第229話 ノースウエストにローランドくんがやってくる

 そうして日々を過ごしていると、最後のケットシーさんたちがノースウエストへと到着した。もちろんケットシーさんたちには姿を変える魔道具と記念の指輪を渡している。

 みんな喜んでくれてたな。そしてボクが作った指輪はどうやらひそかな人気になりつつあるようで、欲しいと思っているドワーフさんやエルフさん、妖精さんたちがいることを知ってしまった。


 ドワーフさんとエルフさんは分かるけど、妖精さん用の指輪はさすがに難しいよね? そんなわけで、妖精さんたちには腕輪にしてもらうことにした。これならなんとかなりそうだ。


 そうして欲しいと思っているみんなに、それをプレゼントすることにした。みんなにはお世話になっているからね。このくらいたやすいことである。素材については、ドワーフさんとエルフさんが協力してくれた。


 今では金の指輪や、銀の指輪も作っている。どこからこの金属を持ってきたのは分からないけどね。もしかして、ノースウエストの近くに鉱山があったりするのかな? もしそうなら、ノースウエストはお金持ちになれるぞ。


「リディルちゃん、見慣れない人たちが来たわよ。悪い人じゃないみたいだけど」

「見慣れない人? もしかしてサリー嬢かな」


 アリサさんがこちらへやって来たと思ったら、そう告げられた。普段からノースウエストを行き来している商人さんたちは、すでにアリサさんたちも知っている。だから見慣れない人なんて言わないはずだ。


 新しい商人さんかなとも思ったけど、基本的に商人さんは少人数でくるんだよね。それなら人たちとは言わないはずだ。


「女の子じゃなくて男の子ね。リディルちゃんと同じくらいの年齢かしら?」

「あ、もしかして、ローランドくん!?」


 まさかカリサ伯爵領の領都からここまで来たのかな? 呪いを解いてからそれほど時間が経過したわけじゃないけど、もうよくなったのだろうか?

 アリサさんに案内を頼んで、急いで迎えに行くことにした。隣の領地とのつき合いは大事だ。これからのノースウエストの発展がかかっているからね。

 それに、久しぶりに会う友達に、すぐに会いたい気持ちもある。


「ミュ!」

「ミューも一緒にくるんだね。悪い人たちじゃないから、ボクたちだけでも安全だと思うけど」

「大丈夫よ。私たちもいるわ!」


 そうだった。妖精さんたちがいるんだったね。きっと姿を消して、ボクたちの様子をうかがっているに違いない。

 アリサさんに案内されて向かったのは、ノースウエストと隣町を結ぶ道だった。どうやらまだ到着していないみたいだね。


 ノースウエストの入り口で待っていると、アルフレッド先生とデニス親方もやって来た。どうやら別の妖精さんが呼んでくれたようだ。


「話は聞きましたよ。カリサ伯爵の息子さんだと思うのですが」

「ボクもそう思います。あ、見えてきました。あの家紋はカリサ伯爵ですね」

「確かに見覚えがありますね」


 こちらへ向かってきた馬車には、カリサ伯爵の家紋が掲げられていた。きっとボクたちが警戒しないように掲げてくれたのだろう。普段から掲げていたら目立つからね。

 馬車は騎士たちが守っているようだ。その中には見覚えのある顔がチラホラある。あのとき、盗賊を連れて行ってくれた騎士たちのようだ。

 馬車はボクたちの前で止まった。


「リディル様、どうしてここに!?」

「ローランドくんがこちらへ向かっていると聞いて、迎えにきたんだよ」

「そうだったのか。なるべく迷惑にならないようにと思っていたんだけどな」

「迷惑だなんて思ってないよ。ノースウエストへようこそ」


 ローランドくんと軽くあいさつをしてから屋敷へと向かった。屋敷というか、立派な要塞を見て、ローランドくんが驚いているみたいだった。


「リディル様、これって屋敷じゃないよね?」

「そう見えるよね……ボクとしては屋敷として認識してもらいたいところなんだけど」

「さすがに無理があるんじゃないかな。どう見ても砦、いや、要塞だぞ」

「そうだよね、あはは」


 やっぱり要塞に見えるのか。それでもまあ、お城には見られていないようなのでまだ大丈夫そうな気がする。

 中へと案内するとすぐにサロンへと移動した。今ではこの屋敷の中にも、すてきなサロンがあるのだ。もちろんエルフさんたちが用意してくれたものである。


「すごいな。こんなに立派なサロンがあるだなんて」

「みんなが作ってくれたんだよ。ローランドくんの体はもう大丈夫なの?」

「ああ、もう問題ないぞ。これもリディル様がくれた魔法薬のおかげだな。ありがとう。そういえば、お礼がまだだったなと思ってさ」

「そんなの気にしなくていいのに」


 どうやらお礼がまだだったのが気になっていたようである。本当に気にしなくていいのに。カリサ伯爵領までの道を整備する権利をもらったので、それだけで十分である。

 そろそろノースウエストも落ち着いてきたことだし、領都まで結ぶ道の整備に着手しようと思っていたところなんだよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る