第33話 王家の後始末

第33話 王家の後始末


海尋とカフカースが帰ってきたのは「動乱」から4日後、ヴァルキア王の国葬一週間前だった。

動乱、仮にヴァルキア動乱とした場合、ただの内乱でしかないのだが、首謀者が王位継承権のある者が皇帝に牙むいたとしてこのような処置がなされて、ヴァウキア皇帝は「謀叛の国賊じゃろ、適当に穴掘って埋めとけ」と言ったらしいが、一国の王とその後継者が揃って死んだのでは事故か病に見せかけて、他の諸国を欺く必要もある。まさか国王とその子息が兵装欲しさに武力行使なんてことは、言えない、だたら面子と体裁保つために国葬って事にしときゃぁ

余計な波風も立たないだろう。



  というのがヴァルキア皇帝の意見だった。

「国王なんて看板背負って浴欲に走った結果がこれじゃ兵は死んでも死にきれん。付き合わされた連中も哀れに思わんでもないが、雑兵は死ぬのが仕事。攻めて朕自らが弔ってやろうぞ」

万事こんな感じでどらかというと兵隊のついでに王家の葬儀執り行うような感じでやろうかということになった。いいのかな、ほんと、実行部隊は海尋の侍女たちだ。

「艦船の接収にヴァンクス宮の破壊行動、ふざけるのも大概、痛い目見なきゃわからないのならやってやろうじゃないの」ああ神様、彼女達に「話合い」といった理性ある行動は望むだけ無駄なんでしょうか。そういやこの世界、神らしい神っていないよな、宗教らしいものもないし、せいぜいイクシオス教と言ったアニミズムで生活に根付いた原始宗教、冠婚葬祭の時にを拝むのがのが精々で異界からの闖入者のことな知ったこっちゃない。曰くーー、

神は留守だった。


 そんなわけで、巡り巡って、海尋は葬儀の責任者に祭り上げられた。商人なんだから金絡みにの事は任せたぞよ。とよく言えばた大役を仰せつかった、悪く言えば押し付けられた。

ヴァンクス宮が完成したばかり2だというのに、なんでこんなことせにゃぁならんのか。やると決まれば仕事は早い。まず葬儀の形式。イクシオスの司教と王の棺、葬儀に見合った飾り付け

などは、日本風とはいかず、とりあえず「スターリンの葬送行進曲」と「群集」を参考に、葬儀の飾り付け花と棺を置く高い段があればいいかと、そして葬儀は王宮の大聖堂を使えば良いかと考えた。問題なのは上半身と下半身をどうくっつっけた状態で保持させるかだ。何せ死体の縫合、人間の縫合ができるのがいないそ、王の亡骸は背骨が破損、損傷して内臓なんかもゴッソリなくなっている。仕方がないから足りないに部分は羊の皮を使って、中身にはそそれっぽく、王家の旗を真丸めて詰め物にした施術が終わったところに顔を出したら、病院の手術室をバックに血染めの各種手術道具が壁にかかった13日の金曜日のセット掛け合わせた、スプラッターな雰囲気の中にゴムの手術服を着両手が血にまみれたペレスヴェートが洋物のホラー映画みたいにげんなりした顔つきで立っていた。僕の顔を見るなり

「あああああ〜海尋様ぁ〜」と血濡れのまんまで抱きついてくる。

「ご苦労様、ペレスヴェート。」

身長差もあるので大人しく抱き付かせると、

「あああ、なんで醜くブッたるんだ中年親父の尻と萎びた逸物見ながら作業しなきゃならないの、拷問だわ、悪夢だわ、とひとしきり、海尋を抱きしめて、帯を外して着物をぬがせて膝を折って、下腹部に顔を埋めて、そのまましがみついて、尻を撫で始めた。

あっけに取られて今一状況が掴めない海尋に「これよこれ、わずかな弾力と張りのある筋肉に薄い皮下脂肪、クンカクンカスーハー、そして微かに香る美少年の若木のような新緑の香りと鷲掴める程に柔らかいお尻と吸い付くような肌の感触。あああ、たまんない」


わけがわからない。量子通信で国王派のクーデター?は報告受けたけど、それ以後の事はよくわからない。

「国王の葬式やるから帰ってきて欲しい」ということで、バクホーデルの様子がひと段落しところで、急いで帰ってきたところである。詳しい報告聞こうとしてぺレスヴェートのところにやってきたのだが、っこの調子じゃぁ無理だろう。ヴァンクス宮左翼の兵舎を兼ねた棟の一階奥のキッチンで、大きな調理台に横たわる腹のデカい死体はヴァルキア王で、その横のシートを被せてある方がクイージ殿下かな、二人とも殺っちまったんじゃぁ、下手すりゃ国家反逆罪とかにならんかな?知らんこととはいえ、自分が極光商会の長なのだから、なんかしら罰はあるだろなー、嫌だなー、と考えていた所にこれである。

「ちょっと、ヴィータ、落ち着いて!ステイ!ステイ!」


血が飛び散った手術室ならぬキッチンで真昼間っから主人の股間に顔埋めてグリグリと動かす様相は誰かに見られたらたまったものではない。腹に頬擦りして柔らかい腹部の感触を堪能してひとまず落ち着きを見せると、一体何がどうしてこうなった、のか改めて質問する。


「どうしたのさ、いきなり暴走するなんて、ヴィータらしくもない」

「海尋様〜〜、私人間の縫合なんて苦手ですぅ〜〜!!ましてや、あんな醜い弛みに弛んだ皮なんて、皮なんてぇ〜〜っ!!」

ヴィータとの付き合いも長いけど、ここまでゲシュタルト崩壊するなんて、なんて恐ろしい腹の皮。

とにかく、宥めて血だらけのゴム服を脱がせてお湯で手を洗い、血のついた跡を顔から拭いとると、キリッとした顔になって


「取り乱してしまい申し訳ありませんでした」


とはだけた着物を直していると憑き物が落ちたようにケロッと主の着付けをて手伝い始めた。

何も見なかった、聞かなかったと涼しい顔で何があったのかを聞くと、胴体が離れたまんまじゃ寝かせておくにもよろしくない、じゃぁ縫い合わせようとなって、誰がやるかという所で、他の侍女達はさっさと死体を集めに行ってしまったので、やむなく自分がボルモン王とクイージ王子の死体をエンバーミング処理、防腐処理と遺体の損傷修復、を行う羽目になったとの事で、醜く弛んだ腹の皮やら尻の肉が見るに耐えないと、そんなものを目の隅に捉えて腹回りを縫合するのはぐちゃぐちゃになった肝臓、脾臓、ちぎれた腸を綺麗に揃えて腹に詰め込むよりも辛い作業だったそうな。おまけに皮が足りないところは羊の皮で補って、弛んだ皮を伸ばそうにも、死体の皮なので思うようにはいかず、悪戦苦闘してなんとか体裁を整えたのが、調理台に横たわる故ボルモン・ソルベック王だそうな。

「でもこれ、背中側から撃たれてるよね」

ボルモン王にかけられた布をめくって縫合跡を見て一言。

12.7mmで後ろからズドン、そりゃ皮も背骨の一部もなくなるわ、尻から腸がひっくり返ってはみ出さないだけマシか、一度人間狙う銃じゃないって事を教えた方が良さそうかな。

問題はそこじゃねぇだろ。どうしてこうなったのか、撃った当事者に聞くのが一番早い。

何でもクイージ・ソルベックの亡骸抱えて、命乞いしたからイラついて、つい指が引き金を弾いちゃった。だそうだ。そりゃしょうがないか、息子の旗色が悪くなったからって、親父がしゃしゃり出て命乞いとかみっともない、王なら潔く責任とって腹掻っ捌け。

とまぁ、大体の理由を聞いて、ヴァンクス宮を見て回て驚いた、なんと青銅製のカノン砲を主軸に陣を構えて攻めてきたのである。正面玄関前に三基、その他扇状にぐるりと囲んで配置されている。それぞれ、カノン砲を中心に歩兵が突撃、制圧するつもりだったんだろう。

「馬鹿かこいつら、こんな豆鉄砲で何をしようとしたんだ」

残骸を見つめて呟く。事実ヴァンクス宮はカノン砲の直撃を喰らっても弾の跡すら残っていない。

「で、聖上様は、他の親衛隊の方々はどうしてる?」

声の先には金髪の美女、どうやら完全に持ち直した様子で海尋の傍にスッと立っている。


「親衛隊の方々は自主的に死体の処理に、聖上様は王家に怒鳴り込んでおります」


「怒鳴り込んでも王家の人間なんてないでしょうに、まさか王妃に賠償金とか請求する気」


「お前朕をなんだと思っておる?」

背後からカシス女帝の声がしてびっくりして振り返ると、さもイラついてますって顔して

カシス女帝が立っていた


「こちらがに戻ってきたらお主が歩いているではないか、なんだ、戦場の見聞かえ?」

「王妃に賠償金請求するど、話が違うにも程がある、王妃にはなんの責任もありゃぁせんよ精々が王位返上の上、隠居するのが妥当だろうて、ま、潮時じゃな」

そう言って歩みを止めヴァンクス宮を見上げ

「凄いもんじゃな、傷ひとつついとらん、一体何で出来とるんじゃ?」

戦果を経て、野戦砲の集中砲火を喰らっても尚、堂々と佇むヴァンクス宮を見て聞かずにはいられれなかった。顔色からイラつきの色が消え。驚きの表情になりぱあっと明るくなる。


「は、石ですよ、ただの石、青銅の野戦砲なんていつの時代だ、おまけに黒色火薬のマスケットにM-1 ガーランドにBARって、そんなもので喧嘩売ってきたのか、歩兵は使い棄ての駒じゃないんだぞ!、兵士一人の命をなんだと思っていやがるっ!」

めずらしく海尋が感情的になる。これはやばいとペレスヴェートがあたふたする。

「生き残りは」呟くように吐き捨てる海尋に

「第一騎兵が比較的多数生き残っております、砲兵は全滅、歩兵にいたっては、……生き残りをアレッサンドラが王宮に一箇所にまとめております」

ペレスヴェートが答えると

「上出来、そこの中に”いる”」

武器を買うのに誰と商談して金のやり取りを行ったか、知ってる奴がいるはずだ。しかもそんんな重鎮、歩兵として突撃させては後が続かない。金を扱う奴が知っている。

そう思って、どこに集めたのかペレスヴェートに聞く。

「ありがとう、ペレスヴェート」と言い残して王宮の方へと歩いて行った。



ヴァンクス宮と王宮は城壁で区切られており、その境に門番と詰所がある。詰所には見知った顔がいたので問題なく通過できた、王宮警備隊の隊員で、槍を構えて門の前に立っている。ゴツい鎧は着込んでいない。ついでに兵士が集められた場所を聞いてみる、鉄製の門を潜って王宮に入ると、に王宮は無駄にデカく、そして広い、城下町と城を隔てる城壁がないのだ。帝都ウニレオは広範囲に及ぶ城壁だけで王宮なと放課まちを隔てるものがない。どこへ行きゃぁいいのかと王宮を歩くと、どうにも自分んだけ浮いて見える。キャイキャイと賑やか談笑しながら通りを歩く女の子、ロザリナと同い年くらいだろうか、連れ立って男もいる。王宮に隣接して街並みがある。城下町というよりもお貴族様向けのビバリーヒルズみたいな超高級住宅地だ。そんななか着物着て歩いていりゃぁ目立つなという方が難しい。さっさとアレッサンドラのところに言って、要件を済ましてしまおう。しかし戦争で負けたような重苦しい雰囲気は全く見受けられない、城壁の向こうで派手にドンパチやらかして、敗残の兵がゾロゾロ歩いて王様が死んだのだから、不安に思っってもいいだろうに、そんな感じは全く見受けられない。どっからどー見ても、国のトップが死んだばかりの様相に見えない。まぁ緘口令みたいなもんが引かれていれば当たり前か、

一刻の総大将が一商人の持ってる船欲しさに軍を動かして、負けました。なんてみっともなくて言えいないか。いい加減城の広さにうんざりするので量子通信で問い合わせる。

(00>008:サーシャ、今どこ?)

(008>00:あら、海尋様。めっきりカフカースとイチャコラしてると思いましたわ。今は

城の地下にある牢屋のある区画におります)

(00>008:広くてよくわからないや。マップちょうだい)

(008>00:はい、どうぞ。コチラにいらっしゃるのならマスクつけてくださいね。悪臭が酷いので)

(00>008:わかった。ありがとう)

ということで、牢屋へ向かう。広間を抜けて廊下の一角、いかにも裏口ですって感じのも見窄らしい、古くなってギシギシいう廊下を踏んで、石畳の廊下から階段を降りていかにも湿っぽい、見ただけでこの先なんかあるな、と思わせる部屋やに出た。

そこには簡素な木のテーブルと、葉巻吸を嗜んでるサーシャがそこにいた。

(00>008:葉巻なんて吸ったっけ)

(008>00:これは失礼。空気清浄機です。ニコチンやら発ガン物質は入っておりませんので

ご安心を、臭いが酷すぎてこうでもしないとやってられません)

そんなに酷いのかと思って一瞬、マスクをOFFにすると、


「ウエッ!」(00。008:なんだこれ、酷いなんてもんじゃない、人間の匂いかこれ)


ものすごい臭気に耐えられず、慌ててマスクをONにする。かしゃかしゃと音を立てて口元にマスクが形成される。

その部屋には、高架線の下、人通りの少ない裏道の公園。浮浪者の集まる場所、それに加えて、利用者の多い公衆便所のようなにおいが立ち込めていた。マスクONで廊下を下ってきたからわからなかったが、きっと、廊下の上まで臭っているだろう。


(008>00:現在ここにいるのは中枢と見られる騎兵と雑兵、50名程です、関連の薄い兵隊は解放しました、今頃ペレスヴェートの指揮下にいるかと、この中に武器の取引に関わった兵隊がいるはずです。拷問なんてしておりませんよ、ただ、牢屋の一つに押し込めただけです)

テーブルの上に足を組んで尊大に腰掛けてタバコをふかす。様になっててかっこいいなと思ってしまう。

「アレッサンドラ殿、堕ちましたぞ」

(00>008:マセラッティさんまでいるの、え……)

マセラティが廊下の奥から顔をの覗かせる机の上に足を組んで葉巻を吸うアレッサンドラと顔の半分を覆うマスクを装備した海尋がいた。マセラッティは防護服のようなものを着込んでおり、顔の前はガラスで覆われて防護マスクになっている。防護マスクの下、マセラッティの顔に意外な人物の姿が映る。

「おやおや、硯殿。このようなところの何用でしょうか」

男を一人連れて、石造りの部屋の中、男を椅子に座らせると、崩れるように座った。

汗と垢と体臭がごちゃ混ぜになった匂いにかを背けたくなる。男は憔悴した目は落ち窪んで、意識も朦朧としている。膝も震えて、背もたれに背中を預けてだらりと両手を下ろして落ち窪んだ目で虚空を見つめている。

 拷問らしいい拷問を行ったような跡はない。押してマセラッティは「堕ちた”と言った」

ここで自分が葉巻片手に対峙しても迫力負けして甘く見られるだろうなと考える。

しかしやらなければならない。アレッサンドラが吸い差しに置いた葉巻を火種にもう一本

新しいタバコに火事をつけると深く吸い込みゆっくりと紫炎を吐き出す。葉巻を吸うといった風習がない人間んにとって、心理的上位には立てないかもしれない。頼むから少しはカッコつけさせて欲しい。いやいや、着物姿で横柄に構えもしょうがない。つけたばかりの葉巻をぐりぐりと揉み消すと、ちょうどよく連れてこられた男、主任会計補佐の男がビビってくれた。

気の弱そうな、だけど軍人しての矜持は持っている、そんな男だった。

主任会計官はアレッサンドらのRPDの斉射で死んだらしい。

「じゃぁ、話して貰いましょうか、武器の買い付け先と、どこで受け取ったか」

やばいやばいやばい、もう少しで咽こむところだった。こんなにキツいとは思わなかたった。

幸いにも相手がビビってくれたおかげでスラスラと話してくれた。やはり武器ので出所はボーレルで、バレないように普通の荷物と同じように港で荷揚げして、陸路で運んだようだ。

「ありがとう、もういいよ」

そう言ってあっけなく会計主任補佐の男を解放する。このあと、どんな地獄が待っていると思った会計主任補佐にしてみれば、拍子抜けというか、王宮の風呂場で汗と垢を落としたあと、方面された。正直、殺されてもおかしくないと思った。何しろクイージ王子が殺された所を間近で見て、女帝配下の者は血も涙もない殺人狂の集まりとも聞いていたので、捕えられて拷問の上、殺される順番待ちだったのだ。そう思うと、あの奇妙な服を着た背の低い少女が天使に思ええてきた。

  さて、マセラッティはどんな拷問をしてたんだろうかと、牢屋の方を覗くと、

普通の、至ってごく普通の石造りの部屋に鉄格子のある部屋に、詰め込めるだけ詰め込んで

ぎゅうぎゅう詰めにの挙句、全員立ったまま、身動きできないように人の前後左右を人で塞ぐと出勤ラッシュの京王線みたいなことになっていて、排泄も当然たったままで、大小の区別なくコメディアンのような軍服のまま、甲冑も着たまま、立ちっぱなしだった。熱気と湿度で

気を失って、ゲロを吐きながら失神してる者もいる。


 そんな状況だったので、早急に全員を解放して、自分たちも引き上げた。ルッキーノはヴァンクス宮右翼側の風呂へ、海尋とアレッサンドラは右翼側後ろ極光商会が宿に使っている兵舎へと引き上げた。

引き上げる途中、周りは綺麗さっぱり片付いているが、野戦砲の残骸は正面と左翼側に小数が残されているだけとなった。兵隊の亡骸は綺麗に運び出されて、左翼の湖に面した所に穴掘って埋められていた。そのまま埋めたのでは匂いが立ち昇ってくるので、消臭剤に石灰を大量にぶちまけて置いた。幸いぺレスヴェートに土木工事の車両は積んでいたので、あまり手は掛からなかったようだ。野戦砲20台、兵士の数(死体)大体500、生き残り80名、これは王子の側近とその部隊だ。制服を着ていたのでわかりやすい。あれ、おかしいぞ、なんで攻め入った方が虐殺されてんだ。とは思ったが、運用方法と兵器の質が違うんじゃぁ当たり前か。

そして右翼の廊下を通り、離れの兵舎へヴァンクス宮の正面を横切って右翼の建物に入る時、

ちょっとした疑問、近衛の人たちは何やってたんだ。とアレッサンドラに聞くすると

「邪魔くさいので引っ込んでて貰いました。見分けがつかないので間違って誤射でもしたら

えらいこっちゃですので、そしてマセラッティさんにお説教くらっております。なんでも初動が鈍すぎる、と」

「そうなんだ」と相打つも、疲労はMAXに近い。主に地下牢でどっと増えた。早くお風呂入ってさっぱりしよう。

で、風呂場に着くと、次女全員揃って既に入浴中

(080鼻の中までべったりしみついちゃってるわぁ〜)

(1706)帰って即死体の面倒見るってどないや)

口々にぼやきながら既に全員揃って「入ってます」状態、脱衣所でくるぅりと後ろを向いて

「僕もう少し時間をおいてから入るよ」と脱衣所を後にしようとしたら、

次女全員に襲われた。

まぁまぁ、海尋様、そう言わずに、潮から羽交締めにされて大人しく湯船に浸かる。

また無駄にデカイ風呂つ作ったなー、余計な装飾が無いところは、いいのだけど、檜造りの、あれ、檜なんて木材の中にあったっけか、太い角材で四角を作り、それ縁に板材で大きな浴槽を作って、床も檜の板材だ。でもおけはしっかりケロリンのプラスチック桶で、腰掛けも檜だ。そこに座らされて、香りの良い石鹸としスポンジで擦られる。ついでか髪を洗われて一丁上がり。連携の取れた作業で大変気持ち良く洗い上げられる。僕の方はこれで終わりだけど、

日頃のご苦労と慰労を兼ねて、アレッサンドラから洗いにかかる。なんだっけこういうの、雲介とか三介って言ったよな。で、風呂から上がるときにクロンシュタットが不穏当なことをいった。


「そういえば、首と胴体の数が合わないんだよなぁ」


「庭園側から侵入しようとした舞台の事?」と聞くと


「そうそう、マセラッティのおっさんがぶつ切りにしたやつ、あれの中に装備の違う黒装束が混じってたんだけど、コメディアンみたいな服着た奴の首なし死体が多いんだわ」


「間違いじゃなくて?」

と聞くとクロンシュタットがブラの位置を直しながら

「集めた時は全部あってたんだけど、後から見たら足りねぇんだよな」

「首なら侍従長さんが集めてましたよ、せっかくの庭園にポイ捨てはいけませんな、綺麗にしときましょう」

オトヴァージュヌイがそういうと、クロンシュタットが

「はー、よかった。知ってたなら早く教えてくれよー」

と気が抜けたように座り込み、愚痴る。

僕は僕で国葬ってもののイメージがいまだに掴めないでいる。ようはどう弔うかなんだけど、宗教の様式がないってところが問題だ。弔いっつっても生者が死者に送る最後の挨拶みたいなものだと思えばいいか。そもそも僕の葬式ってやってないしな。

  

 そして国葬当日。王宮の聖堂中央にに国王の遺体をおいて両脇に花を添え、簡単な祭壇を作って、国王の横たわる足元に王女、驚いたことまだ「喪服というのが一般化しておらず、

灰色の修道服のような装いの上からヴェールを被っている。聖上様も同じ格好をして左に並ぶ

左側には愛人?とその娘が並び、国王の遺体を囲むように重鎮が並び、なぜか僕もその末席に喪章をつけて並んで突っ立っている。

どうしてこうなった?各方面の手配済ませりゃそれでお終いじゃなかったのか。

参列客は国民と、周辺の領主のみ、昼前に聖堂を解放したら、あっさりと終わってしまった。

まだ個人の死を悼み参列者が集まるなんてことはやらないらしい。聖堂の解放と同時にイクシオスの大司教様がお香の入った入れを翳して亡骸の周りを香の煙で包み、生前の偉業を讃えて

最後に近親者から王の手を握り、挨拶を送る全員が大聖堂から出て大聖堂の入り口と全ての入り口が閉ざされ、火がつけられた。古い木造の大聖堂はあっという間に建物を這い回る炎に飲み込まれ、崩れ落ちた。

  これが弔い?何でもこれが当たり前だそうで、たいてい、王となった人物は、城を建てる時に聖堂も作理、自分が死んだら聖堂ごと火を突けて燃やすんだそうな。で、何もかもが燃えて崩れた場所に新たに聖堂を立てて新たな王の誕生を祝うんだそうな。なんてスケールのデカイ話だ、こんなこと聞いてないぞ。で、この後はどんちゃん騒ぎして最後に女王が挨拶して終わりになるのだが、酒と料理を手配して、終わりだ。

  やっと仕事が来た、退屈な司教のクソ長い説法なんぞ真平だ。


「ああ、全く窮屈じゃのう、海尋ちゃんもいいかげんその堅っ苦しいの脱いで楽にならんか」


聖上様が言っているのは喪服の事だろう。白の肌襦袢に黒の紋付き、名古屋帯、見た目に暑いよな。でもまぁ暑さ寒さは関係ないので


「大丈夫ですよ、それにこの方が気合い入ります」

石畳の続く廊下の向こうに大広間がある。元は大広間から聖堂へ続く廊下だったが、今では

その先のないただの渡り廊下だ。

渡り廊下を進んで、大広間に入と、飲み物と軽食の簡単な、故人の思い出話をしながら、個人との思い出に浸ろうかと軽食が用意されていた。そそて、そこでかくも恐ろしい腹の探り合いが行われていた。ヴァルキアの女帝、カシス女帝の周りを数人の男が取り囲んで話し込んでいた。僕がわかるだけでもラクシェン、ヘクセン、コーラル、ハイリス領主で、誰がヴァルキアの次の国王になるのか、と話し込んでいた。全員見覚えがある。あれだ、ヴァンクス宮”にダイナミックお邪魔します”をした時に、全裸で土下座(畏まって)して尻をぷりぷり降ってたオッサン達だが、昔は全員端正な顔つ身体つき立派だったんだろうなぁ。今や、でっぷりと太って、貫禄充分なオッサンに成り果てている。付かず離れずでカシス女帝の側について回り

聞き耳を立てていると

「おう、海尋ちゃん、良いところへ来たな」と肩をガッシリ掴まれて引き合いに出された。

「この者は朕が世話んなってる商人でな、名をシズリ・ミヒロと言う、ヴァンクス宮の建て替えの一切合切全て任せておる。」と僕の口を押さえてオッサン達に紹介する。そして「この者どもはお高く留まって平民とは口利かんのじゃ、すまんが喋るな」と小声で僕に耳打ちする。

  僕はコクコクと頷くと、一通り、この四人の領主の顔を見る。びくの身長では、腹が視界に入るばかりで、しょうがないから少し見上げる感じになるも、、なぜか一斉に目をそらされた。どいつもこいつも人を値踏みするように眺めやがって。

 しばらく話の輪の中に入っていると、同にのおっさんどもの視線が着物の合わせ目あたりに集中して、腰やら下半身に視線が移る。次のヴァルキア王の椅子の話なんて上の空、腰回をジロジロ眺めて、

「いや、お美しい。」

「聖上様のご同郷ですかな、これほどの美貌は、まずこの世のものではありますまい」

などと口ぐちにほざいては髪を触ろうと手を伸ばそうとする。

 誰の手かわからないが、お尻の辺りに手を伸ばす不埒者が置いたので手首を掴んで周り込んで背中をひと付きし肩から関節を外してやった、次にぐりんと上腕骨を捻るように回して手首が絵のひら外側を向くようにしてリリース。ちなみに本人は何されたか気づいていない。咄嗟

にのしっと聖上様が抱きついてきた。ハイヒール履いているからというわけではないが、聖上様は背が高い。そのため、聖上様の胸が僕の頭に乗る。

後ろからから抱きつく感じで


「あまり派手な事はするなよ、後々面倒なことになる」


「だって、執拗にしつこくお尻触ろうとるから」

こちらは悪くないのにその責を問われる、納得いかず、ぼそっと呟く


「男の尻撫で回して何が楽しいんだか」

そうすると

「何いっーーーっ!」

四人とも相当驚いたようで、隙あればと伸ばした腕を引っ込める。
しかし、大声出して驚いたので、お互い隠しようがない。

おまけに全員、息は荒くなるわ、血圧上がるわ、で、却って興奮したらしい。

しまった、逆効果だったか。

その後ろで聞き耳立ててたご婦人方(各領主の奥方様)の興味が一斉にこちらを向き、国内情勢の話もなんのその、僕の方を見て

「あらあら、やだわー、あーたったら、本当に見境ないんだから、あらまぁ、綺麗なお召し物、

お国のお召し物ですの?」奥様方の質問攻めが始まっておオッサン方の手の届かないところへと聖上様と共に押しやられた。





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