エピローグ もっと遠くへ

 あの事件から数ヶ月経った。あの事件は誰かの手によってかなり表立ち、星間同盟とガラウーヴァ帝国双方からEOEの関係者に多くの非難が集まることになった。特に同盟側はかなり荒れているようだ。そしてEOE能力者も表立って報道され、世間に認知された。件の兵器のB-S.L.R.Gは不慮の事故として処理されているようだが真相は闇の中に流れていった。

 そしてこの事件はEOE事変と呼ばれるようになった。


「EOE事変ねぇ」

 ティルがホログラムに投射された報道を見て唸っている。

 あの事件が終わった後すぐにまたメルゲデルに戻って師匠と話をして、メルグリアに向かいカレアの両親にカレアのコスモスを持っていき、そして死を告げた。カレアの両親は悲しみはしていたが誇らしいと言っていた。幸いあの事件の発端であるメルグリアに撃ち込まれた砲撃は星全域に広がる様な被害ではなかったらしくティルも胸を撫で下ろしていた。そして現在はファナラスへと向かっている途中だ。

「また見てるんですか?件の事件のこと」

 ヴェルがモップを片手にティルに聞く。ヴェルも今では自由に動けるようになった。顔の痕は消えなかったが本人曰く戒めとして残しておくらしい。

「ああ、面白くはねぇし、言ってることはめちゃくちゃだ」

 ため息混じりにそうヴェルに答える。

 あのあとEOE能力者狩りの件数は少なくなったと紺野姉弟は言っていたが、まだまだ帝国の上層部にはEOEを悪用しようと企むものもいるらしい。

「そんな変なこと書いてあるのか?」

 正直あの事件のおかげでなにかと規制も厳しくなったり、都市部の宙域ではデモが起こっていたりしているからいい抑止力にはなったと思う。

『そろそろファナラスに着きますよ。お帰りなさいオルトさん』

 ナノから少し恥ずかしくなるようなことを言われて拍子抜けしたような顔になってしまう。

「ああ、そうか。ありがとうナノ」

 そうか、もう帰ってきたのか。向き合えていたと思ったトリラの死は全然オレの中では片付いていなくて、それと向き合うために来たみたいなものだ。

「じゃあ行くぞ」

 DLOの空間を抜けてすぐに大気圏へ突入していく。



 久しぶりに孤児院近くの空気を吸った。いい空気とはお世辞には言えないが懐かしい感覚だ。先程孤児院のトリラのことをよく知る職員に話をして、今までここを空けていた理由とトリラのことを告げて出てきたところだ。

「これでやることは終わったな」

 正しく向き合えたかはわからないがオレなりに向き合えたんじゃないかと思う。

「さて、これからどうしようか!」

 学校は辞めてしまった。もうあれから行っていなくて、留年するにも金がないからさっさと辞めてしまった。

「どうしようかな」

 空を仰ぎながらそうつぶやく。まだトリラの責任は果たしきれていない。でも、それを果たすことを目標にこれから進んでみてもいいかな。そう思いながら船へと足を運んだ。



「じゃあこれから頼むぞティル」

「まあいいが、面倒ごとは極力避けたいんだがなぁ」

 晴れてこの船のクルーになった。もうクルーだと思われるかもだが、まだ客人という扱いだったのだ。

「オルトさんもこれまでと同様って感じなんですね」

 ヴェルはファナラスでお別れだと思っていたっぽくて少し驚いた表情をしていた。

「ああ、まだ果たさきゃいけないものがあるからな」

 心機一転とはいかないが気持ちは十分だろう。

「じゃあそうだなぁ、もう依頼が舞い込んでやがるし、そろそろ出すぞ」

 そう言ってティルは船橋の方へと向かっていった。

「ヴェル、これからもよろしく」

「ええ、よろしくお願いします。オルトさん」

 船は徐々に離陸し始め、高速で成層圏を抜けていく。

『DLO行くぞ!』

 そう艦内にアナウンスが鳴り響き、この船はまた違う星へと旅立っていった。

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エントリーオブエタニティ -Entry of Eternity- 田中運命 @DestinyTanaka

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