第248話 フェロールに新型のマジックバッグを渡す

 そんなことを思っていると、きれいになったコボルトたちがお風呂からあがってきた。なんだろうか、なんだかとてもすがすがしい感じになっているな。お風呂を気に入ってくれたのだろうか?


「世界樹の守り人様、ありがとうございます。あのお風呂は世界樹の守り人様が作ったとお聞きしました。すばらしい。体の汚れがすべて溶け出たような気がします」

「ありがたや、ありがたや」


 ワンダさんがそう言うと、続くコボルトさんたちが拝み始めた。どうやら正解だったみたいである。コボルト族には、お風呂に入るという習慣がなかったのかな?

 それもそうか。さっきコボルト族は、着の身着のままの生活をしているって言ってたからね。きっと文明とは距離のある生活をしていたのだろう。まったく関わりがなかったわけでもなさそうだけど。


「お風呂を気に入っていただけたようでよかったです。みなさんの部屋を準備しておきましたから、案内しますよ」

「本当に部屋まで用意していただけるとは……何から何までありがとうございます。なんでもやりますので、遠慮なく、お申しつけ下さい」

「それならまずは、『世界樹の守り人様』ではなくて、リディルと呼んで下さい。ここではみんながそう呼んでいますからね」

「分かりました。それではそうさせていただきます、リディル様」


 よしよし、これでなんとか「世界樹の守り人様」呼びをなんとかしてもらえそうだぞ。その呼び方をされる度に、ローランドくんが不思議そうな表情をして、ボクの方を見るんだよね。


 これはローランドくんにも、ボクが世界樹の守り人になっていることを話すべきなのだろうか? でも、今のところ特に世界樹さんと縁のないローランドくんにこのことを話しても、どうしようもないと思うんだよね。フェロールもまだ、世界樹さんとは縁がないみたいだし。


 そうしてコボルトさんたちを部屋まで案内したところで、ワンダさんを客室へと呼んだ。コボルトさんたちにやってもらいたい仕事があるからね。


「ワンダさん、コボルトさんたちには、ノースウエストの警備をお願いしたいと思っています。すでに妖精さんたちに警備をお願いしているんですけど、コボルトさんたちの鼻がすごく役に立つって言っていましたので」

「分かりました。全力でやらせていただきます」

「もちろんですけど、警備以外にもやりたい仕事があれば、そちらの仕事を優先してやってもらいたいと思っています。妖精さんたちの中にも、先生をやったり、牧場運営を手伝っていたり、物を売っていたりする方がいますからね」


 妖精さんたちにはもちろん、ノースウエストの警備だけじゃなくて、他のこともやってもらっている。ただし、「イタズラは絶対にしない」という約束つきでだけどね。そんな話をすると、ワンダさんが驚いていた。


「色んな種族が協力して暮らしていると聞いていましたが、本当だったのですね。分かりました。みんなにやりたいことを聞いて、無理のない仕事に従事してもらおうと思います」

「よろしくお願いします」


 これでますますノースウエストは安全になったと言えるね。変な人がよそからやって来たら、すぐに分かることだろう。今のところ、そんな人がくる気配はまったくないんだけどね。


「おっとそうだった。フェロールに渡したい物があるんだった」

「私にですか? まさか」

「うん。そのまさかだよ。フェロールのマジックバッグが完成したんだ」


 そうしてフェロールに新型のマジックバッグを渡した。これでフェロールが持っているマジックバッグは二つになったけど、たくさんあって損をすることはないだろう。以前に渡したマジックバッグも、劣化しない物を入れくらいなら役に立つので、一緒に使ってもらえることだろう。


「ありがとうございます。家宝にします」

「そこは大事にしますだよ、フェロール」


 そう言ってみんなで笑った。フェロールにはすぐに所有者の登録をしてもらったので、もうあのマジックバッグはフェロールしか使えないぞ。

 フェロールが喜んでくれたことだし、ボクは満足だぞ。さて、次はボクのマジックバッグを作らないといけないな。

 そうしたいところなんだけど。


「コボルトさんたちの姿を変える魔道具を作らないといけないよね?」

「リディル様、そんな魔道具があるのか?」

「うん。あのままの姿だと、ちょっと目立つと思うんだよね。ノースウエストの住人たちが慣れるまでは、人族の姿をしてもらった方がいいかなと思ってさ」


 しかしあの人数分の、姿を変える魔道具を作るとなると、結構、大変だぞ。ボク一人じゃ無理だな。みんなに手伝ってもらわないと。


「アルフレッド先生、みんなに手伝ってもらうことはできませんか?」

「リディルくんがお願いすれば大丈夫ですよ。むしろ逆に、みんなはリディルくんからお願いされるのを待っていると思いますよ」

「そうなんですか!?」

「そうなんですよ」


 困ったように眉を下げているアルフレッド先生。どうやらまだ、ボクに貸しがあると思っているみたいだね。ボクとしては、もうそんなものはないと思っているんだけど。

 でも、みんなが協力してくれるのなら、とっても頼りになるぞ。コボルトさんたちに不便な思いをさせないようにするためにも、お願いしにいかないといけないね。

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