第230話 その後の話を聞く
改めてローランドくんがお礼を言ったところで、カリサ伯爵家の話を聞いた。やっぱりあのあと、どうなったか気になるからね。
だがしかし、ローランドくんも詳しい話を聞いていないそうである。
「たぶんだけど、俺にはまだ早いって思われたんじゃないかな」
「確かにそうかもしれないね。それならボクに話すのも早いと思われているかもしれないな。フェロール、ボクの代わりに、ローランドくんと一緒に来た騎士たちから、話を聞いてもらえないかな? フェロールは大人だから、話してくれるかもしれない」
「分かりました。それではそのように」
フェロールがすぐに動いてくれた。ローランドくんはなんだか申し訳なさそうな顔をしているな。別に気にしなくてもいいのに。ボクがカリサ伯爵の立場だったとしても、同じことをしただろうからね。
そこからは空気を変えるべく、ノースウエストについての話をした。隠すことなんてないので、ノースウエストには人族だけでなく、ドワーフさんや、エルフさん、妖精さん、ケットシーさんがいることを話した。もちろん世界樹があることも話している。
「リディル様を疑うわけじゃないけど、それ、本当なのか? どれもおとぎ話の中でしか、聞いたことがない名前ばかりだぞ」
「本当だよ。アルフレッド先生はエルフだし、デニス親方はドワーフだよ。あと、妖精さんたちは今も姿を隠して、ボクのことを見守っていると思う」
「そう、なのか?」
キョロキョロとするローランドくん。どうやら信じられないようである。そこでアルフレッド先生が姿を変える魔道具を外してくれた。そしてそのとがった耳を見て、ローランドくんが目を丸くしていた。
「本当だったんだ。あのとき隠していたのは、やっぱり見つかると色々と騒がれるからだよな?」
「そうなるね。ノースウエストの人たちはもう慣れているけど、ノースウエストの外では違うからね。姿を変えないと、大騒ぎになると思う」
「俺もそう思う」
ローランドくんがうなずいたところで、アリサさんが姿を見せた。他の妖精さんたちは隠れたままのようである。そう簡単には手札を見せないつもりのようだ。それはそれで、なんだか頼もしいね。
「人族がいるところで私たちが姿を見せたら、みんな捕まえようとするのよね。まあ、そう簡単には捕まらないんだけど」
「うわ! ほ、本当に妖精だ。すごい!」
アリサさんを見てテンションが上がったローランドくん。どうやらノースウエストのすごさを実感してくれたみたいである。
ノースウエストは色んな種族が仲良く暮らす、他とは全然違う特色を持った町だからね。それができるのも、きっと世界樹さんのおかげなのだろう。
「ケットシーさんたちは大きなネコの姿になるんだよ」
「すごいな~、見てみたいな~」
「ケットシーさんたちは警戒心が強いみたいだからね。この屋敷の中でなら、見られると思うよ。外だと、ちょっと無理かもしれない」
ボクの屋敷にいるときはネコの姿をしているんだけど、外に出るときはみんな姿を変える魔道具を使って、人族の姿をするんだよね。たぶんだけど、妖精さんたちみたいに、逃げるのが得意じゃないんだろうな。姿を消すこともできないみたいだし。
「会うのが楽しみだ。やっぱりリディル様の町はすごいな。領都とは全然違う」
「辺境の地にあるからね。みんなの動きもゆったりとしてるんじゃないかな?」
「そういうわけではないと思うんだが」
困惑しているローランドくん。どうやら答えを間違ったようである。でも、領都との大きな違いって、都会にあるか、田舎にあるかの違いなのではないだろうか。都会には人や物が集まってくるけど、田舎だとそう簡単にはいかないからね。
ノースウエストの中を案内してあげたいんだけど、さすがに移動で疲れていると思う。それに、元気そうだけど、ローランドくんはまだ病み上がりのはずだ。無理をさせない方がいいと思う。
「ローランドくんはしばらくの間、ここへ泊まっていくよね?」
「そのつもりなんだが、急に押しかけたら悪いよな?」
「大丈夫だよ。ボクの屋敷にはいつも色んな人がくるからね。それに対応できるように、いつでも準備したあるんだ」
最近では屋敷の外に自分の家を持つ、ドワーフさんやエルフさんたちが増えてきた。やっぱり自分の家を持ちたいよね。その気持ちはよく分かる。そして外に出たドワーフさんやエルフさんたちが、ときどき屋敷を訪ねてきてはみんなと騒ぐので、いつでもだれかが来ていいように準備してあるのだ。
そんなことを話すと、ローランドくんも安心してくれたようである。どこか安心した表情になっていた。
「そうだ、ローランドくんの部屋を準備しないといけなかったね。なるべくボクの部屋から近い場所がいいよね?」
「そうしてもらえると安心できるかな」
「それじゃ、そうしよう。確か、三つ隣の部屋があいているからそこがいいかな」
確認のためアルフレッド先生を見ると、笑顔でうなずかれた。どうやらそこでいいみたいだな。さっそく部屋へ案内して、中の様子を確かめないといけないね。
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