第238話 住人が増える

 これからノースウエストの人たちの中にも、お金をたくさん持つ人が出てくるかもしれない。そうなると、その子供たちにはもっといい教育をしたいと思うよね。そのときに、ノースウエストに学校がなければ、他の領地にある学校へと子供を通わせることになるだろう。


 隣町には学校があるみたいなので、そこに通わせるのもありだけど、ノースウエストにあれば、その必要がなくなるよね。この辺りは自然環境もいいし、子育てには向いていると思う。


 そしてノースウエストにはドワーフ族やエルフ族、ケットシー族がいるのだ。色んな技術を学ぶのには最適な環境だぞ。

 どうせなら、子供たちと一緒に、大人たちも学校に通ってもらいたいところだね。色んな物づくりを覚える、専門学校なんてどうだろうか。


「デニス親方、みんなが色んなことを学ぶことができるような施設を作りたいと思うんだけど、どう思う?」

「坊主がやりたいなら、いいんじゃないのか? みんなも協力すると思うぞ」

「そうだよね、うまくいくかは分からないけど、まずは試しにやってみような」


 そんなわけで、ノースウエストの視察を終えて屋敷へと戻ると、そこにはドワーフさんたちの姿があった。でも、初めて見る顔の人ばかりな気がするね。

 思わずデニス親方の顔を見た。苦笑いするデニス親方。


「坊主、どうやら新しい移住者みたいだぞ」

「そうなんだね! どうも、ノースウエストの領主をやっているリディルです」

「これはこれは、話は聞いておりますよ。我々もこの地へ住まわせていただけないかと思いまして、こうして一族郎党、そろってやって参りました」

「もちろん大歓迎ですよ。部屋は、ギリギリなんとかなりそう?」

「大丈夫だ。ドワーフは酒さえあれば、詰め込んでもなんとかなる」


 そんなバカな。これは早いところ、新しく住む場所を確保しないといけないね。そして突如現れたドワーフ族たちを見て、ローランドくんがあっけにとられていた。

 そうだよね、他の場所ではこんな光景は見られないよね。


「すごいんだな、ノースウエストは」

「あはは、まあ、今は売り出し中だからね。住人が増えるのは大歓迎だよ」


 幸いなことに、土地なら有り余っているからね。世界樹さんと相談しつつ、森を少しずつ開拓していくことにしよう。世界樹さんも住人が増えることについては歓迎してくれるはずだ。どうやらひそかにみんなから魔力を集めているみたいだからね。


 そうしてさっそくドワーフさんたちに、ひとまず住む場所と、これから家を建ててほしい場所を話ていると、アルフレッド先生が戻ってきた。その後ろにはエルフさんたちの姿が。こちらも初めて見る顔のエルフさんたちばかりだ。まさか。


「あー、えっと、どうやら時期が重なってしまったみたいですね?」

「そうみたいです」


 苦笑いになるアルフレッド先生。ボクの顔も、きっと同じになっていると思う。デニス親方もちょっと困った顔になっているな。ローランドくんは先ほどと同じように驚いていた。


「えっと、ノースウエストの領主のリディルです。これからよろしくお願いします」

「おおお、ウワサ通りのようですね。これからよろしくお願いします。しかしどうやら、よろしくな時期に来てしまったようですね」

「そんなことはありませんよ。ちょっと不便な思いをさせてしまうかもしれませんけど、それもすぐになんとかしますので、任せて下さい。この町の領主として、約束しますよ」


 新しく来たエルフさんたちに不安な思いをさせないように、笑顔でそう言った。さあ、これから忙しくなるぞ。ドワーフさんとエルフさんたちにお願いして、みんなが住む家を造ってもらわないとね。


 ひとまず屋敷の中にある、あいている部屋へと案内してから、すぐにみんなのところへお願いしに行った。

 幸いなことに、以前にデニス親方とドワーフさんたちが屋敷を拡張してくれていたので、部屋の数はギリギリなんとかなった。それでも四人部屋とかになっているので、窮屈な思いをさせていることだろう。なんとかしないとね。


「デニス親方たちのおかげでなんとかなったよ」

「また同じことが起こるといけねえから、さらに屋敷を大きくしておかなければならないな」

「今度こそ、お城になりそうだね」

「お城!?」

「うん……」


 驚くローランドくん。でも、もうすでにこの屋敷は要塞のようになっているし、ここからさらに拡張したら、それはもうお城にしかならないと思うんだよね。とがった塔は建たないかもしれないけど、四角い壁でできたお城は誕生することだろう。


 みんなと一緒に新しい建物の話をすると、すぐにドワーフさんとエルフさんたちが請け負ってくれた。まずはあいている場所に建設してもらい、その間に森を切り開いて土地を確保することにしよう。

 そんなわけで、昼食を食べたのち、再び世界樹さんのところへとやって来た。


『おや、どうしたのですか?』

「世界樹さん、ノースウエストの住人が増えたので、少し森を切り開いて土地を確保したいのですが、いいですか?」

『もちろん構いませんよ。この辺りの土地はリディルのものなのでしょう? それならば、私の許可を得る必要はないと思いますけど』





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9月14日に

『世界樹の守り人』の1巻が発売になります!

ぜひ、手に取っていただければと思います。

色々と手を加えており、書き下ろしも追加しております。

どの挿絵もかわいらしく、そしてかっこよく描いていただいて

おりますので、そちらも楽しみにしていただければと思います!

よろしくお願いします!


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