第245話 さっそく開校する

 そうして視察を終えたところで、今度は続けて先生の紹介になった。最初はエルフ族、ケットシー族、妖精族、そして人族の四人体制で始めるみたいである。そこで様子を見ながら、生徒数を増やしていく予定だそうだ。


「みなさん、よろしくお願いします。この学校ですごい人材が育つようになれば、ノースウエストの未来が明るいものになることは間違いないですからね」

「任せて下さい。読み書きはもちろんですが、将来、職人としても活躍できるように、色んなことを教えるつもりですよ」

「楽しみにしてます。これはボクも通った方がいいかもしれませんね」

「いいなぁ、俺も通ってみたい」


 ローランドくんがうらやましそうにつぶやいている。ボクだってノースウエストの住人の一人には違いないからね。留学生も受け入れることができるようになれば、ローランドくんと一緒に通うのもいいだろう。


 だがしかし、この学校に通えるのは十二歳からのようである。大人も通っていいらしい。それならボクはあと五年くらいは待たないといけないな。ローランドくんも。


「そのときになったら、一緒に学校に通えるといいね。サリー嬢も一緒に誘ってみようかな?」

「ミュ!」

「それなら楽しい学校生活になりそうですね。それまでに、しっかりとした学校の土台作りをしておかなければなりませんね」


 先生たちも張り切っているようだ。もちろん先生たちには給料を支払うことになっている。今では隣町でビールを売るお金で、かなり稼ぐことができるようになっているからね。


 他にもフェロールがオークションで、エルフのブドウで作ったワインや、火酒にお神酒を売ってくれている。そこから得られるお金はかなりのものになっているみたいなんだよね。お金の管理はすべてフェロールに任せているので、どのくらいのお金があるのかはちゃんと把握していないけど。


「いつから学校を開校するのですか?」

「リディル様の許可が下りれば、いつでも開校できますよ」

「それでは明日から始めましょうか。急いで生徒募集の立て札を作らないといけないね。まさか、こんなに早く完成するとは思わなかった」

「普通なら、半年はかかるはずだぞ。さすがはリディル様が治めている領地なだけはあるな」

「ボクはあまり関係ないような気がするんだけど」


 なぜだか納得しているローランドくん。どうやらローランドくんの中で、ボクは神格化されつつあるようだ。確かに早かったけど、それはみんなの技術とやる気がすごかったからだからね? ボクがこの地にいるから、ドワーフ族やエルフ族、ケットシー族、妖精族が集まってきたとも言えるけど。


 生徒募集の立て札は先生たちが作って設置してくれるそうである。そこにはどんなことを教えるのかも、書いてくれるらしい。大人も通っていいことになっているので、気軽に通ってもらえるといいな。学ぶ機会なんて、以前はなかっただろうからね。


 学校の視察から戻ってきたボクは、マジックバッグの続きを作り始めた。もうすぐ完成なんだよね。これができたら、次はフェロールのマジックバッグだ。そのあとに、自分のマジックバッグを作ることになるかな?


 ローランドくんの作るランプの魔道具も、大詰めを迎えつつあるようだ。今は最後に組み込むための、外装部品を作っている。

 ケットシー族が作り出した、魔法文字を書くための、特殊なインクはすごいけど、やはり使い勝手はあまりよくないみたいだね。ローランドくんがものすごく苦労していた。それでもちゃんとやり遂げたのは、ローランドくんが物づくりをするのが好きだからだろう。


 そうしてなんとか作業を進めて、ついにマジックバッグが完成した。そして同じくらいに、ローランドくんのランプの魔道具も完成したようである。


「できた、これが俺が作ったランプの魔道具!」

「ボクの方も完成したよ。ほら、これがローランドくんのマジックバッグだよ」

「ありがとう! すごい……のか?」

「見た目はただの布の袋だからね。そんな反応になるのも当然か」


 ローランドくんの微妙な反応に苦笑いしつつ、まずは所有者登録をしてもらう。これでこのマジックバッグはローランドくんのものになったぞ。チクリとして血がにじみ出たところで、回復薬を飲んでもらっている。ちょっと過保護だったかな?


「すごいな、リディル様が作った回復薬は。あっという間に治ったぞ」

「そうかな? 普通だと思うけど……それよりも、試しに使ってみてよ」

「分かった」


 ローランドくんが持っていたハンカチをマジックバッグに入れた。だが、さすがにそれでは分からなかったようである。そんなわけで、ボクのマジックバッグからブドウジュースを取り出して、ローランドくんのマジックバッグの中へと入れてもらった。

「ミュ!」

「大丈夫だよ。ミューのブドウジュースはこっちにあるからね」


 そう言ってからブドウジュースを取り出すと、ミューの顔がホッとしたものになった。どうやら自分のブドウジュースがなくなったと思ったようである。ミューってこういうことには敏感に反応するよね。


「すごい……あれだけあったのに、全部なくなったぞ。これがマジックバッグの力なのか」


 ボクがあげたマジックバッグをローランドくんがしげしげと見つめている。どうやらその性能にビックリしているみたいだね。





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