第225話 外で食べる準備をする

 翌朝、目を覚ますとなぜかアリサさんがボクの隣で寝ていた。もちろん、小さな姿でである。ちょっとドキッとした。そのことにはミューが気がついているはずだけど、何もボクに知らせなかったということは、安全だということなのだろう。


 アリサさんが人族の姿に変身する魔道具を入手したら、大変なことになりそうだぞ。そのときはどうか、目のやり場に困るような体型ではありませんように。

 隣で寝ているアリサさんを起こさないようにしながらベッドから降りる。昨日の夜は遅くまで酒盛りをしていたと思うので、今はソッとしておくことにしよう。


「ミュ」

「ミューも起きたんだね。着替えてから、朝食にしよう」


 そうして服を着替えてから食堂へと向かった。そこにはドワーフさんとエルフさん、妖精さんたちが仲良く転がっていた。なかなか見られない光景だと思う。


「リディル様」

「あ、フェロール、おはよう。これじゃ、朝食は食べられそうにないね」

「ははは、そのようですな。それでは今日の朝食は外で食べることにいたしましょう。準備しますので、少々お待ち下さい」

「分かったよ。そうさせてもらうね」


 朝食を作るのを手伝おうかとも思ったけど、この状況だと邪魔になるのは間違いない。ミューとおとなしく外で待っていることにしよう。せっかくなので、食べる場所でも作っておこうかな?


 庭に出たところで、テーブルとイスを準備することにした。ピクニックシートを地面に敷いてもいいけど、今は精霊魔法でなんとかしたい気分である。

 もっと精霊魔法を使いこなせるようになって、みんなから認められる存在にならないといけない。国を作ることになるのなら、なおさらである。まだどうなるかは分からないけどね。


「この辺でいいかな。ミュー、テーブルとイスを作ろうと思う」

「ミュ」

「だからしっかり見ててね」

「ミュ」


 うなずくミュー。何かあったら、きっとミューがなんとかしてくれることだろう。これで安心して精霊魔法を使うことができるぞ。

 意識を集中して、作るもののイメージを明確にして。


「ガイアコントロール!」


 ズモモ、と目の前の地面が隆起して、石でできた、平たい長方形の土台が完成した。でも、完成したのはいいけれど、ちょっと大きすぎるな。これじゃ、中央に置かれた物に手が届かない。


「ミュ……」

「うーん、ちょっと魔力が多すぎたかな?」

「ミュ」


 ミューがそう言ってから地面を前足で、「テシ!」と踏みつけると、目の前にあった石の土台が、いい感じの大きさになった。さすがはミュー。ボクよりもずっと精霊魔法が上手だね。ボクだって、この大量に集まってくる魔力をどうにかできれば、もっとイメージどおりになると思うんだけど。


 次は石のイスを作ることにしよう。ベンチのように長細くするくらいなら、今のボクでもなんとかなるはずだ。

 意識を集中して、魔力をなるべく集めすぎないように気をつけて。でも、ボクの意思とは関係なく、勝手にたくさんの魔力が集まってくるんだよね。最近はますます増えているような気がする。世界樹さんの成長と、何か関係があるのだろうか? 世界樹さんとつながっていたりするのかな。


「ガイアコントロール!」


 先ほどミューが形を整えてくれた石のテーブルに沿って、石のベンチが並んだ。うむ、今回はうまくいったみたいだぞ。体内に残った魔力はもちろん放出する。いつもこんな風にうまくいくといいんだけど、どうしても精霊魔法を使うときに、外に出しすぎる傾向にあるんだよね。

 外に出すと言うか、勝手に放出しているような気もするけど。


「リディル様、これは、リディル様がお作りになったのですか?」

「そうだよ。テーブルの大部分はミューが直してくれたけどね」

「ミュ」

「そうでしたか。さすがは精霊魔法ですな。これだけのことを短時間にやってのけることができるのですから。それでは、このテーブルの上に敷物を敷いて、朝食にいたしましょう」

「手伝うよ、フェロール」


 そうして準備を整えたところで朝食になった。パンと目玉焼き、ベーコンにブドウジュースの、いつもの欲張りセットである。これが一番豪華な朝食だと思います!


「ミュ」

「ミューもお気に入りだよね、この朝食。フェロール、今日はどうしようか。みんなが起きてくるのは昼過ぎになりそうな気がするんだけど」

「そうですな。それではわたくしたちだけで、畑の収穫へと向かうことにいたしましょうか」

「そうだね、そうしよう。その前に、世界樹さんにあいさつをしてくるね」


 そうして朝食を食べてから、世界樹さんのところへと向かった。いつもとは違い、フェロールだけがいることに、世界樹さんも色々と察してくれたようである。


『昨晩はずいぶんと盛り上がったみたいですね』

「そうなんですよ。仲間が増えたことに、みんな喜んでいましたからね。ボクも大人だったら、そこに混じっていたと思います」

『そんなに残念そうな顔をしないで下さい。リディルが大きくなれば、きっとその日がやって来ますよ』

「そうですよね。もう少し、我慢します。ケットシー族はあとどのくらいでノースウエストに到着する予定になっているのですか?」





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