第244話 学校を見学する

 フェロールの話を聞いて、ちょっと安心できたところで、さっそく学校の視察を行うことにした。もちろんローランドくんとミューも一緒である。

 マジックバッグも、ランプの魔道具も、もう少しで完成するぞ。まさか学校建設に先を越されることになるとは思わなかったけど。


「外からは見えなかったけど、中庭があるんだね」

「ここでみんなに体の動かし方を教えることになっているわ」


 まずは運動場となる中庭をアリサさんに案内してもらう。もちろんアリサさんは人族の姿になっているぞ。そんな大人の女性になっているアリサさんを、ローランドくんがちょっと気にしながら歩いていた。


 ローランドくんはアリサさんの元の姿を知らないからね。あの小さい妖精族の姿を見たら、ガッカリするかもしれないな。町の人たちもきっと驚くことだろう。そんなわけで、妖精さんたちが元の姿でいるのは、屋敷にいる間だけである。ローランドくんがいるときは人族の姿だけどね。


「おお、これは……もしかして、遊具が置いてあるの?」

「そうよ。私たちが考えて、エルフたちが使ったのよ。すごいでしょ?」

「すごく面白そう。きっと学校に通う子供たちが喜ぶと思うよ」

「すごいな。領都の学校にはこんな物はなかったぞ」


 シーソーのような物や、滑り台のような物があるな。これはなかなか面白そうである。いい運動にはなるだろうね。

 次は建物の中を案内してもらう。こちらはまさに「学校の教室」みたいな感じになっていた。黒板もちゃんとあるようだ。これは便利。


「これは黒板だよね? こんな物まであるんだ」

「人族の学校で使われているのを参考にしたのですよ。これは便利だと、今では各工房に設置されつつあるみたいです」

「そうなんですね。知らなかった」


 マジックバッグ作りでちょっと屋敷にこもりがちだったからね。これからは毎日、外に出て、みんなの様子を確認した方がよさそうだ。サボり気味の領主なんて、ちょっとダメだと思う。


「ここで使ってもらうための筆記用具も準備してありますよ。こちらはケットシーたちが準備してくれました」

「すごい! あとでお金を支払わないといけませんね」

「その必要はないみたいですよ? 薬草園のお礼だそうです」

「それじゃ、物々交換になりますね。まあ、しょうがないのかな?」


 ボクたちが作った薬草園は、今はケットシーさんたちに自由に使ってもらっている。希少な素材が比較的簡単に手に入るとあって、すごく感謝されているんだよね。


 その感謝の印として無料で筆記用具を提供してくれているのなら、ありがたく受け取るしかなさそうだ。そうでないと、ケットシーさんたちが、薬草園から自由に素材をもらうことができなくなってしまうに違いない。それだとちょっと困ることになりそうだ。


「筆記用具が無料なんだ……ノースウエストはとんでもないな」

「無料なら、たくさんの人が学校に通ってくれるようになるかもしれないね」

「この町だけじゃなくて、隣町からもくるかもしれないな。もしかすると、ウワサを聞きつけて、領都からもくるかもしれない」

「……それはちょっと困ることになりそうだね。学生寮とかが必要になるのかも」


 宿屋に部屋を借り続けるのもいいけど、限界があるからね。さすがに学校の生徒たちで宿を占拠するのはダメだろう。どうしたものか。

 これは学校に通う子供たちの様子を見ながら、早めに対処する必要がありそうだ。


「ここは、工作室みたいですね」

「そうだぜ、ここでは実際に手を動かして、色々と作ってもらうことになってる。色んな道具が置いてあるだろう?」

「確かにそうみたいだね。ここに来れば、なんでも作ることができそう」

「いいなぁ、この部屋」


 デニス親方の説明を聞いて感心していると、ローランドくんがうらやましそうにしていた。物づくりに興味がある人なら、この部屋はぜひとも欲しいと思うだろうね。かなり広い部屋だが、カリサ伯爵家の屋敷なら、準備できそうな気がする。


「次は食堂へ案内しますよ」

「ミュ!」

「食堂まであるんですね」

「ええ、そうなのですよ。宿に併設されている食堂を利用するという案もあったのですが、今、あそこは人気のお店になっているんですよね。お昼の時間帯は特に多いみたいなので、さすがに別にした方がいいだろうということになりました」

「あそこの料理はどれもおいしかったですものね」

「おいしかったな、あそこのお店の料理」

「ミュ」


 ローランドくんとミューもお店の味を思い出しているようだ。あそこの食堂は、色んな種族の料理を網羅しているからね。味を研究しているエルフさんの情熱がすごいのだ。

 今ではケットシーさんや、妖精さんが新たに料理人として加わって、ますます料理の幅が増えていた。


 なお、ドワーフ族の料理人はいない。料理のアイデアを出す専門のドワーフさんはいるみたいだけどね。同じ料理をたくさん作るのは無理らしい。さすがはドワーフ族。

 アルフレッド先生に食堂を案内してもらった。これだけの広さがあれば、お昼の時間にちゃんと食事をすませることができそうだね。ちゃんと専属の料理人が働きにくるそうである。

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