第236話 ノースウエストを案内する

 みんなで朝食を食べながら、今日の予定について話す。今日のボクはローランドくんを連れて、ノースウエストを案内する予定である。


「今日はローランドくんを案内しようと思っているよ」

「それでは私は畑に行って、収穫作業をすることにします」

「アルフレッド先生、よろしくお願いします」


 うなずくアルフレッド先生。一緒に牧場の様子も見に行ってくれるそうである。そろそろ牧場経営も軌道に乗り始めたころかもしれない。新鮮なミルクが手に入るのも近いかも。


「わたくしは隣町へビールを納品しに行ってきます」

「分かったよ。一緒に隣町の様子も見てきてね」

「もちろんですとも」


 これでよし。隣町にも何か影響が出ているかもしれないからね。隣町はカリサ伯爵領なのだから。怪しい人がいたら、報告してもらわないと。またサリー嬢が呪いにかかったりしたら大変だ。


 ルミ姉さん、ニャーゴさんはいつものように物づくりに着手するようだ。ローランドくんの案内が終わったら、ボクもそこに混じることにしようかな。デニス親方はボクの護衛としてついて来てくれるそうである。


「なんだか悪い気がするな。デニス親方もやりたいことがあるんじゃないの?」

「それはそうだが、坊主の護衛も大事な仕事だからな。仕事終わりの一杯がうまいんだよ」

「なんとなく分かる気がする」

「ミュ」


 ボクの護衛にはもちろんミューにもついてもらうぞ。これなら何があっても大丈夫だね。ローランドくんが連れてきた護衛たちも一緒みたいなので、問題はないはずだ。

 朝食を終えたところでさっそく行動を開始する。まずはいつものように、世界樹さんにあいさつだね。


「世界樹さんおはようございます」

『おはよう、リディル。今日はお友達も一緒のようですね』

「はい。ローランドくんです。しばらくノースウエストに滞在することになってます」

『ふふふ、それはにぎやかになって、いいですね。しっかりとノースウエストを自慢して下さいね』

「もちろんですよ!」

「ミュ!」


 世界樹さんがちょっと得意気になっているな。たぶんだけど、世界樹さんの回りがにぎわい出したので、とてもうれしいのだろう。木の根元には食べ物が置かれているね。ドワーフさんやエルフさん、ケットシーさんたちが持って来てくれたのだろう。

 ボクもそこにエルフのブドウを置いた。


「なんだかこの木と話していたみたいだったぞ」

「ふふふ、話していたんだよ」

「へ、へ~」


 ローランドくんの目が泳いでいる。どうやらメルヘンな男の子だと思われてしまったようである。そしてローランドくんには世界樹さんの声が聞こえなかったらしい。やっぱり聞こえなかったか。人族の中で世界樹さんの声を聞くことができるのは、限られた人たちだけのようである。


 不思議そうにしているローランドくんを連れて町の中へと移動する。まずは木工所を見学することにしよう。

 そこでは主にエルフさんたちが、いつもの様に家具などを作っていた。最近では隣町からも商人が買いつけにくるそうである。もちろん、弟子入りした人族の姿もあるぞ。


「ここではボクも家具を作らせてもらっているんだよ」

「リディル様も作るのか。難しそうだけどな」


 トンカンとやっているのを見ていると、ローランドくんが苦笑いしていた。もしかすると、細かい作業が苦手だったりするのかもしれないね。それならそれで、問題ないと思う。みんな、自分のできることを精一杯やればいいのだ。


「次は陶器工房とガラス工房へ行こう」

「そんなものまであるのか。ノースウエストはすごいんだな」

「えへへ、ドワーフさんとエルフさんたちが作ってくれたんだよ」

「ミュ!」


 世界樹さんではないが、ボクだってノースウエストを自慢したいぞ。ミューも自慢したかったようで、とてもいい返事をしていた。

 そうして陶器工房とガラス工房を見学したあとに、宿屋と商店を兼ね備えた建物へとやって来た。急に大きな建物が現れて、ローランドくんがビックリしていた。


「すごいな、さっきまでの工房もすごかったけど、この建物はさらに大きいな」

「そうでしょ? ここでは一階が商店になっていて、二階からは宿屋になっているんだよ」

「商店が入っているのか。見に行くんだよな?」

「もちろんだよ」

「楽しみだ」


 今では町の人たちが利用する建物になっていた。それは商店だけでなく、宿屋もである。いつもとは違った日常を手軽に体験できるので、人気になっているのだ。

 もちろん町の人たちだけじゃなくて、外からやってくる商人さんたちも利用しているぞ。評判はかなりよくて、一階に行けばすぐに物が買えるので、とても重宝されているようだ。

 商品が補充されるのを待って、何日も泊まる人もいるとか、いないとか。


「色んな店が並んでいるな。お、魔道具が売っているのか!?」

「魔道具だけじゃなくて、錬金術で作った道具なんかも売っているよ」

「すごいな。それにしても、ずいぶんと安くないか?」

「やっぱりそうなのかな? でもこれ以上、高くなると、町の人たちが買えなくなるんだよね」





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9月14日に

『世界樹の守り人』の1巻が発売になります!

ぜひ、手に取っていただければと思います。

色々と手を加えており、書き下ろしも追加しております。

どの挿絵もかわいらしく、そしてかっこよく描いていただいて

おりますので、そちらも楽しみにしていただければと思います!

よろしくお願いします!


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