第201話 犯人の狙いについて話す
サロンへ戻ったところで、先ほどの体力回復薬の話になった。この場所にいるのはボクたちだけである。カリサ伯爵も、しばらくの間、ローランドくんに寄り添うことにしたようだ。
その方がいいよね。夫人も不安そうな顔をしていたし。今ごろきっと、調理場では食べ物の用意が急ピッチで進んでいるんだろうな。消化にいいものにしてもらっていることだろう。
「ニャーゴさん、ノースウエストに戻ったら、ボクにも体力回復薬の作り方を教えてほしいな」
「もちろんですよ。素材がちょっと特殊なので、森へと集めに行かないといけませんけどね」
「ニャーゴさんは持っていないのですか?」
「持っていますけど、リディル様も採取のやり方を知っておいた方がいいかと思います」
なんだか含みのある言い方だね。どうやら特殊な集め方をするみたいだ。アルフレッド先生とデニス親方を見ると、そのやり方を知っているのか、ちょっと苦笑いである。
「坊主は虫は大丈夫か?」
「う、なんだか嫌な予感がしてきた」
「ミュ」
これ以上は聞かないでおこう。そして覚悟を決めておこう。
そんな話をしながらお茶を飲んでいると、トマスさんが頭を下げてきた。
「ありがとうございます、リディル様。おかげで私の面目も保つことができました」
「お礼などいりませんよ。当然のことをしただけですからね。カリサ伯爵領が混乱すると、ノースウエストにまで影響があるかもしれませんでしたから」
狙いはなんだったのかな? やっぱりカリサ伯爵家を混乱させることが目的だったのだろうか。その辺りはこれからカリサ伯爵が調べることだろう。同じようなことが起こらないように対策を採るはずだし、やられっぱなしではいないはずだ。
「フェロール、あとはカリサ伯爵に任せておいて大丈夫だよね?」
「大丈夫ですよ。カリサ伯爵は優秀な領主のようですからね」
フェロールがそういうのなら大丈夫かな? 今回の件で、ずいぶんとカリサ伯爵家のことを調べていたみたいだったからね。
もしかして、カリサ伯爵家が狙われた理由を知っているのだろうか。
「フェロールはどうしてカリサ伯爵家が狙われたんだと思う? 偶然、とは思えないんだけど」
「……おそらく、相手の目的はカリサ伯爵家の乗っ取りだったのではないでしょうか」
「それって、養子を送り込むってこと?」
「その可能性はあるかと」
なるほど、確かにその可能性はあるかもしれないね。カリサ伯爵家にはローランドくんしか子供がいないみたいだし、領内が騒がしくなる前に養子を取ることを決めるかもしれない。
でも、夫人と仲が悪いようには見えなかったんだよね。そのうち、次の子供が誕生するのではないだろうか。
いや、違うか。そうなると、次は夫人が狙われることになるのか。
今回、ボクが提供した上級解毒剤によって、ローランドくんを救うことができた。言い換えればそれは、カリサ伯爵家には強力な呪いでもはねのける力があることを証明することになったのだと思う。
再びカリサ伯爵家の人が狙われる可能性は低いんじゃないかな。
フェロールの発言を聞いて、アルフレッド先生たちも考え込んでいる。
その可能性があるのか、もしそうなら、カリサ伯爵家を乗っ取ってからはどうするつもりだったのか。
考えることは尽きないね。
「リディル王子殿下、なんとお礼を言えばよいのか」
サロンへやってきたのはカリサ伯爵だった。夫人はまだローランドくんと一緒にいるみたいだね。今ごろ食事を食べているのかもしれない。
「礼にはおよびませんよ。その様子だと、落ち着いたみたいですね」
「はい。今は消化によい物を食べております。ローランドも落ち着いたようです」
どうやらローランドくんはまずい魔法薬の味からは解放されたみたいだな。意識を取り戻すほどのまずい魔法薬。一体、どんな味なのか。気になるような、そうでもないような。
「カリサ伯爵、今回のことについて、何か思い当たることはありませんか?」
「……まだなんとも言えないというのが本心です。これから調査をしますので、しばらくお待ちいただければと思います」
「分かりました。それでは、何か分かり次第、すぐに教えていただければと思います」
「もちろんです」
ひとまずはこれでよしとするしかないか。なんだか心当たりがありそうだけど、それについては聞かないでおこう。何か分かれば教えてもらえることにはなったからね。
フェロールが言うように、本当にカリサ伯爵家の乗っ取りが目的だったのだろうか。カリサ伯爵家が乗っ取られたら、その次は?
カリサ伯爵領はノースウエストとの唯一、つながりのある領地である。もしかして、そこを分断しようと思ったのかな? カリサ伯爵領との流通が途絶えれば、ノースウエストは自分たちの力だけでやって行かなければならなくなる。
そうなると、ノースウエストは大打撃だ。いや、物資を調達することができなくなるので、最悪、消滅することになるだろう。もしかして、それが狙いだったのかな?
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