第227話 ケットシー族がやってくる
そうなると、人族を交えた歓迎会は避けた方がいいかな? ケットシーたちも、魔道具で姿を変えた状態じゃなくて、元の姿の方が居心地がいいのは間違いないだろうし。
「それでは歓迎会には人族を呼ばない方がよさそうですね」
「そうですね、最初はその方がいいかもしれません。ケットシー族の全員が、姿を変える魔道具を持っているとは限りませんからね」
確かにそれはあるな。姿を変える魔道具が必要なのは、人族のところへ行くときだけだからね。ここへくると決めたときに、準備してくれているといいんだけど、準備が間に合っていない可能性もある。
「その可能性がありましたね。ケットシーさんたちのために、姿を変える魔道具を準備しておかないといけませんね。ボクでも作れますか?」
「今のリディルくんなら、作れると思いますよ」
「それでは教えてほしいです。屋敷の改築はドワーフさんたちに任せておきましょう。どのみち、姿を変える魔道具をいくつも作りたいとは思わないでしょうからね」
「そうでしょうね」
苦笑いするアルフレッド先生。ドワーフは同じ物を作るのを嫌うからね。ここはボクたちが動くしかない。妖精さんたちは魔道具を作ることができるのかな? あの小さな体で魔道具を作れるとなれば、かなり小さな、持ち運びに便利な魔道具を作ることができそうなんだけど。
話を聞いてみたところ、魔道具や錬金術の道具も作れるそうである。だがしかし、どれも妖精仕様なので、他の種族が使うにはちょっと無理があるらしい。残念。超小型化した魔道具とか、ちょっとロマンがあったのに。
そうしてアルフレッド先生から姿を変える魔道具の作り方を教えてもらったり、屋敷の拡張にあれこれと口を挟んだりしているうちに、ケットシー族がやってくる日が来た。
なお、あれこれと口に出したおかげで、屋敷は今でもなんとか要塞の姿を保っている。ここで先端がとがった塔とかが追加されたら、もうダメかも分からないけどね。
ちなみに城壁には塔が何本か追加されている。その上にはもちろんカノンが設置されている。まだ使ったことないけど。
「リディル様、私の仲間たちが来ましたよ」
「すぐに行きます」
フェロールと顔を見合わせてうなずくと、ニャーゴさんのあとをついて行った。アルフレッド先生は畑へ行っている。今はケットシー族が増えるのに対応するために、畑を増やしているところなのだ。
もちろん錬金術工房も増やしてあるぞ。さすがはドワーフ。一週間もかからずにやってくれた。
少し森を入ったところに、ケットシーたちがいた。何人かは人族の姿をしているが、ケットシー族特有の、猫の姿をしているケットシーもいるな。こんなこともあろうかと、姿を変える魔道具を準備しておいてよかった。
「初めまして。ノースウエストの領主をやっているリディルです」
「初めまして。手紙で知ってはいましたが、本当に世界樹の守り人様なのですね」
「ありがたや、ありがたや」
「どうか我々をお導き下さい」
ボクがあいさつをすると、ケットシーたちが頭を下げて祈り始めた。どういうことなの?
わけが分からずにニャーゴさんの方を見ると、苦笑いを返された。どうやらケットシー族には過去に何かあったようである。
人族絡みなんだろうな。ボクはその人族なんだけど、大丈夫なのだろうか。ちょっと心配になってきたぞ。でもその前に、みんなの頭を上げさせないと。これでは話ができない。
「みなさん顔を上げて下さい。ノースウエストに来てくれて、ありがとうございます。しばらくは不便な思いをさせてしまうかもしれませんが、いつか必ず、みなさんが快適に過ごせるような場所にしますよ」
「顔を上げて下さい。これではリディル様が話しにくいですからね」
「ミュ」
ニャーゴさんが手伝ってくれたおかげでようやくみんなの顔が上を向いた。うむ、二足歩行する猫はやっぱりいいね。個人的にはこのままいてほしいところだけど、今はまだ無理なんだよね。いつか必ず、そのままの姿で過ごせるようにしてみせるぞ。
「みなさんには申し訳ないのですけど、しばらくの間、ノースウエストの町へ出るときには、人族の姿をしてもらいたいと思います。そのときに、これを使って下さい」
そう言ってから、フェロールの力も借りて、猫の姿をしているケットシーたちに姿を変える魔道具を渡していく。それを見たケットシーたちの目が驚きに変わっていた。
「このような貴重な物をお借りしてもいいのですか?」
「え、貴重な物? ええと、その魔道具はボクたちには使えないので、そのまま差し上げますよ」
目が丸くなったケットシーたち。どうやら相当驚いたようである。そんなケットシーたちの様子を見て、ボクも驚いた。
もしかして、姿を変える魔道具って貴重な物だったりするのかな。それにしては、それほど苦戦することもなく作ることができたんだけど。
「まさか姿を変える魔道具をいただけるとは思いませんでした」
「大事にします」
「ああ、いえ、そこまでの物でもないですよ。壊れたり、なくしたりしてしまったら、いつでも言って下さいね。修理しますし、また作りますので」
「え」
ケットシーさんたちの動きが止まった。どうやらとんでもない発言をしてしまったようである。
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