第240話 土地を開拓する

 判断がつかなかったので、ミューが神獣であることは黙っておくことにしよう。でも、角が生えたウサギなので、すぐに何か変だと気がつくと思うんだけどな。それなのに気がつかないということは、このままにしておいた方がよさそうだ。


「この辺りの木を切ろうと思います」

「ちょうどよさそうだな。それじゃ、サクサクといくことにしよう」


 デニス親方がマジックバッグの中から、大きなオノを取りだした。それを見たローランドくんが、「おお」とつぶやいていた。ビックリするよね、あの大きなオノ。

 今回はこの辺り一帯の木を切ることになるので、いつもよりは気が楽だ。いつもは切っていい木と悪い木を区別する必要があるからね。


「まずはこの木からにしましょうか」

「おう、分かったぜ。坊主、頼んだぞ」

「任せてよ。ブリーズ!」

「ソイヤ!」


 どの木から切るかはアルフレッド先生に任せてしまおう。ボクではちょっと判断がつかないからね。

 ボクの魔法に合わせて、デニス親方がオノを振るった。スパンときれいに切れた木が、風に押されて、人がいない方向へと倒れた。それをアルフレッド先生が、邪魔にならないようにマジックバッグへとしまっていく。


「ミュ」

「なかなかいい感じだったかな?」

「ミュ」

「すごいんだな、リディル様は。本当に魔法が使えるんだ! それに、もしかして、みんなマジックバッグを持っているのか?」

「そうだよ。作り方を教えてもらったんだ」


 なるほどとうなずいているローランドくん。自分も作りたそうな顔をしているが、残念ながら、魔法が使えないと難しいんだよね。人族が生み出した「魔法文字の書き方」では、マジックバッグのような複雑な魔法文字は書けないからね。


 そんなことをすれば、すぐにマジックバッグが壊れてしまって、使えなくなってしまうことだろう。それでは意味がない。人族の間にマジックバッグが流通しないのはそれが原因でもあるようだ。


 そうしてみんなで伐採を行い、ある程度の広さを確保することができた。まだまだ土地は足りていないけど、こればかりは毎日、地道に伐採するしかないな。手のあいているドワーフ族とエルフ族にもお願いしないといけないね。妖精族も手伝ってくれるかな?


 いや、妖精族が手伝うなんて話になったら、みんなが警戒するかもしれない。ここは静かに見守ってもらう方がいいだろう。その方が安心すると思う。


「今日はここまでにしておきましょう」

「そうしましょうか。木材もかなり集まりましたからね」

「屋敷に戻ったら、木を解体しないといけねぇな。みんなもそろそろ戻ってくるころだろうし、手伝ってもらうとするか。何、終わったらビールを飲ませてやるって言えば、すぐに終わることだろう」


 デニス親方が笑っているが、きっとあれは自分も飲みたいんだろうな。別にいいけど。新しくノースウエストの住人が増えたことだし、お酒を造る量をもっと増やした方がいいかもしれないな。


 屋敷に戻ったところで、デニス親方はさっそく建物の建設の話をしてくれるようである。一緒に学校の建設もお願いしておこうかな。


「デニス親方、学校を町の中央付近に建てたいと思っているよ。その話も一緒にしてもらえないかな?」

「分かったぜ。ちゃんと話をしておく。だが、学校の建設はいいが、先生はどうするんだ? ドワーフは無理だぞ」

「大丈夫だよ。そこはドワーフ族に弟子入りした人にお願いするからさ。工房の見学くらいはいいよね?」

「それなら大丈夫だ」


 よしよし、生でドワーフ族が物づくりをしているところが見られるのは、とてもいい刺激になるはずだぞ。なんとなくだけど、エルフ族は先生に向いているような気がするので、エルフさんたちを中心に学校を運営したいところだね。ケットシー族にも手伝ってもらいたいところがあるんだけど、ちょっと恥ずかしがり屋なところがあるんだよね。無理はさせないようにしないと。


「リディル様、これからどうするんだ?」

「ふっふっふ、これからローランドくんのために、マジックバッグを作ろうと思っているよ」

「本当か!? ありがとう! どうやって作るのか、見学してもいいかな?」

「もちろん構わないよ。多分、見たところで分からないと思うけどね。ボクもまだアルフレッド先生から教えてもらわないと、正確には作れないからね」


 マジックバッグに使われている魔法文字は難しいのだ。なんとなく配列は覚えているんだけど、さすがに紙なんかに書き記していないと不安が残る。細かな魔法文字を書くだけでも大変なのに、失敗したりしたら目も当てられないからね。


「それではリディルくん、マジックバッグに使う魔法文字を、少しだけ増やしてみましょうか?」

「マジックバッグの性能を向上させるということですね」

「そうです。今のリディルくんなら、きっとそれができると思っていますよ」

「やります!」


 そんなわけで、ボクが持っているマジックバッグよりも、より性能のいいマジックバッグ作りが始まった。できれば時間停止の効果をつけたかったんだけど、さすがにそれは無理だった。


 あの髪の毛のように細い魔法文字を書ける気が、まったくしなかったんだよね。多分、ボクには永遠に無理なんだと思う。

 だがしかし、中に入れた物の時間をゆっくりにする効果をつけることはできそうだった。




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