第223話 みんなで宴会をする
ボクもミューも、みんなと一緒に冷えたブドウジュースを飲んだ。やっぱり冷たいブドウジュースは最高だね。テーブルの上にはもちろん、デザートのエルフのブドウが置いてあるぞ。
「何このブドウジュース!」
「何このワイン!」
「何このブドウ!」
妖精さんたちから歓喜の悲鳴があがった。どうやら気に入ってもらえたみたいだね。そんな妖精さんたちの姿を見て、ドワーフさんもエルフさんも、妖精さんたちに飲み物や食べ物をすすめていた。
早くも仲間として認められたみたいだね。よかった、よかった。
燻製肉を食べたり、野菜タップリのサラダを食べたりして、しっかりとおなかを膨らませたところで、フェロールを誘ってお風呂へと向かう。みんなはまだまだ、これから騒ぐみたいだ。
「先にボクたちがお風呂に入っておこう。他のみんなは遅くなりそうだからさ」
「それがいいでしょうな。夜更かしは体に悪いですからな」
「ミュ」
アルフレッド先生とデニス親方、ニャーゴさんもみんなと一緒に騒いでいる。これはケットシー族が来れば、もっとにぎやかになりそうだね。
そうしてボクたちだけでお風呂に入っていると、隣の女風呂から歓声があがった。どうやら妖精さんたちがお風呂に入っているようだ。
「何これ、泡よ、泡!」
「こっちは地獄じゃない! どうなってるの!?」
「あ~、それはね、サウナっていうのよ。地獄から天国になる、不思議な場所なのよ」
「地獄から天国!?」
どうやらアリサさんが説明してくれているみたいだな。これなら妖精さんたちがおぼれる心配はないだろう。そしてサウナを間違って使うこともないだろう。
ルミ姉さんも妖精さんたちに説明してくれるだろうし、他にもドワーフさんとエルフさんも使い方を知っているし、問題ないはず。
「向こうはにぎやかですな」
「本当だね。混浴にしていたら、今ごろ大変なことになっていたと思う」
「そうでしょうな」
「ミュ」
苦笑いしているフェロール。ボクの懸念は正確に伝わったようである。妖精さんたちは色々とすごいからね。だからと言って、小さいままでお風呂を使ってもらうわけにもいかないし。
そうだな、デニス親方たちに頼んで、妖精さん専用のジェットバスやサウナを作ってもらおうかな。それなら小さい姿のままでも使うことができるからね。
お風呂からあがっても、宴会はまだ続いていた。そして入れ替わるように、次々とお風呂場へと向かっているようだ。
ドワーフさんたちがお風呂場へ向かう姿を見て、妖精さんたちも驚いているようだ。
「ねえ、ドワーフたちがお風呂場へ向かっているのだわ」
「ノースウエストにいるドワーフがきれい好きだという話は本当だったのだわ」
「信じられないのだわ。確かに、嫌な臭いはしなかったけど……」
……どうやらケットシー族が作った特別な消臭剤でも、ドワーフさんたちの臭いを完全に消すことはできなかったようである。どんだけお風呂に入っていないんだよ。
これからノースウエストにくるドワーフさんがいたとしたら、しっかりとお風呂に入るように、条件をつけておかないといけないな。
「デニス親方」
「おう、坊主、一緒に飲むか!?」
「いや、ボクはお酒は飲めないから。それよりも、時間があるときに、妖精さんたち専用のジェットバスとサウナを作ってもらえないかな? 大きい姿のままだと、くつろげないかもしれないし」
「なるほど、確かにそうかもな。分かった任せておけ。だがしかし、あれを小型化するのは難しそうだな」
そう言ってデニス親方が考え込み始めた。確かにそうだ。魔道具は小さくなればなるほど、作るのが難しくなるからね。その辺りのことまで考えてなかったよ。
「なんだ、デニス、できないのか?」
「それなら俺が作ってやるよ」
「な、何言ってんだ、できらぁ!」
周りにいたドワーフさんたちにあおられたデニス親方は、とても分かりやすく乗せられたようである。まあ、周りにいたドワーフさんたちもボクの話を聞いてくれていたみたいだし、きっとみんなで協力して作ってくれると思う。この感じだと、明日には完成しそうだね。
「リディルくん、ケットシー族もこのあとノースウエストにやってくるのでしたよね?」
「はい。世界樹さんがそう言ってました」
「そうなると、新たに錬金術の道具を作る場所を確保する必要がありますね。そうでないと、自分たちの部屋を改造して、作業部屋にするかもしれません」
「それはちょっと困りますね。何かあったときには大変だし、部屋が狭くて、作りたい物が作れないかもしれません」
そうなると、どこに錬金術の道具を作る部屋を準備するかが問題だな。ニャーゴさんの錬金術工房は数人でも使える大きさになっているけど、果たしてニャーゴさんがどう思うか。あとで問題になるくらいなら、最初からたくさん準備していた方がいいだろう。
「ニャーゴさん、錬金術工房は個別がいいですか? それとも、大きな部屋にいくつもの作業台を準備しても問題ないですか?」
「できれば個別の方がいいですね。他には見られたくない物を作るときもあると思いますので」
「分かりました」
どうやらケットシー族も、人族と同じように、錬金術の道具の作り方は秘密にしている物もあるようだ。
中にはとても危険な道具もあるかもしれないからね。それが世に広がるのを防止しているのかもしれない。
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