クソ雑魚悪役貴族に転生したけど処刑された後でした~隠しキャラの美少女神霊と一緒にゲーム世界を冒険します~
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第1話 処刑された後の悪役貴族に転生した
はじめましての方ははじめまして。既存作から来ていただいた方はありがとうございます。新作です。
悪役貴族テンプレよりはゲーム転生テンプレの方が近いお話です。
―――
「『レジェンド・オブ・レガリア』のクソ雑魚悪役貴族……イクス・ディエルマに転生するとはな。しかも処刑された直後に転生とか、運があるんだかないんだか」
数多の骨……人骨と思しき山の上で胡坐をかきながら、ため息混じりに呟く俺。
完全に白骨化しているのがほとんどで、中途半端に腐敗している死体は視界の中には見つけられない。
あたりには仄かな光を放つ虫が飛んでいるため視界の不安はないが、その骨塚はどこまで続いているのか見通せない。
何千メートル以上の深さがある崖の底からでは空の色すらうかがえなかった。
「運よく生き残った……ようには思えないよなあ。服は裂けてるし、体中に血の痕ついてるし。傷や痛みがないのは不思議だけど好都合。転生即落ちは勘弁」
俺が着ていたのは簡素な貫頭衣だけで、裂けたとこから血色の肌が露出している。
処刑されるときに着ていたものだろう。
ここまでの描写はゲームでは描かれていなかったから推測だけど。
それはともかく。
「いやさ、理由はどうあれ大好きなゲームの世界に来られたのは嬉しいよ? 転生先が嫌われ者のクソ雑魚悪役貴族で、処刑された後って状況には文句を言いたいけど」
『レジェンド・オブ・レガリア』。
それはシリーズ四作目まで発売された、大人気RPGゲームのタイトルだ。
世界中で信仰される神霊から力を授かり、世界を守る神霊騎士を目指す学園で繰り広げられる熱いバトルや可愛いヒロインキャラクターとのラブコメを売りにしている。
ゲームが発売された週にはSNSに二次創作のイラストが氾濫するほど人気で、一種のお祭り騒ぎにもなっていた。
俺はシリーズ全作のトロフィーをコンプリートするほど嵌っていた。
だから今がストーリーのどこで、ここがどういう場所かも理解している。
「イクスの処刑ってことは一作目の中盤だろ? 主人公を殺そうとしたけど失敗して、ヒロインの一人の王女による訴えで死罪。『大地の淵』で処刑されて、主人公たちは最後の戦いに向けて結束を深めていく。……自分が処刑される立場になるとなんか腹立ってくるな」
これもイクスの感情が自分の中に残っているからだろうか。
俺は悪役が嫌いだ。
ゲーム知識もあるからイクスが処刑されるに値するクズ貴族だとわかっている。
それでも今頃、主人公が俺をダシにして可愛いヒロインたちとイチャコラやってるって考えると、否応なしにイライラする。
「あー、クソ。どうせゲームのキャラに転生するなら主人公にしてくれよ。俺もチートキャラでハーレムしたかったっての。なんでイクスなんかに……」
イクスは怠惰な悪役貴族だ。
神霊騎士に必要な剣も魔法もまともに修練せず、不摂生で腹も出ている。
性格も傲慢で、使用人や平民のことをゴミのように扱っていた。
周りもイクスの癇癪怖さに唯々諾々とするばかりで、誰一人として暴君のような振舞いを咎めることがなかった。
イクスの未来を憂いて止めたり、抗おうとした者は処刑されている。
たった一人、主人公を除いて。
嫌われて当然の悪役貴族に転生したことは不満だ。
だが、それ以上に問題なのはここが『大地の淵』――クラディア王国で死罪となった罪人が最後に訪れる自然の処刑場ってことだ。
本来ここはストーリーの最終盤で訪れるはずのダンジョン。
敵のレベルは当然高く、中盤の主人公に負ける程度の俺ではまともに戦ったところで絶対に死ぬ。
「ステータスとか確認できたりするのか?」
頭の中で念じてみたり、お約束かと思って「ステータス」などと呟いてみるも、それらしいものは出てこない。
しかし、自分のレベルが14であることだけが脳裏に浮かんだ。
14レべて……いくらなんでも弱すぎだろ。
ゲーム的には中盤で、イベントバトル時の主人公は大体レベル30後半はあるのに、イクスは半分以下だったらしい。
我ながらクソ雑魚悪役貴族という言葉が似合う。
ちなみにレベル上限は100で、ストーリークリアには50後半あれば事足りる。
もちろんやり込み要素は沢山あり、俺は全キャラカンストまでやっていた。
……それはともかく。
「……でもまあ、丁度いいか。処刑された後なら、これは俺の人生ってことでいいよな? 折角ゲームの世界に転生したんだ。好き勝手やらせてもらうか」
処刑前だとストーリーが……とか考えたかもしれないが、イクスは既に死んだものとして扱われている。
処刑場として利用されるような深い崖に転落したんだ。
どうやっても生き残れるはずがない。
「なんにせよ『大地の淵』を脱出しないことには始まらないな」
問題は俺が弱すぎて『大地の淵』に生息する魔物を倒せないことだが――極論、脱出するだけなら倒す必要はない。
ダンジョンの魔物はたいてい、徘徊するルートが決まっている。
俺は『大地の淵』のマップを余すことなく覚えているし、魔物と遭遇しないルートも低レベル攻略で何度も使った。
でも……どうせなら、今後のためにも隠し要素は回収しておきたい。
「ギミック解除とイベントバトルのクリアで仲間になる神霊、アイリィ。彼女がいれば今後が楽になる」
この世界で生きるためには力がいる。
俺は弱く、味方もいない。
だから俺は力が――アイリィが欲しい。
ゲームと同じ手順で入手できるのか不安だけど試してみる価値はある。
「早めに動くか。時間をかけると空腹で動けなくなりそうだ。水も必要だな。近場で使えそうなものを探そう。いくらなんでも装備が貧相すぎる」
靴もなければ武器もない。
こんな岩肌が露出した地面を素足で歩いていたら足の裏が裂けてしまう。
武器を持っていても敵わないのはわかっているけど、あった方がもしもの時に取れる択が増える。
それに、この骨塚にはそれなりに使えるアイテムがゲームの頃から落ちていた。
現実となった今なら他にもめぼしいものがあるかもしれない。
「転生して初めにやるのが骨塚漁りになるとは。……バチ当たらないよな?」
神霊なんて超常の存在が当たり前のようにいる世界だ。
骨塚漁りが咎められることもあり得るかもな、と思いつつ、自分が生きるために必要なことだと言い聞かせて骨の山を掻きわけた。
―――
初日は7時過ぎと18時過ぎに一話ずつ更新します。
二日目からは7時過ぎに一話の毎日更新を出来たらいいなと考えています。
執筆のモチベーションに繋がりますので、本作のフォローや星を頂けると嬉しいです!!
次の更新予定
クソ雑魚悪役貴族に転生したけど処刑された後でした~隠しキャラの美少女神霊と一緒にゲーム世界を冒険します~ 海月くらげ@書籍色々発売中! @Aoringo-_o
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