第224話 安息の地
ケットシー族がノースウエストへくる前に、錬金術工房をたくさん用意しておかないといけないね。そこはドワーフさんたちにお願いしよう。まとめて錬金術工房を作って、そこに消防設備を設置しておけば、何かあったときでも、すぐに対処できるぞ。
そんな話をさっそくドワーフさんたちにすると、すぐに作ってくれることになった。さすがはドワーフ。頼りになるね。そしてボクたちの話を聞いていたエルフさんたちが、必要な家具類を作ってくれることになった。エルフさんたちもとっても頼りになるね。
「なんだか色んな種族が集まってきて、色んなことができるようになってきましたね」
「そうですね。リディルくんの理想の国ができつつあるのではないですか?」
「理想の国、ですか。考えたことがなかったですね」
ボクの隣にやって来たアルフレッド先生がそう言った。少し酔っているようで、ほんのりと顔が赤い。どうやらずいぶんと飲んでいるみたいだね。それだけ新しく妖精族がノースウエストの住人として加わったのがうれしかったのだろう。
ボクもうれしい。懸念材料だった「ノースウエストの防衛」が妖精たちが来てくれたことによって、大きく改善したからね。妖精さんたちの他にも、ドワーフさんたちが罠を設置してくれているみたいだし、世界樹さんも、気をつけてくれているみたいだし、十分なんじゃないかな。
「この地にはケットシー族もくるみたいですし、これからも他の種族がくるかもしれませんね」
「他にもまだ違う種族がいるのですね」
「どれも希少種になりますが、この世界のどこかで種を保っているはずですよ。そして安全な地を求めているはずです」
「もしかして、それがここですか?」
「私はそう思っていますよ」
もしかして、世界樹さんが「国を作っていい」と言っていたのは、そういうことだったのかもしれない。この地に、多種多様な種族が仲良く暮らしていける、安全な国を作ってもらいたいと。
その中にはもちろん、人族も入っているのだろう。ノースウエストの人たちはその中に選ばれているみたいだからね。
「そうなると、他の場所との交流は控えた方がいいのでしょうか?」
「そこは悩ましいところですね。私の考えなのですが、他との交流がなければ、衰退するだけなのではないかと思っています」
「なるほど、確かにそうですね。他からの刺激を受けなければ、文化も文明も停滞することになると思います」
アルフレッド先生の言う通りではあるな。でも、そこのさじ加減はとても難しそうだ。辺境のこの地に、多種多様な種族が住む場所があると分かれば、妙なことを考える人たちが出てきてもおかしくはないからね。
そのときにどうするか。みんながバラバラになって、世界中をさまようようになるのはさすがに嫌だぞ。そうなると、やっぱり隠しておいた方がいいような気がするんだけどね。
「まあ、まだ先の話ですよ。リディルくんが深刻になる必要はありません。私たちもついていますからね」
「そうですね。ボク一人が考えたところで、どうにもならないと思います。ボクにはみんなの力が必要ですからね」
「それでは、今はノースウエストを発展させることに力を入れましょう。世界樹が大きくなれば、それだけ恩恵も増えることになりますからね」
「分かりました。そうします」
世界樹さんもまだもう何段階か、進化を残しているみたいだからね。そのときに、一体何が起こるのか。もしかすると、心の清らかな者しか入ることができないような、すごいバリアみたいなものを展開することができるかもしれない。
もしそうでなくても、国を防衛するための、人型汎用兵器でも作ればいいのだ。衛星軌道上からのレーザー攻撃もありかもしれない。そのためには、もっともっと、大きくならないといけないね。今の子供の姿では、できないことが多すぎる。
「リディルくんにはこれからもっと精霊魔法を習得してもらわなければいけませんね」
「よろしくお願いします。精霊魔法も魔道具も、錬金術の道具も、もっとたくさん知りたいと思います」
まずは知識をたくさん蓄えることだな。そうすることで、色んな対策を思いつくことになるはずだ。精霊魔法の中にも、町の防衛に役立つものもあるかもしれないからね。
そう考えると、ノースウエストの戦力って、結構、高いのかもしれないな。
精霊魔法が得意なエルフさんたちがいるし、魔道具のスペシャリストであるドワーフさんたちもいる。これからケットシー族がくるとなれば、錬金術の道具による支援も、十分に期待できるだろう。そして妖精さんたちによる、情報収集能力。
これはボクが思っている以上に、町の防衛力はすごいのかもしれないな。
宴会はまだまだ続くみたいである。さすがに子供のボクでは最後までつき合いきれないので、ミューと一緒に、先に眠らせてもらうことにした。
「お休み、ミュー」
「ミュ!」
温かいミューを抱きしめながら、静かに眠りについた。
先までみんなが騒ぐ声が聞こえていたような気がしたんだけど、なんだか急に静かになったな。
「ミュ?」
もしかして、ミューが音が聞こえなくなる精霊魔法を使ってくれているのかもしれない。精霊魔法って、本当にすごい魔法だよね。
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