第241話 ローランドくん用のマジックバッグを作り始める
「この魔法文字ならいつもよりかは日持ちしますよね?」
「それだけでも、中に入れた物をかなりの期間、長持ちさせることができますよ。さすがに数年単位では無理ですけどね」
「マジックバッグの容量も大きくなるみたいです」
「よく分かりましたね。さすがはリディルくん。前に作ったマジックバッグの、ザッと三倍くらいの容量になりますよ」
「それはすごいですね!」
これはローランドくんのマジックバッグを作り終わったら、もう一つ、マジックバッグを作らないといけないな。もちろんそれはフェロールのためのマジックバッグである。
フェロールにはいつもお世話になっているからね。今ではあちこちへ物を売りに行ってくれたり、収穫を手伝ってくれたりしているからね。大きなマジックバッグがあれば、ますます動きやすくなるはずだ。
「リディル様、本当にそんなマジックバッグをもらってもいいのか?」
「もちろんだよ。ただし、まだ無事に完成させることができるかどうかは分からないけどね」
「俺、リディル様を応援しているからな!」
「ミュ」
「ミューと一緒に」
どうやらミューも見守ってくれるようである。ローランドくんも期待してくれているみたいだし、がんばるぞ。
そうして夕食の準備が整うまで、改良型のマジックバッグを作った。だが、さすがに難しく、完成させるまでには数日かかりそうだった。
ローランドくんはしばらくノースウエストにいるみたいだし、問題ないか。失敗しないように、慎重に作らないといけないな。
「リディル様、夕食の準備が整いましたよ」
「フェロール、戻ってきていたんだ。気がつかなかったよ。すぐに行くよ」
「気にしないで下さい。リディル様が何やらやっておりましたので、邪魔をしたら悪いかと思って、黙っておりました」
「そうだったんだね。気にしなくてもよかったのに。今、ローランドくんにマジックバッグを作ってあげているんだ。これが完成したら、フェロールにも新しいマジックバッグを作ってあげるからね」
ボクの発言に、ちょっと驚いたような顔をするフェロール。どうやらまさか二つ目のマジックバッグをもらうことになるとは思っていなかったようである。でも、あげちゃうんだよね。
「そうでしたか。楽しみにしておりますよ。さあ、冷めないうちにどうぞ。カリサ伯爵令息様もこちらへ」
「行こう、ローランドくん。ミューも一緒だよ」
「分かった」
「ミュ!」
ローランドくんは飽きることなく、ボクがマジックバッグを作っているのを見守っていた。どうやら魔道具に興味があるみたいだな。それとも、物づくりに興味があるのだろうか。ローランドくんでも魔道具を作れるようになればいいんだけどな。魔法が使えなくてもうまく魔法文字を書ける方法がないものか。
今日の夕食は、ドワーフ族とケットシー族の郷土料理の合わせ技だった。ローランドくんに色んな料理を楽しんでもらおうということらしい。これは明日はエルフ族の料理になるのかな? 妖精族の料理はしばらくはいいと思う。
「おお、なんだかすごい料理だ。元気になりそう」
「肉の量がすごいからね。こっちはドワーフ族の料理だよ。そしてこっちのスープがケットシー族の料理だね」
「ドワーフ族の料理に、ケットシー族の料理。なんだかとても珍しい料理を食べているみたいな気がするよ」
「どっちもすごくおいしいんだよ」
そうして夕食の時間が始まった。お肉はもちろんジューシーでおいしいし、スープはどこか体に染みるような味だった。ローランドくんは気に入ったみたいで、おかわりをしていた。これならすぐに、元の元気な体に戻ることができそうだね。
「デニス親方、建物の話はどうだった?」
「おう、バッチリだぜ。すぐに取りかかってくれるそうだ。開拓予定地も教えておいたから、一緒に伐採もしてくれるらしい」
「それはありがたいね。でも、いいのかな?」
「いいんだよ。現地調達で建物を建てるらしい。エルフとの共同作業だ。手のあいているケットシーたちも手伝うって言ってたぞ」
どうやらケットシー族は建築も得意みたいだね。錬金術の道具を作るだけではないようだ。これなら思ったよりも早く、新しい住居が完成するかもしれないな。ドンドン建ててもらわないと。
「学校はどうなったの?」
「そっちも問題ない。明日にでも、町のどこに建てるかを話し合うそうだ。ヨハンにも相談しないといけねぇだろう?」
「そうだったね。それならフェロールにも相談しないといけないね」
「何かありましたかな?」
そんなわけで、フェロールにも学校を建設する指示を出したことを話しておいた。ちょっと見切り発車なところがあったけど、将来的には絶対に必要になるからね。ムダにはならないと思っている。
「そうでしたか。それなら大浴場の近くがよいのではないですか? そこなら帰りに大浴場を利用してから帰ることができますからな」
「なるほど、それはいいかもしれないね。ついでに学校に通うのもありかも。それなら、大人たちが学ぶ場所もあった方がいいかな?」
「いい考えだと思いますぞ。きっと学びたかった人もいるでしょうからな」
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