第231話 屋敷の中を案内する

 ローランドくんを連れて、部屋へと案内する。掃除はしてあるので、いつでも泊まれるようになっているはずだ。

 ちなみに屋敷の掃除をしてくれるのはエルフさんたちである。屋敷のメンテナンスもエルフさんたちだ。住まわせてもらっているお礼らしい。


 とてもありがたいんだけど、そのうちちゃんとお金を支払えるようにしたいと思っている。

 それとも、デニス親方とルミ姉さんと一緒に、お掃除ロボットを開発するべきかな? それがあれば、屋敷の掃除はとても楽になるからね。いいかもしれない。また大量の歯車を作ってくれるかどうかは分からないけど。


「ここがローランドくんの部屋だよ」

「すごいな。置かれている家具のツヤが普通じゃないように見えるんだけど」

「さすがはローランドくん。この屋敷にある家具はエルフさんたちが作っているんだよ。その一部はボクが作っていたりもするんだけどね」

「え、リディル様が!?」


 すごく驚いた様子のローランドくん。まさか領主のボクがそんなことをしているとは思ってもみなかったようである。

 これはボクが魔道具も作っていると知ったら、もっと驚くだろうな。錬金術の道具を作れるということはすでに知っているだろうからね。


「色々とできることを増やしたいと思ってさ。色んなことに挑戦しているんだ」

「リディル様はすごいな。俺なんて、剣術の訓練しかやってない。あ、最近は少しだけ、馬に乗る練習もしているか」

「いいね、ボクも馬に乗る練習をしたいと思っているんだけど、危ないからなかなか難しくてね」

「俺もそうだよ。だから少しだけなんだ。背の低い馬がいればよかったんだけどな」


 背の低い馬か。確かにそんな馬がいたら、ボクたちでも乗馬の練習ができるかもしれないね。まだ見たことがないので、この辺りにはいないんだろうな。

 ローランドくんを部屋へ案内したついでに、ザックリと屋敷の中を案内することにした。


 ダイニングルームとお風呂場くらいでいいかな? デニス親方の工房とか、錬金術工房とかはあとにしよう。

 そんなわけで、まずはダイニングルームへと案内する。そこに設置されていた冷蔵庫と冷凍庫の魔道具に驚くローランドくん。


「これ、魔道具だよな?」

「そうだよ。デニス親方と一緒に作ったんだ。中に入れた物を冷やすことができるんだ。こっちは中に入れた物を凍らせることができるよ」

「すごい……中を見てもいいかな?」

「もちろんだよ」


 そんなわけで、冷やしたブドウジュースや、凍った果物、アイスなんかを見せてあげた。食べたそうにしていたので、夕食の時間にでもデザートに出すことにしよう。

 なお、ミューが素早く反応したので、飛びつかないように抱きかかえておいた。


「リディル様は魔道具も作れるのか。うらやましいな」

「もしかして、ローランドくんも魔道具に興味がある?」

「もちろんあるよ。自分で作ってみたいとも思う。でも、魔道具の作り方を学んでいる時間がないんだよね」


 眉を下げるローランドくん。カリサ伯爵の息子だもんね。将来、領地を運営するための勉強を日ごろからやっているのだと思う。そうなると、自分のやりたいことをする時間はあまりないのかもしれないな。


「組み立てるだけならそこまで難しくないけど、最初から全部作ろうとすると、かなり大変だからね」


 ボクだって、外側の部分をデニス親方たちに手伝ってもらわないと、どうにもならないときがあるからね。ボクの力では金属の板を曲げたり切ったりするのは不可能だ。早く大きくならないかな。


 ダイニングルームの次はお風呂場へと向かった。今日の夜から使ってもらうことになるので、しっかりと教えておいた方がいいだろうな。お風呂に入ったときに教えてもいいけど、一度よりも、二度教えた方が間違いがないと思う。ローランドくんに何かあったら大変だからね。怒られるくらいじゃすまないだろう。


「ここがお風呂場だよ」

「なんか、俺の知っているお風呂とは全然違うな。なんでお風呂場の中に小屋があるんだ?」

「あそこはサウナという施設だよ。ローランドくんはまだ使わない方がいいかもしれない」


 ボクの答えに首をかしげるローランドくん。病み上がりの人をサウナに入れるのはさすがによくないと思う。今回は我慢してもらった方がいいだろう。

 他にもジェットバスについても説明した。湯船に魔道具が組み込まれることを知って、ローランドくんが驚いていた。


「すごいな。まさか魔道具がついてるとは思わなかった。これはお風呂に入るのが楽しみだな」

「楽しみにしててよ。きっと喜んでもらえると思うからさ」


 見学を終えたところで、夕食ができるまで、ローランドくんには部屋で休んでおくように言っておいた。その間に、みんなと一緒に夕食の準備を始めた。せっかくここまで来てくれたので、エルフ族とドワーフ族、ケットシー族の郷土料理を食べてもらうことにしよう。どれもおいしいので、きっと気に入ってくれるはずだ。

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