上様はどうやって報告受けたんだろう?今度教えてもらった方が良いかな。

(00>008 :サーシャ、訓練中止、全員装備整えて私服用意してクロンシュタットの前に集合)

(008:承知いたしました。5分下さい)

(00>008、急がなくてもいいよ、時間には余裕があるから)

(008>00:でもそれではらしくないというか気分の問題が)

(00>008:でもそこからじゃこっちに来るのに5分じゃ足りないでしょ、だからゆっくりでいいよ)

気分で理不尽押し付けられるのか。皆に謝っておこう。


  クロンシュタット前。困ったことに仮設の桟橋と甲板の高さが違いすぎる。僕らは重力制御使って一っ飛びだが、人間の皆さはそんなこと出来ない、何か適当な板でもないだろか。

もうパレットでいいか。と言うことで、桟橋近くの陸地にパレットを2枚敷いて到着を待つ。

全員ダッシュできて整列する。

「く、訓練生11名。当着いたしました」踵揃えて敬礼しながらぜ全員到着、しかしほとんどが息が上がってる。ぜぇゼェハァハァとに、腰を曲げて手を膝に置いて汗が顎の先からポツリポツリと落とす。サーシャ一体何やったんだ、

「ご苦労様、全員落ちないように身を低く屈めて」

「え?えぇっ??うわわわわっ!」やはりまだ上下移動の、足に向かって流れる加速度には皆さん慣れないらしく、狼狽える。無理もない、むき出しの全面ガラス高層階エレベーターみたいな物なんだろうなー。そら、足元が定かでないとビビるわな。大の男がピーピーと嘴黄色い並べて狼狽えている。曰く、人間は空の生き物ではない、と。んで、クロンシュタットの赤い甲板に降り立つと、ほっと一息、安堵のため息。しかし、サーシャ、海尋と甲板にひらりと佇むと、男連中が眼ぇひん剥いて驚きを隠さない。

「おいおいおい、海尋ちゃん!どうなってんだよ、何をどうすりゃぁ、そんなに軽やかに降り立つことができるんだ。そんな人間辞めためたような真似どうやってるんだ?」口調様々、喧々轟々、湧き上がる疑問をそのまま口にだす。しかしながら、海尋は一応上官である。苦々しい顔したアレッサンドラの手にはテーザー銃が、それを失礼な口聞い者に顔色変えずに無慈悲に打ち込む。

「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


打ち込まれた方は、いくら弱い電撃とはいえ、体を細かく打ち震わせて悶絶する。


「ちょっとサーシャ!何やってんの!!」


「軍人としてあるまじき行為に罰を与えただけです。今後このようなことがないよう徹底します」



しれっと答えるサーシャだったが、赤い甲板のたうち回る男が


「ああ・・・いい・・・クセになっちゃう」


とかほざいているので頭を抑えてクロンシュタットの中へと入って行った。


椅子が横に2列並べられた少々窮屈な部屋に入ると、

「皆さん座って下さい」と海尋が言い、自分はというと、一段高い前のスペースに立ち、

「大丈夫ですか?アイザックさん?すみませんでし・・・た?」

恍惚の表情を浮かべてカクカク揺れているアイザックに声をかけると、最後に疑問符がつく。

どう見ても電撃喰らって悦んでいる。まるで、愛情表現と言われて悦んで電撃喰らいに行ってる諸星あたるだ。

壇上で海尋が押さえた頭をフルフル降って、ため息ついて、

「えーと、エリシケが癇煩共のに荒らされています。昨日ですが、一軒の売春宿に入った癇煩の一人が、女の順番待ちでゴネて、食堂で食い散らかした分をタダにしろとか俺の方偉いんだから優先して女を回せと駄々捏ねまくったあげく、銃で従業員脅して現在も店に居座っているとのことです。皆さんには癇煩どもを皆殺しにして欲しいんです。

「海尋様」と挙手があった。

「何か質問ですか、それと僕に敬称は不要です」と答えると


「いや、それでは侍女様の意おっしゃる通り規律が保てません」


いかにも軍人らしい答えに納得はするが、どうにも小っ恥ずかしくて仕方がない。


「皆殺しとは穏やかじゃありませんね。そんなに被疑を受けているのですか?」

もっともだ、普通の船乗りで、普通のトラブルだったらこうはならないだろう

「相手は癇煩です。そこに慈悲も許しもありません。癇煩だから殺す、それだけです」

何か個人的な恨みでもあんのかよ、と一人のつぶやき声が聞こえる。しかし、それは全員の声だろう。

「それもありますけど、私情は挟みません。癇煩だから殺す、癇煩だからこの世界から消す。

癇煩に生存を許された土地はここにはありません」

妙にキッパリと言い切った。よっぽど深い恨みがあるのか、そう思ったのは呟いた本人だけでなく、ここにいる全員なのかもしれない、だが、いくら緩くやっていても俺たちは軍人だ、そして、俺たちの「頭」はこの歳若い、まだ少年?少女?どっちともと取れるすこぶる付きで美人の子供だ。そんな子どもがここまで辛辣に殺すだなんて言うからにはよっぽどの事情があるのだろう。とその時はそう思った。


  クロンシュタットが艦の哨戒中に、と言っても殆どがセンサーによる外部情報収集なのだが、その内の一つのパラメーターの異常に気づく。

「あれ?おかしいな、ここいらへん重力のデータがプラスに傾いてやがる。微々たるもんだが、私ら自動人形の目は誤魔化せないよ。ふんふん、こっから、あーどこまでだ?重力計数がプラス方向に動いてるよ。・・・ふん。そういう事か」

(099>00:海尋ちゃんちょっとこっちきて来てくんない、面白い数値が出てる)

「どれどれ、ふーん」

クロンシュタットの腰の横から顔を覗かせてipadサイズのクリップボードを覗き込む。

「ん、ほれ」

右手を海尋の肩に置き、自身は後ろに回って、左手でボードを海尋の前の差し出す。

海尋の肩越しに右手でボードを指し示し、

「ほら、ここしゅ、ここの数値ぃ」

微妙にクロンシュタットの声が上擦る。

(クンカクンカ あぁ〜〜えぇ匂い。もう辛抱たまらん、このまま抱きしめて襲っちゃおうか、そういえばたたせっぱなしでお口でご奉仕ってまだした事なかったな〜)んどと邪な事を考えていたが、

「待って、待って、この仕事終わったら好きにさせてあげるからさ。今はな・し」

クロンシュタットの頬を撫でながら首を上に向けて、やたら色っぽい口調で峰不二子のように囁くと、左の頬に軽くキスして、データの入ったボードを奪われた。

骨抜きになったクロンシュタットは

「あ〜ん、もう。パンスト直穿きで両手縛って吊り下げてエロいお腹にキスマークだらけにしちゃる」

とエロい妄想に浸って涎が煽れっぱなしである。


そんなクロンシュタットを傍目に海尋は自身の呼び名について考えていた。

今まで通りにはいかないかなぁ、別に「海尋ちゃん」で十分なんだけど、組織としちゃぁマズいのか。だとしたら無難なとこで少佐?大佐?いや僕はそんな功績あげてないしなぁ、我が主人とかご主人じゃぁ名前負けしてるよ、どうにも。クロンシュタットの戦闘指揮所(CIC)の椅子に腰深く腰掛けて、手元のボードを見ながら難しい顔して

(たいていこういった軍記物になると大佐、полковник《ポルコーヴォージェツ》とか少佐、Майо́р 《マィオール》って将校がメジャーだよな、あとは呼び捨てか、だけどそれは絶対にアレッサンドラ達が許さないだろうし、自分達が侍女だからって、僕を巻き込んでロールプレイってどうよ?好きに呼ばせりゃぁいいじゃないか、大体僕はそんな大した人間じゃぁない。ご主人様と言うからにはもっと思慮深くて聡明じゃないと。とぶつぶつ言い出す。外見からくるコンプレックスがぐるぐる回る。折り目正しく和服を着るのもそのためである。せめて見た目ぐらいは、とは思うのだが、「服に着られる」というか服の威厳を拝借している気がする。まだ、ゲームの中では、評価を気にしていればいいのだが、実際に自分が使う

人間が出てくると、そうはいかず、自分よりも立場が上の人間や、社会的立場上の人間と肩を並べて動く限りは、それに見合った服装から、である。こんなこと気にしてもしょうがないのは重々わかっちゃいるが、そうもいかないのが教育の弊害とでも言うか、「偉い人と会うんだから着るものぐらいはしゃんとしろ」と祖母に殴られて教え込まれた体には、きちんとしないと落ち着かないのである。今日は一日OFFの日にするつもりだったので、軍服は着ていない。

麻のインナーにし薄水色地の紗の着物に白地に薄い桃色、紫色で一部模様を付けて織った帯を占めて赤の帯締めで纏めている。裾と肩口に杜若の模様が入っている。そんな格好でCICの椅子に座ってあれこれ考えているとヘクセンの港まであと僅かな距離となり、海尋は一旦船を停止させる


「目と鼻の先だっつーのになんでまた」


とクロンシュタットがぼやくが、


「相手に気付かれぬようこっそり近づいて横から思いっきりぶん殴る」


とまぁ、クロンシュタット好みの返答が帰ってきたので、言うとおりにした。


「鑑、停止。いるね、敵さん大体右正面、腹むけて停泊中」


「それよりも燃えてるよ、街が。一体何やらかしたんだ、まさか砲撃?クロンシュタット、砲撃戦用意。訓練へに告ぐ、武装と救助の用意して下船準備」


港町から黒煙が立ち上り、川辺には逃げてきた避難民が集まっている。

パレットに訓練兵を載せて降し、すぐさま避難民をクロンシュタッっトの中に載せる。

その際、怪我人優先して重傷のものはすぐさま手当を幸にも重傷者はおらず、軽傷のみだったが、それでも出血や小さい怪我が見受けられる。

「クロンシュタット、怪我人の治療を、6名残ってクロンシュタットの補佐に当たれ、あとは警戒」


テキパキと指示を飛ばす海尋に声をかける者がいた。

「失礼、貴君が極光商会の鎭裡海尋殿か?私はユースフ・サーライン、ヴァルキアの近衛だ。」


救急医療キットを手に手近な怪我人に容態を聞き、見れば腕と足に大きな切り傷がある。


「家が崩れるときに、幸い瓦礫の下敷きににゃぁなんなかったど逃げるときに引っ掛けたらしい」


「少し黙って目ぇ閉じてて下さい、ユースフさん、状況の説明をお願いします」


海尋が手にしたのは麻酔の注射。それを見て患者が、ただ絵さえ血の気が引いた顔を真っ青にする。


「なんだ、その針は、それで俺をどうしようって言うんだ!」

麻酔なんて見るの初めての未開の原住民にゃぁ恐怖だろうなぁ、


「仕方がない、ちょっとごめんなさい」といって、正面から顔の真ん中に1発入れる

「うげっ」なおも喚き立てる患者が鼻から血を流して気を失う。

局部麻酔を一本キメさせて、針と糸を手に取ると、ユースフがなんとも言えない顔をして

「乱暴だが、的確だな、癇煩の奴、負けが確定すると、逃げて砲撃始めやがった」

頭の中のブラックジャックを頼りに消毒、縫合までを済ませて平手を患者の顔にパンと1発。

暫くは手を使わないように足も同様、大人しくしといて下さい、力仕事は厳禁です。次っ!」

見るからに怖気ついている。そらそうだ、怪我した上に殴られて、針刺されて、縫い合わされて、知らん人間が見たらビビること間違いなしだ。第一、「縫合」なんて治療法あんのか?

「軽い火傷ですね、軟膏塗っときゃ後も残りません」

海尋とクロンシュタットの治療が一段落して、さて、ユースフさん、傷口見せて下さい。


「い、いや、私は大丈夫だ、大したことはない」と咄嗟に左の脇腹抑えて後ずさる。


見れば服に血が滲んでいる。


「大丈夫ってことはないでしょうかなりの出血ですよ」


「いいんだ、本当に大したことはない。後生だから、本当だからっ!」


ジリジリと海尋から距離を置く。


「しょうがない、観念なさい!」と声を荒げて右手でブンブンと遠慮しますとジェスチャーしていたが、その右手を掴まれて引き込まれてドスンと床にねっ転がされる。


「うおっ!と脇腹抑えて、まな板の上の魚のようにビチビチと跳ねる。


「うおおっ!痛えっ!痛ぇっ!何しやがる、この薄荷頭メンソルヘッド!」


「あ、久し振りだなぁ、この呼び名」と言いつつユースフの服をジョキジョキ切り刻む。


「撃たれたんですか、こりゃちょっと大変だなぁと」言いつつ、局部麻酔を一本突き立てる。

血液型なんてものはまだ知覚外だろうから、指先で傷口をなぞって僅かな量を掬い取って、舐める。そして点滴と輸血用のパックをとりだして


「失礼」と言って裏拳で頭をこづいて黙らせて(気を失わせて)腕に針を刺し、極分麻酔の追加分を脇腹に刺す。そこに右手をかざし


「ん〜、え〜っと、あぁ、あったあった、これだ」とゆっくり右手を引き上げると傷口から銃弾が腹の肉を割って出てくる。肉を割って体内から出て来た血濡れの弾を掴んで傍に転がす。


「ふう」


と一息つくと、周りから顔を覗かせて散ろう行為に見入っている観客が頭を引っ込める。その中の一人が


「騎士様俺を庇って撃たれただよ、ほんにすまねぇ、すまねぇ」

と涙ぐむ


「とりあえず、何があったのか教えてくれませんか」と声をかけると


「わがんね、全くわがんねぇ、どうしてこんなんなったただ、知りたいのはおらの方だでよ」


と訛り丸出しで嘔吐えずき始めた。


困ったなぁこれじゃぁ訳がわからないまぁ、現場を見れば、わかるだろうかと、これから来る避難民のためにクロンシュタットと数名兵士を残して銃を手に取り街に入った。


 確か売春宿って話だったけど、どこだ?


「誰かこのあたりに詳しい人いますか?」


家財道具抱えて避難する人々の流れに逆らって、流石に大八車なんてないから、着の身着の儘

爆心地から遠ざかる人々がちらほらいるだけで、住むところ奪われて泣き叫ぶ女性や子供。

黒煙が上るとこが近くなってくると、石作りの家が崩れて崩壊している。隣接する木造の家が

半分倒壊して燻っている。中にはまだ死人がいるのだろう。町の住人が瓦礫を除いて家に埋もれた被害者を助けようとしている。その中をライフルもって進んでゆく。助けを求める声に反応もできず、唇噛んで、奥歯を噛み締めて。

目的の場所はすぐに分った。店の従業員が無惨な姿で店先に吊るされていたから。殴り殺された後、首に紐をかけられて、素っ裸で尻を通りに向けて。尻の辺りにはオデン文字のようなもので落書きされている。


「非道い真似しやがるぜ、死んでもな尚恥かかそうっってか・・・」


石造りの二階建てかつては立派な作りだったんだろう、店の周りのには甲冑着剥ぎ取られた守備兵が転がっている。決まって下半身さらけ出して道端に倒れていた。店の面がこんな状況でも見栄の中では乱痴気騒ぎでもやってるのか、えらく喧しい。ハンドサインで突入を支持する。

店の入り口は開け放たれていて、中から盛況な笑い声が聞こえる。銃口越しに前を見据えて、腰を落として、一人、二人と、・・・一人目で詰まった。中の光景にただならぬ光景を見たからだ。ひっくり返された皿、皿、皿。折り重なった人、人、人。一番上の裸の女の上で笑いながら腰を振る明らかに不潔な物、死体を殴りつけ、飛び出た眼にしゃぶりつく変態、中には女の腹を引き裂いて中の赤子を取り出して泣き喚く稚児を逆さ手にテーブルに叩きつけて拍子を取ってピョコタンピョコタンと無様に踊る不具。これが人間の行いか?

先頭の人間はライフル持って固まっていた。

「あ・・・、あ・・・あ・・・・・・」と言葉にならない声をあげ、ブルブル震える手に合わせてライフルが手に合わせてカタカタ揺れている。

「ぶ・・・ぶ・・・・ぶ・・ぶっ殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

一人が叫んだ。続いてライフルの射撃音。叫びながら、泣きながらライフルの引き金をひく。大粒の銃弾に射抜かれて、、癇煩は舞うように血を撒き散らして倒れて辺り一面地獄絵図だ。

ほぼ同時にクリップが飛ぶ音がして、あたりが静まり返って、打ち尽くした弾を再装填して荒く息をつく男たち。生きているものは誰一人おらず、癇煩は舞うように血を撒き散らして倒れて辺り一面地獄絵図だ。全員が下半身曝け出してくたばっている。

「お前ら何をしているっ!」2回に上がる階段の上から鰓がはった癇煩特有の顔を覗かせ、

「こいつら丸腰だぞ、それを大勢で寄ってたかって撃ち殺すなんて、それがい男のすることかよ、恥を知れ!」とか怒鳴りながら階下に降りて殿しんがりの海尋に詰め寄る。激昂して何を口ばしっているのか、細い目と太い眉を釣り上げたり、真ん中に寄せたりして険しい表情で喚いている。その内、海尋に向かって手を伸ばす。待ってましたと言わんばかりにその手を取って、引き寄せて、後ろに向かって放り出す。だが放り出された物は人間の形をしていない。首が捻じ曲がり、真横に真上を見上げて両手は後ろに回されて肩から外れて肘が反対側にくっつきそうだ。胴体も不恰好に右と左で肩のた高さが違う、それも見た目以上に不恰好に。腰下は引き伸ばされて前後逆向きで足が180度あらぬ方向に曲がって、足の裏が頭を持ち上げている。、しかもまだ生きてやがる!!何か言いたげに口がぱくぱく動いているからまだ正気は保っているのだろう。

大の男を一瞬でこんな壊れた操り人形みたくぶっ壊せるなんて悪魔の所業だ。全員ドン引きで目を丸くしていた。上を向いた顔を容赦なく3回、右、左、右と三回殴りつけ、

「聞かれたことだけ喋れ、それ以外の発言は許さない」と言って、相手が頷く前にゴキリと音を立てて頭を嵌めた。その瞬間、何だかんだと文句を言う、学習能力がないのか。顔のど真ん中を銃のストックで殴られて、大人しくなったが、恐ろしいのは感情に任せて手を出してない事だろう。いつの間に加わったのか、町の住民っぽい格好をした見慣れた顔が、手で口を押さえてこれから処刑される犯罪人を見る目でこのクソ野郎を見ていた。


店に吊り下げられた遺体を降ろし、道端に転がる町の守備兵を真っ当な姿に戻して邪教の本尊と化した癇煩を前に引き摺り出して衆目に晒して

「あとは石投げでもなんでもお好きなように」と店の前に引き摺り出して衆目に晒した。

「鎭裡様、ことの詳細がわからないとまずいのでは」と疑問に思ったのでお伺いを立てると

「あぁ、それ?後から脳みそに直接聞くから苦痛を味合わせてからでも大丈夫」

と言って、何やら怖気のする器具をずらりと並べた。これ本当に人間に使ってもいいモンか?


  早速通行人の一人が石を投げ始めた。途端に道ゆく人が挙って石を投げ始める。家を返せ、家族を返せ、と恨み眼差しで投げつけだす。あっという間に石がぶつかったところから皮膚が裂け、血が流れ出す。それ以外のところは、青黒く染まってゆく。ヒィヒィ泣きながら頭を手で隠そうとするが、正常に動かずに、踊るように頭の周りをぐちゃぐちゃに動くだけだ。

「うぎぃぃぃぃ、びえぇぇぇぇぇぇ、うあぁひぃぃぃぃぃ」と鳴き声をあげて石を避けよう

とする癇煩に

「そろそろかな」と呟いて癇煩に近づくと

「うびぃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぴぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」と一際大きな声を出して後退りする。

「えらく嫌われたもんだなぁ」

嫌われるどころか心底怯えてますって、完全ににびびっちまってるわ。胸ぐら掴んで拳を振り降して顔をボガァ、ドグワァとぶん殴る。すると、あら不思議、顔が正面向いて一応は人間の顔つきに戻りましたわ。そして

「お前の名前は? 名前だ、名前を聞いている!」と右へ左へぶん殴る。あのちっこい体と細い腕にどんだけ力があるんだよと聞きたくなるくらい、首で胴体と繋がってなければ首がどこかにすっ飛んでいきそうなくらいぶん殴る。殴ったはずみに右目が飛び出してゴボゴボと喉から音はする。すると、さっき並べた器具から、先にブラシのついた細長い棒を取り出すとおもむろに癇煩の口に突っ込んだでジャボジャボと喉の中を引っ掻き回した。

「オブボアァ、ゴボゴブバァァ」喉を掴まれて、中を掃除されて白目を剥いてピクピクと痙攣し始める。だんだんと拷問じみてきたな、しかも顔色一つ変えずに被人道的なことをやるなんて人の心あんのかると、アイザックが「おい、もういいだろう、それ以上やったら死んでしまうぞ」と詰め寄った。するとゾッとするような冷たい目で

「お前こそ何をみた。この店で何をみた!言ってみろ!」「何を見てそんなお優しいセリフが吐ける!この狂った惨状を見てまだこいつらを人間扱いしろと言うのか?」

全くだ、この狂った所業を見て人間を語ることすら烏滸がましい!従業員が何をした、女給が何をした、死んでも恥かかされなきゃならんことをしたのか?海尋ちゃんの言うことも尤もだ。

ここにいる全員が同じ事考えてんだろんな。

「マークス!こいつふん縛って繋いどけ」うお、珍しく海尋ちゃんが命令口調だ。強い口調の海尋ちゃん、いや、カピターン《капитан》(「船長」ではなく「隊長」の意)に戸惑いつつ、涙目でしゃがれた老人のような声にならない声でヒューヒュー嘔吐えずきながら嫌悪感もよおす嫌な格好でどうにか脱げ出そうとする癇煩に縄をかける。

「貴様ら、今直ぐにそいつを解放しろ!」と怒鳴る声が野次馬をかき分けて前に進み出た。

するとわらわらと癇煩らしき連中がマスケットを構えて俺たちを包囲する。反射的に俺たちは海尋ちゃんを中心に散開してライフルを構える。一触即発ってやつか?とか考える前に奴らぶっ放しやがった。一斉に放たれたマスケットの硝煙であたり一面方法と煙がたちこめて、視界が悪くなるだがすでにポイント済みだ。

「マークス、撃て」とだけ口にすると、ずれた射撃音が聞こえて、悲鳴とジタバタともがく癇煩、両手両足が変な方向に動いて、頭を地面になん度も叩きつける。下顎がカパカパ動いて

声にならない声で喚き散らかす。マスケット持ったままパタパタ倒れる癇煩どもが野次馬に突き飛ばされて転がってゆく。逃げ惑う野次馬がアリの子の散らすように遠くに離れると、目の前には癇煩どもの親玉が一人きり。残った癇煩どもも半自動の連射の出来るガーランドに次々と頭を撃ち抜かれてバタバタと倒れていった。


「ひ・卑怯者め漢なら拳で戦え!自分達の方がいい武器持ってるからって見下しやがって、卑怯者!卑怯者!」


最後の癇煩に狙いを定めると、やたらと「卑怯者」を連呼して騒ぎ始めた。

すると、ジョルジュが近づいて、銃床で思い切り横っ面を殴った後

「俺たちの持ってる銃が連写ができると気付かなかったのか!見下されるようなことをしでかしたのはお前らだ!それにどうこう言われる筋合いはない!」と怒りの言葉をぶち撒けた。

尚も「強い武器で蹂躙するのが楽しいか!卑怯者め!」とかいい出す始末。黙って聞いてる海尋ちゃん。口を一文字に結んで、相手を見据えてじっと口を閉じている。そして一通り、言いたいことが言い終わると、こちらを「卑怯者」を詰るばかりとなった。

言いたい事はそれで全部ですか?」

と海尋ちゃんが聞くと

「じゃぁ見逃してあげるから、これ持って消えろ」

とガラクタ人形と化した癇煩を放り投げた。

「あああ、ビ・ガン、ビ・ガンしっかりしろビ・ガン、この人非人め!こんなことをして、お前それでも人間か!!」

「即理そのままお返しするぜ」と俺が言うと、

癇煩はガラクタ人形抱えて泣き叫びながら船着場の方へ消えていった。

「全員戦闘準備、薬室にたま込めといて癇煩の群れがきますよ」

海尋ちゃんが指示を出す。

「なぁ、カピターン、大勢くるってことか?」と俺が尋ねると

「奴らの常套手段です。後から大勢で詰め寄って数にもの言わせて相手を蹂躙する。今逃げてった奴が大勢呼び寄せてまた来ますよ。世界が変わっってもやり口は変わんないなぁ。ちょっと時間あるから皆携行食料食べといた方がいいかも、」

そう言われても仕事中だ。いつ何が起こるかわからんし、避難民も落ち着いたらしく、あたりには折れたたちしか残っていない。死体を運び出し、改めて何が行われていたのか確認すると、撲殺者一名、これはこの店の店主だろうか?首に縄かけて吊るされて、何か記号のようなものが書かれた痛っ切れを首から下げていた。丸と直線で子供の落書きみたいなもの串に刺した食べ物を連想させるが見ていてムカつくから、死者を冒涜する言葉だろう。店の中はと言うと服を無理やり引きちぎられてお犯されたたまだ年若い娘たち、またぐらに酒の容器を突っ込まれて絶命している。改めて癇煩に対する怒りが湧き上がる。これは海尋ちゃんが正しいとは言わないが、その怒りがああも苛烈に出てくるのはうなづける。女給さんの上に折り重なるようにくたばっていた癇煩の死体は尻の穴から撃ち抜かれて腹の中で弾が止まっていた、女を犯してる最中に後ろからカマ惚れれて死んでりゃぁ世話ねぇな。と店の転がる癇煩以外の遺体を店の外に運び出している最中に「ちょっといいいか」とジョルジュがマジな顔つきで尋ねてきた。なんだよ、「マジな話か?」

「ついさっき、仲間内で持ち上がった話なんだが、海尋ちゃんの呼称はカピターンでどうだ」

「なんだよ、今持ち出す話か?」

「軍人ならわかるだろう、いつまで経っても「海尋ちゃん」じゃぁ、相手にナメられる、かといって行為の役職名じゃぁ見てくれが追いつかん。そこで、「カピターン」だ、聞けば極光商会は船舶による海運業だそうじゃないか、だから・・・・ーーーーー」

話の腰を爆風が遮った。

なんだなんだなんだ???直ぐ近くで爆発音、弾着の音何して、建物が吹き飛んだぞ??




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