第239話 世界樹さんに開拓予定地を聞きに行く
首をかしげるかのように横に曲がった世界樹さん。それを見て、ローランドくんがうろたえていた。初めて見たらびっくりするよね。ボクはもう慣れてしまっているけどさ。
「そうですけど、それは人族が勝手に決めたことですからね。どちらかと言えば、この辺りはすべて世界樹さんの土地ですよね?」
『そんなことはないのですが……リディルは本当に律儀な人ですね。分かりました。それでは私がどの辺りを切り開いてよいか、教えてあげましょう』
「ありがとうございます!」
よかった。正式に世界樹さんから許可をもらうことができたぞ。しかも、どこの土地を切り開いていいのかも教えてくれるだなんて。こんなこともあろうかとマジックバッグに入れていた地図を取り出した。
「リディル様は本当にこの木の言葉が分かるんだな。それに、もしかしてそれって、マジックバッグだったりするのか?」
「そうだよ。ローランドくんにも作ってあげようか?」
「作る!? もちろん!」
驚きと喜びが入り交じっているな。もうローランドくんの頭の中は混乱でいっぱいいっぱいなのかもしれない。そしてどうやら、考えることをやめたようだ。
世界樹さんから場所を教えてもらったら、さっそくマジックバッグを作ることにしよう。
そうして世界樹さんから話を聞きつつ、開拓予定地を決めていく。これだけの広さがあれば大丈夫そうだね。水路の近くの森を切り開くので、新たな水路建設は必要なさそうである。もしかして、それも見越してこの場所にしてくれたのかな?
「ありがとうございます。それではまずはこの土地を開拓しますね」
『この辺りの土地は地盤がしっかりしていますからね。建物を建てるのにはちょうどいいと思いますよ』
どうやら世界樹さんは地下の状態もしっかりと把握しているようである。やっぱり世界樹さんの根が、この辺りの地下には張り巡らされているのかもしれないな。そのうち地下都市とかを作っても面白いのかもしれない。
世界樹さんから許可をもらったところで屋敷へと戻る。下準備として、まずはこの土地にある木を伐採しないといけないね。
教えてもらった土地を記した地図を、アルフレッド先生とデニス親方にも見せる。先ほどまで、みんなと一緒に、屋敷の拡張について話し合っていたようだ。
「なるほど、ここならちょうどよさそうですね。さすがは世界樹です」
「この辺りは木がたくさん生い茂っていたな。これなら木材にも、しばらく困ることはなさそうだ」
アルフレッド先生とデニス親方がうなずいている。どうやら二人も納得の土地だったみたいだね。
木材の確保については、確かに重要な課題だな。木材には限りがある。新たに植えているとはいえ、育つまでには時間がかかるはずだ。ボクが木に魔力を送り込んだりしない限りは。
「これからたくさん建物を建てる必要があるからね。それならこれから、木の伐採に向かった方がいいのかな?」
「うーん、どうでしょうか。お客様が来ているのに、そこで木こりの作業をするのはどうかと」
「あ、俺、リディル様が木を伐採するところを見たいかも。どんな風にするんだ?」
どうやらローランドくんの中で、ボクはなんだか別次元の存在のように、思われ初めているようである。
それもそうか。木としゃべるし、マジックバッグは作るし、色々と普通とは違うと思われるよね。しょうがないか。
「えっと、デニス親方に木を切ってもらって、ボクは風魔法を使って、その木が安全に倒れるようにしているんだよ」
「リディル様は魔法も使えるのか!?」
「うん。まあ、そうだけど」
ものすごく驚いているな。どうやらローランドくんは魔法が使えないようである。それもそうか。魔力があれば、世界樹さんと話ができる可能性があるからね。それができないということは、そういうことである。
「見てみたいな~、リディル様の魔法」
「それじゃ、現地調査もかねて、行ってみようか。デニス親方もいいかな?」
「もちろんだぜ」
「私も行きますよ。ある程度、木を伐採しておく必要がありますからね」
「ミュ!」
そんなわけで、みんなと一緒に住宅建設予定地へと向かった。そこにはまだまだ木が生い茂っていた。さすがに水路周辺の木は伐採ずみだけどね。
ついでに水路の状態も確認しておく。うむ、特に問題はなさそうだ。さすがは精霊魔法で作っただけはあるね。
精霊魔法については、ローランドくんには悪いけど、黙っておくことにしよう。色々と混乱させることになるだろうからね。今は魔法ということにしておく。
「すごく立派な水路があるな。これだけの水路を準備するのは大変だったんじゃないのか?」
「大変だったよ。油断すると、幅や深さが違ってくるからね。特に曲がっている場所は何度も魔法で作り直したよ」
「え、この水路、魔法で作ったのか? しかも、リディル様が?」
「ボクだけじゃないけどね。アルフレッド先生もデニス親方も、ミューも手伝ってくれたよ」
「ミューも!?」
「ミュ」
そうだとばかりにうなずくミュー。そういえばローランドくんに、ミューが神獣であることは言ってなかったな。ついでに言えば、トマスさんやサリー嬢にも言ってない。これは、言っていいことなのだろうか。
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9月14日に
『世界樹の守り人』の1巻が発売になります!
ぜひ、手に取っていただければと思います。
色々と手を加えており、書き下ろしも追加しております。
どの挿絵もかわいらしく、そしてかっこよく描いていただいて
おりますので、そちらも楽しみにしていただければと思います!
よろしくお願いします!
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