第9話 やっぱりか…
ノルドーとの練習試合にてミーシャ先生に途中で止められてしまった。
しかも最後に一言
「授業が終わったら私のもとに来なさい」
…なんかしたかな?
これを聞いていたノルドーは卑怯な真似をするからそうなるのだとか言いながら去っていた。何となく汗がすごかった気がするが。
そこからも順番に第五階梯クラスの練習試合は行われた。
やはり第四階梯クラスの勝負とは比べ物にならないものが多くアリルとパナメラの試合も身体強化を最大限に生かしながら果敢に接近戦に持ち込むパナメラとうまくいなしながら要所で発現の速さに自信がある魔法で勝負していて見ごたえのあるものだった。
結果としてはパナメラが体力任せに動き回り押し切っていたけどね。
そうして授業が終わって昼休み。
先生方には一人一つの執務室のような部屋が与えられているためミーシャ先生がいる職員室へ向かう。
ノックをするとどうぞと帰ってきたため失礼しますと中に入る。
「よく来たノア君、先に言っておくが何か説教をしたりするわけじゃないんだ安心したまえ」
授業でのノルドーの言葉を覚えていたのか先にことわってくれた。
部屋の対面になっているソファーに腰かけると反対側にミーシャ先生が座る。
「それで僕はどうして呼ばれたのでしょう?」
座るや否や気になっていたことを聞いてみる。
「ああ、君についていろいろ聞きたいことがあってね」
そういうと探るような目を向けてから
「君は一体なにものなんだい?」
黙ってしまう。別に悪いことをしているわけでもなければ隠していたいというほどでもない。いや嘘、できれば隠していたい。
ただみんなが知らないだけだし正直おとなしく普通に過ごしていたい。
ただ…最近思うことがある。
僕の使う魔法は普通じゃないのでは?ということだ。
先ほどの授業の中でも第十階梯魔法を使う人なんていなかったし動きも制御も正直に言って拙い。そしてだからこそ第一階梯魔法を使って少しみんなの様子を見ようと思っていたのだが…
「なにものというのはどういう意味でしょうか?」
とりあえず詳しく聞いてみることにした。
「ふむ、嘘をつくという感じではないな。まあいいだろう。はっきり言って君の魔法は学生というレベルをはるかに超えている」
やっぱりそうなのか…
「ふふふ、心当たりはあるようだな君が使った魔法は確かに第一階梯魔法に属する魔法だ。だがしかしそれは普段我々が用いる階梯での尺度ではなく上位の階帝魔法という分類の第一階帝魔法だ」
噓だろ!?だって母さんはあれも第一階梯魔法だっt…あ、声に出すだけなら一緒なのか…
「この階帝魔法については知っているものがまず少ない。かなり魔法に精通していてしかもそれを扱えるだけの技術が必要だ。しかし君はそれを学生の身でありながら扱えてしまっている。いとも簡単にね」
ミーシャ先生がこちらをにやにやしながら見てくる。最初見たときは完全に怖い人かと思っていたけどそういうおちゃめなところもあるんだな。
ただ、魔法に関してはやっぱりかという感じだった。どおりで第一階梯って聞いた割に難しいなと思ってたんだよな。
「なるほど…」
ちゃんと教えてくれなかった母さんにも思うところはあるがここまで言われては不自然に隠そうとする方が悪手だろう。
「別に隠していたわけではないのですが…」
サーシャ先生に両親のことそれに伴って今日使った魔法が母さんから教えてもらったことなどを話した。まだ
これらを一通り話終えると
「なるほど君があの勇者と聖女の子か…」
まじまじと僕の顔を見つめてくる。
ミーシャ先生はふぅと一つ息をつくと今までかっこいい雰囲気で話していたのだが急に机に両手をつけて頭を下げてくる。
「お願いだ!私を君の両親に合わせてもらえないだろうか!!」
「は…?」
あまりに唐突で状況が理解できない。僕の両親に会いたい?
「あの…どういう意味なのでしょうか?」
「私は!君の両親である勇者様と聖女様のファンなのだよ!!!!」
バッと顔を上げるとそのままの勢いで立ち上がり両手を大きく広げてその気持ちの大きさを表してくれる。
「勇者様のあの凄まじき強さそして聖女様のあの慈愛の心、一度しかあったことはないが私は本当に心が打たれたものだ強さとはこうあるべきなのだと知ったよ」
「それで、僕の両親に会いたいということで?」
「その通り!!」
若干食い気味に答えてくる。この部屋に入ってからミーシャ先生のイメージがどんどん崩れていているような気がするのだが…勘違いしていただけでもともとこういう人なのかもしれない。
「ああ、やはり私の勘は合っていたようだ。君を見てから私の勘が君に話を聞かなければいけないと言っていたのだよ」
ひとり腕を組みながら納得しているようだ。
「まあ、両親が許可をくれたらかまいませんけど…今日呼ばれたのはそれだけのためですか?」
ちょっとだけ呆れた感じで聞いてみるとおっとという顔をしてから姿勢を正して本題と呼ぶべき話に入った。
「先ほども言った通り君の魔法はあまりにも強いそしてそれが知られれば国、ひいては国家直属魔法師団に囲われることになるだろう」
先ほどとは打って変わり無表情に語り掛けてくる。
「あの…国家直属魔法師団に入れることはいいことなのでは?」
「確かに外から見ればそう見えるだろうな。国のものから尊敬の目で見られ食うことに困ることなどありえないほどの給金をもらうのだから、しかし実際の実情はクソだよ」
「クソ?」
「そうだクソだ。そもそもおかしいと思わないか?魔法師団は毎年のように人が入れ替わる、もっと優秀なものを入れた結果だと言われているがだったら最初からいた者も優秀なのだからそのまま在籍させておけばいいだろう優秀なものはいくらいても困らないのだから。だというのに入れ替わるのはなぜかというとあの魔法師団の上層部が人材を使いつぶしてしまうからだよ」
そこまでいうとミーシャ先生は沈痛な面持ちでつづけた。
「新しく入ったものにはきつすぎる訓練を与え現場に出れば死んでもおかしくないほどのミッションを投げつけてくる、そして出来なければ罰則を与え死んでしまったとしても名誉ある死として報告される。な、クソだろ?」
…もし本当だとしたらクソだな。母さんからも名前だけは聞いていたが“あなたは関わらなくてもいい”そういわれていたのを思い出した。
そりゃ、こんな話を聞いたら関わる気も失せるというものだ。母さんはこのことを知っていたか噂程度に聞いたことがったのかもしれない。
そして僕の実力が露見しすぎれば魔法師団に囲まれてしまうと…まずくね?
「絶対に入りたくないですね、魔法師団」
「そうだろう?だから君のその魔法の完成度は隠していくべきだ」
まぁたしかにそうなるくらいなら隠した方がいいのだろうが隠すっていったいどんな感じで隠していけばいいんだ?僕は思ったことをそのまま伝えてみた。
「簡単なことだよ。とりあえず普段は第四階梯までの魔法を使うようにすることもちろん上位の階帝魔法も使わないことだ。階帝魔法についてはあとでどんなものがそれにあたるのか教えてあげよう」
確かにさっきの授業の中でも多く使われていたのは第四階梯魔法だったのでそれに合わせての提案なのだろう。考えてみればそれしかないか。
「わかりました。とりあえずその方法でしばらく過ごしてみようと思います」
「そうしたほうがいいだろう、そしてぜひとも君のご両親に会わせてくれ」
最後の言葉はよく聞こえなかったが普通の生活をするために必要なことだと思ってしばらく抑えながら生活してみようか。しかし魔法師団がそんなに腐っているとはねぇ本当に目を付けられたくないものだ。
ノアは未だぶつぶつ一人で僕の父さんと母さんをほめたたえる言葉を言っているミーシャ先生を横目に今日一番のため息をつく。
***
「蒼い火の玉?」
「はい、先ほど報告が上がってきました。おそらく上位の階帝魔法かと」
「調べ上げろ…」
「了解」
さて、どこで行われた会話なのだろうか。
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