無記名

悲しみ

「翼をください」という歌があった。

その歌が好きなあの子は、窓から飛び降りていってしまった。

落ちた先の地面はコンクリートではなく土だった。

一命は取り留めたものの、彼女は今も病室のベッドで眠り続けている。

私は悔しかった。彼女の苦悩に気づけなくて。

私は苦しかった。彼女が傷付いていく姿を見ることが。

私は怒っている。彼女を殺すものと無力な自分を。

そして私は祈っている。彼女が再び目を覚ますことを。


彼女が目を覚まし、私におはようと言うその時から、私は私の存在すべてを用いて、彼女を肯定し続けるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無記名 @nishishikimukina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ