二章・好きは捨てられない
第5話 愉快な四人衆
部活体験期間が終了した、今日はその翌週の月曜日。
美術部の顔合わせということで、一年から三年までの全員が美術室に集まっていた。
「……というわけで、先輩方の自己紹介は以上っ! 次、美術部新入部員のみなさん、右から順に自己紹介してください〜」
部長の
新入部員はワタシを含めて合計四人、男子一人に女子三人。
今年は吹奏楽部が勧誘に力を入れてて、文化部加入予定の子をほとんど掻っ攫ったらしい。
「えぇ、自分
そう話す
よ、陽キャだ、コワイ……落ち着いてワタシ、自分がコミュ障だってバレてないんだから堂々としてればいいのよ。
「次は私ですね!
キャラ濃っ!
「権田」って強そうな苗字に対して、本人はまさかのゆるふわ系のお姉さんキャラかよ。しかも二つの趣味どっちも美術と全く関係ないし、なんでこの人美術部に入ったわけ。
ツッコミはさて置き、次はワタシの番だ。
落ち着けワタシ、無難な自己紹介でいいのよ。ば、バレないから心配しないで。
「し、篠原、モズです! あ、えっと……イラじゃなくてデッサンが好きで、です。よろしくお願い致します……」
ま、またやっちゃった……怖くてどんどん早口になっちゃう癖。
緊張し過ぎて部長のニコニコ顔をガン見しちゃってた。
「それじゃ、次最後ッ! 部長の私の推薦枠!! どぞーー!」
「そういうのやめてくんない? ハズいんだけど」
推薦枠? てかタメ口で部長と話してるんだけど、大型新人?
「青井ケイト。絵はというか、美術は全くの未経験です。よろしくお願いします」
本当に未経験? めちゃくちゃ落ち着いてるしクールだし、執筆歴20年目みたいなオーラ出てるんですけど。
てかよく見るとビジュ良っ、というか顔が凄まじく良い! す、好きかも……
つり目具合が程よくて猫ちゃんみたいだし、小顔にノーメイクと思えないぐらい瑞々しい唇、しかも首筋にホクロあるのめちゃくちゃワタシの癖に刺さるんだけど。休日はマニアしか通わなそうなCDショップに居そう……
「これで全員の顔合わせは終了だね! 三年生のみなさんは展示が近いので引き続き製作に取り掛かってください。批評会近いのでサボらないように、三年になっても先生にボロクソ言われるのはカッコ悪いですからね。二年生はラフ描きとキャンパスの大きさ決めといてね。質問等々は先生に聞くように、以上」
各学年への的確な指示を伝え終えると、部長はワタシたち四人組にクロッキー帳を一冊ずつ配ってくれた。
「新入部員のみんなは私が直接見てあげるね! みんなのレベルまだよくわからないからさ、今日はこれを描いてみてほしいんだ……あ、ケイトちゃん、シャーペンはNG! 私のカバン横の鉛筆と練り消しを使って」
デッサンは鉛筆で行うという常識すら知らないのか、もしかして青井さんは本当に未経験?
それか案外道具にこだわりがないだけで、どんな筆であろうと上手に描けるアピールとかではないだろうか。
ワタシが深読みしてる間、部長はテキパキとモチーフを並べてくれた。
新入部員四人の中心に位置するように、真っ白な球体・四方体・円柱の石膏像をバランス良く並べた。
30分経過したら様子を見に来ると言って、部長は上級生方の監督へ向かった。
その姿はもはや部長というよりも、美術塾の敏腕教師のように見える。彼女は一体いつ自分の作品づくりしてるのかが気になった。
「ふぅ……」
描き始めてからおおよそ20分。
ワタシは大まかな線画を何とか描き終えたので、自分の席を立って練り消しゴム探すフリして他の三人の進め具合を確かめることにした。
葦田くんは部長を狙っているだけあって、硬さの違う複数本の鉛筆を使い分けて陰影までつけ始めている。
一方権田さんは対照的で、陰影には手を着けずにモチーフのヒビや汚れを繊細に描き写している。絵は細部にこだわるタイプらしい。
「最後は青井さん……──……ッ!!!」
めちゃくちゃ下手くそだ!!
線がぐちゃぐちゃな上に遠近感も全部バグってる!
ぴ、ピカソの絵? 印象派、とか?
「あ、青井さん……ちょ、調子はど、どう?」
うわぁ、下手くそすぎて思わず心配で声かけちゃったぁ!
そうとは知らずに青井さんは得意げな微笑みで答えてくれた。
「うん、絶好調」
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