第233話 ローランドくんとお風呂に入る

 そしてサウナを行き来するみんなを見て、ローランドくんがとても興味深そうにしていた。たぶん、やってみたいんだろうな。


「リディル様、俺もあそこの中に入ってみたいんだけど、ダメかな?」

「まだちょっと早いと思うよ。でも、中がどうなっているのかをのぞくくらいなら大丈夫だと思う」

「本当か!? のぞいてみたい」

「それじゃ、行ってみようか」

「ミュ」


 サウナがあまり得意ではないミューだが、一緒について来てくれるようだ。たぶんだけど、水風呂が目的なんだろうな。

 もちろん途中で、ローランドくんに水風呂を紹介する。


「こっちは冷たいお風呂だよ」

「……うわ、本当だ。どうしてこんな物が?」

「すぐに分かるよ。おじゃましまーす」


 そう言ってからサウナの扉を開けると、中からムワッとジメジメした熱い空気が押し寄せてきた。おお、熱いな。さすがはサウナ。うまく機能しているようである。

 このサウナ、みんなにも好評なんだよね。そのため、屋敷内の他のお風呂場にも設置されているのだ。もちろん、女性専用のお風呂にもサウナはついているぞ。


 話によると、サウナに入ることで若返るそうである。そんなバカな。たぶんだけど、血行がよくなることで、体の中にたまっている老廃物が外に出やすくなっているのだと思う。

 そしてお風呂あがりの一杯を飲むことで、肌がよくなるようである。一説では、ノースウエストで売られているお酒には美肌効果があるとか、ないとか。


「なんだこれ、砂漠の真ん中にいるみたいな感じだな」

「ローランドくんは砂漠に行ったことがあるんだ」

「一度、お父様について行ったことがある。二度と行かないと思ったけど」

「そうだよね、普通はそう思うよね」


 あはは、と乾いた笑いを返した。そんなボクはお風呂場に砂漠を作っているというわけである。ローランドくんにあきれられるのもしょうがないよね。

 だが、興味はあるようだ。なんだか中に入りたそうにしている。


「ちょっとだけ、入ってみる?」

「そ、そうだな。せっかくだから、試してみようかな?」

「ミュ」


 そしてミューも巻き添えにしてサウナ室へ入った。汗が一気に噴き出してきた。体中の毛穴から汗が出ているような感じである。


「リディル様、どうしてこんな物を?」

「こことさっきの水風呂を往復することで、体調をよくすることができるんだよ。天国だって言われるときもあるかな」

「天国? まさか」


 どうやらローランドくんは信じられないようである。まあ。普通はそうだろうね。実際に整った経験がなければ、そんな風には思えないだろう。

 ローランドくんの体調のことも考えて、すぐにサウナ室をあとにした。そしてもちろん水風呂に入る。


「ここで火照った体を冷ますんだよ。そしてあそこのイスでゆっくりと過ごすんだ」

「おお、気持ちがいいな。なるほど、このために水風呂があるのか。さすがはリディル様だな」

「ミュ!」


 水風呂大好きなミューがすぐに泳ぎ始めた。最近ではいぬかきも上手になったみたいで、スイスイと泳いでいる。イヌじゃなくて、ウサギなんだけどね。まあ、それについてはおいておくことにしよう。


 体が完全に冷えてしまう前に、ローランドくんを誘って、ジェットバスがついているお風呂へと戻る。温かいお風呂に入ったことで、さらにリラックスできたような気がする。

 そしてどうやらそれはローランドくんも同じだったようである。


「あのサウナというのを一度体験しただけでも、ずいぶんと違うような気がする。なんだか体が軽くなった?」

「極限状態になったことで、体の活力が高まったのかもしれないね」

「それならもしかすると、健康にいいのかもしれないな」


 ううむ、と考え始めたローランドくん。健康にいいと言うよりかは、病気になるのを予防できると言うのが正しいのかもしれない。抵抗力が高まりそうだもんね。病気になりにくい体を作ることができたら、それだけでも十分に価値があると思う。


 お風呂からあがったところで、ブドウジュースを飲んだ。ローランドくんも気に入ってくれたようで、笑顔で飲んでいる。このブドウジュースにも健康効果があるみたいなので、しっかりと飲んで、体調を戻してほしいところだね。


 夕食も食べて、お風呂にも入り、ゆっくりと時間を過ごしたところで、今日のところは寝ることにした。少し早いけど、ローランドくんの体調のことを考えると、その方がいいだろう。


 明日はローランドくんを連れて、ノースウエストの町へ行くつもりだ。ここでしっかりとノースウエストのことをアピールして、領都でも話題にのぼるようにしたいところだね。

 ノースウエストがこれからさらに発展できるかどうかは、ここからの動きにかかっているかもしれないのだ。責任重大だぞ。


「ミュ」

「ミュー、明日もよろしくお願いね。それにしても、フェロールはまだローランドくんと一緒にきた騎士たちから話を聞いているのかな? お風呂のときもいなかったし」

「ミュ」

「まあ、明日話を聞いてみることにしようかな」




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9月14日に

『世界樹の守り人』の1巻が発売になります!

ぜひ、手に取っていただければと思います。

色々と手を加えており、書き下ろしも追加しております。

どの挿絵もかわいらしく、そしてかっこよく描いていただいて

おりますので、そちらも楽しみにしていただければと思います!

よろしくお願いします!


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