第219話 デニス親方のお気に入り

 夕食が終わるとお風呂である。久々の屋敷でのお風呂。それにサウナ。今日くらいはいつもよりもゆっくりと入ってもいいよね?

 お風呂に入る前に、アリサさんに使ってもらうための部屋を決めた。どうやら妖精は集団でいることが好きなようなので、一番広い部屋にして、そこにみんなでまとめて住んでもらうことにした。


「あとは植物があればいいわね」

「それならニャーゴさんに頼んで、準備してもらうことにします。ニャーゴさん、お願いできますか?」

「もちろんですよ。それならデニスさんに頼んで、植物を植える場所を作ってもらわないといけませんね」

「室内花壇か。まあ、なんとかなるだろ」


 アリサさんの部屋は一階なので、頑張ればビオトープとかも作れるかもしれない。それならもう庭に住んだ方がよさそうな気がするけど、雨風にさらされるのはよくないか。

 せめて虫が寄りつかないように、虫よけハーブくらいは用意しておきたいところである。


 アリサさんの部屋が決まったところで、お風呂に入ることにした。もちろん、男女で別れてお風呂に入るぞ。小さくても、アリサさんは女性なのだ。ルミ姉さんも。

 これは女湯も増やした方がいいかもしれないな。


「デニス親方、お風呂をもう一つ、女性用のお風呂を作ろうかと思ってるんだけど」

「ああ、そうだな。これからまだまだ増えるみたいだし、今のうちに作っておくか」

「お願いするね」

「それにしても、ジェットバスに慣れてしまったら、普通の風呂じゃ、物足りねぇな」


 どうやらデニス親方はこの泡が噴き出す魔道具が気に入ったみたいである。体のあちこちを刺激してくれるからね。それに、全身の毛もいい感じに洗ってくれるようだ。

 デニス親方がお風呂に入ると聞いて、アリサさんがものすごく驚いていたな。やっぱりドワーフがお風呂に入るのは珍しいことだったみたいだ。

 今ではノースウエストにいるドワーフさんたちはみんなお風呂に入っているんだけどね。


 アリサさんはボクたちのあとでルミ姉さんと一緒にお風呂に入るみたいなので、そのときにはきっと、ジェットバスで驚くことになるんじゃないかな?

 あ、もしかして、このジェットバス、アリサさんたち妖精にとっては危なかったりするんじゃないだろうか。


「アリサさんがジェットバスを使うのは危ないかもしれません。使用禁止にした方がいいですよね?」

「大丈夫ですよ。妖精族はあの姿だけでなく、私たちと同じ大きさにもなることができますからね。ただし、魔力を消費し続けるので、あまりやりたくはないみたいですけど」

「違う姿を持っているんですね。知らなかった」


 どうやら妖精さんたちは魔道具の力を借りることなく、自分の力で姿を変えることができるようだ。魔法を使うのが得意なのかな? でも、魔法が得意なエルフさんたちはそれができないみたいなんだよね。

 そうなると、元から持っている能力の違いなのかもしれない。


 アルフレッド先生、デニス親方、ニャーゴさん、フェロール、ミューと一緒にお風呂に入る。サウナへ行く人と、ジェットバスで使う人とで、うまい具合に別れている。ボクは先にサウナへ行くことにした。


「なんだかサウナも久しぶりに感じますね」

「まだノースウエストにしかない施設でしょうからね。似たようなことを体験したいのなら、火山地帯へ行くしかないと思いますよ」

「それはちょっと遠慮しておきたいですね」


 確かにサウナに近い状況なんだろうけど、サウナはそのあとで体を冷やすのがいいのだ。暑いだけじゃダメなんだよね。そしてその体を冷やすための水風呂はミューのお気に入りのようで、今もそこで泳いでる。


 水風呂にもジェットバスをつけるべきかな? ジェットバスはミューも気に入っているみたいだからね。

 そうして久しぶりのサウナとお風呂を堪能して、ルミ姉さんとアリサさんとバトンタッチする。


「アリサさん、大きくなれるそうですね?」

「そうよ。もしかして、大きい方がリディルちゃんの好みかしら?」

「そういうわけではないですけど……お風呂に設置してある魔道具を使うときは、今の小さい体では危険かもしれません」

「一体、どんな魔道具を置いているわけ!?」


 驚くアリサさんにその魔道具について話した。どうやら納得してもらえたようで、「危険な魔道具を好き好んで置いている」という誤解は解くことができたみたいだ。


「そんな面白そうな魔道具が置いてあるのね。これはお風呂に入るのが楽しみだわ」

「ちゃんと使い方を教えておくので、そこは安心してほしいッス」

「よろしくね、ルミ姉さん」


 ルミ姉さんがしっかりと請け負ってくれたので大丈夫だろう。これから妖精さんたちが増えたとしても、そのときはアリサさんがきちんと説明してくれるはずだ。

 お風呂あがりの一杯をみんなで飲みつつ、火照った体を冷ましていると、ルミ姉さんたちがお風呂からあがってきたようだ。どうやらちょっとゆっくりとしすぎたみたいだね。


「リディルちゃん、すごいわよ、あの魔道具!」

「え、アリサさん!?」


 そこにはアリサさんと思われる、絶世の美女が立っていた。しかも、かなりの薄着だ。

 下着、ちゃんとつけてるよね? と聞きたくなったほどである。なんだかドキドキしてきたぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る