短編小説「Life」

雨模様の猫

第一話 ビニール傘


「ビニール傘」


俺はビニール傘として生まれた。

なにもないただコンビニで売られているような傘だ。毎週新入りがくる。

俺はここが長い。

仲間たちからは"売れ残り"と言われている。ただ、俺はそれでもなにも思わなかった。俺の役目は主人(買い主)から雨を防ぐために生まれただけだ。その主人がまだ現れていないだけなのだから。自分はいつか必ず売れる。

俺は待った。3ヶ月、4ヶ月。長い年月が経った。しかし誰もこなかった。

俺に目を合わせるやつはいなくまず俺もいつもぼやけている

誰も俺を買おうともしなかった。

誰もが前の若いやつから消えていく。

そりゃ当然だ。


ある大雨の日仲間たちがたくさん売れた

笑われながら去って行く皆を見ながら俺はいつものようにしていた。


気付くとその傘は俺だけになっていた。


遠くからこの店に駆け寄ってくる人影が見えた。ついに俺も買われるのか。

そう思いながら男が俺を取る。俺は空を見ていた。聞き馴染みの音が今日は間近で聞こえる。俺は男につられ店を出ようとしたその時だった。


向こうから女の影が見える。男のガールフレンドとやらなのか。気付くと俺を地面に捨てられていった。

よく見ると女の手には2本の傘がある。


そうか。


ただ、俺はそれしか出なかった。消えていく俺の視界が。このまま死ぬのか。

ビニール傘の運命などこんなものだろう。

皆よりもたくさんの経験ができたなと俺の周りを雨たちが笑う。


俺は何も言わない。


そんな時、店主が来て「売れ残りはやっぱ売れ残りか」と俺を読んだ。俺は驚いた。

俺はなにも返事ができなかった。

いや傘なのだから返事はできないか

店主はなにも言わずに俺を開き、店を後にした。俺からは何故か水が出てきた。俺は今まで強がりをしていたらしい。

雨たちも笑っている。

誰かをこいつらから守りたい。

そんなふうに思っていた。

すると一粒の雨が俺に「よかったね」と話してきた。

俺は驚いた。周りを見てみると雨はみんなニコニコしている

この雨は俺を買わせるために降ってくれた雨なのか。

すると雨たちは消えていく。

雨も降れば終わる人生。

俺のためにその人生を使ってくれたのか。

雨など降ってないのに、俺からは水が垂れる。

店主も雨が止み傘を閉じる。

近くのコンビニのゴミ箱には捨てられたビニール傘がいる。


ビニール傘なんだから廃棄されるのが当然と思っていた、俺には何もおかしくないと思っていた俺。


だけど店主は違った。俺を家まで持ち帰り傘たちの横に立てかけてくれた。

傘たちは俺を見て変な目をしている。

おれは普通の傘になれない、そう思っていたしかし、店主は時々俺を使ってくれる。

今日みたいな日に。

大切に使ってくれている。

俺は嬉しかった。店主と出かけるのが楽しかった。

そんな人がこんなにも近くにいたなんて。



なんで俺は早く気づけなかったのだろうか。




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