第10話 歌姫と歌姫

ミーシャ先生のアドバイスからアドバイスをもらってから四日たった。毎日何かあった怒涛の毎日から解放されたように平和な日常だった。そしてそんな普通の日々に終わりを告げるように手紙が届いた。送り主を見るとマダム・オリアーナの名前が書かれていた。


***


「よく来てくれたねぇ」


オリアーナ歌団の事務所の一室、オリアーナさんの部屋にお邪魔していたのはティアだった。例の如く着替えを済ましてきていた。


「要件は手紙に書いてあることなんだけどもねぇそのことについて詳しく説明しなきゃね」


そう、手紙には二回目の公演をするからそのことについて話し合いたいから事務所まで来てほしいとのことが書かれていた。ティアへの連絡手段としてノアへ手紙を送ってほしいと伝えてあったのだ。これを伝えたときにはどうやって言い訳しようか考えていたのだがなぜか追及されることはなかった。なんとなくだがオリアーナさんは何となく勘づいている気もするんだよなぁ…


「わかりました、それで詳しいお話というのは?」


「まずは公演を行う日にちさね今から二週間後で場所については…」


なぜかここでもったいぶるように言葉を区切った。

ちょっとにやついてないかしら?


「学園で行うことにしたよ」


そう来るのね…


「もちろんどこでやっても許可自体は出たんだけどねぇいかんせんあの話題沸騰中の第二の歌姫なんだからただ、ギルディアーナがちょっとくさい動きをしてるからその安全性も込みで学園にしたのさねノアからあんたが強いとは聞いていたけども念には念を入れたほうがいいだろうさ」


あら、ちょっとした私へのいたずらみたいな感じで選んだのかと思っていたらちゃんと考えていてくれたのね。


「なるほどわかりました」


「もちろんこのことは学園長にも相談済みさね当日は学園も休みで生徒たちはいないだろうから安心しな」


そういえばその日は学園がお休みだったわね。ノアの時に他の生徒たちが喜んでいたのを思い出した。


「それから学院長がその公演の前にぜひ会いたいと言っていてねぇま、あんたに聞いてみてからじゃないと分からないってことで保留してたんだがどうする?」


学院長ね…特に接点なんてないし顔を見たことがあるのも入学式だけねたしかエンシェントエルフでこの世界でもかなりの有名人だったかしら?ただ私の実家のことを知っているのは学院長だけどまぁ会っても別に何もないでしょう。


「わかりました、お会いしましょうか」


「わかったよそれなら学院長にはいつでもいいって言われているから明後日でいいかい?」


「ええ、かまいません」


詳しい話というのはこの後も続きなんと前回とびこみで公演をしたときにティアを引きずり着替えを手伝った娘衆も登場し衣装などについて話し合った。

そうして次の日大々的にマダム・オリアーナ歌団から第二の歌姫ティアの公演が学院で行われることが発表された。


これに反応したのはもちろんいる。




***





「いったいどこから湧いて出てきたのかしらねぇ」


ギルディアーナ邸の自室にて第二の歌姫ティアの公演について書かれている紙を片手に話しかける。その話しかけている相手というのは“何でも屋”と呼ばれる者だ。


「本当に不思議です、ここまで見つからないというのにいきなり現れるのはむしろ何か特別なことをしない限りは説明がつかないかと」


「ふん、特別なことって何よ」


「たとえば普段は別人として過ごしているとか」


「はぁ?何を言い出すかと思えば冗談もたいがいにしなさい」


この発言はかなり的を得ていたのだがそれについてギルディアーナがもちろん気づくはずもなかった。しかし、これを言った本人はおそらくこの予想は合っているだろうとほとんど確信していた。


「今回学院での開催となり我々が手出しをするのはかなり厳しいものとなりました」


「そうでしょうね、だから今回は別の方法で削るわ」


そういうとギルディアーナは醜悪な笑みを浮かべる。


「同じ日に私の公演もすればいいのよ、あのバカ王子にも協力してもらえばあの公演も終わりでしょうそしてオリアーナもね」


「……………」


もともとオリアーナとギルディアーナはそりが合っていなかった。それゆえにティアが飛び込みで公演した日にも嫌がらせとして直前でキャンセルをしていたのだった。

そしてその話を聞いていた何でも屋は何も言わない。


「わかりましたでは引き続き調査だけは続けさせます」


「ええ、そうしてちょうだい」


そうして笑みを深めるギルディアーナのもとを音もなく何でも屋は去っていった。



次の日当てつけかというように第二の歌姫ティアの公演日と全く同じ日に、原初の歌姫ギルディアーナの公演が告知された。

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