第192話 魔力が混じる現象
どうしてそんなことになったのか分からずに、ミューと顔を見合わせた。もちろんミューが分かるはずもなく、首をかしげている。そうだよね、分かるわけがないよね。
「ニャーゴさんには何か思い当たることがありますが? ボクの作り方がどこか違っていたとか」
「いえ、そんなことはありませんでしたよ。私と同じでしたし、使っている素材も同じでした」
改めて、先ほど魔法薬を作るときに使った素材の残りを確かめ始めたニャーゴさん。念のため、鑑定板に載せて確認しているが、特に変わった様子はないみたいだった。
だが、何かに気がついたかのように、ニャーゴさんがうなずいた。
「そうなると、リディル様が作った魔法薬には知らない間に、何か特殊な効果が付与されるのかもしれません。魔法薬だけではなくて、錬金術で作った道具にも、何かしらの効果が付与されるのかもしれませんね」
「そんなことってあるのですか?」
「ごくまれに。なんらかの加護を持っていると、そのようなことが起こることがあると聞いたことがあります」
どうやらそんなことはあるらしい。世界って、本当に広いな。ボクの知らないことがまだまだあるみたいだね。
でも、何かの加護か。ボクには……そうか!
「もしかして、世界樹の守り人に選ばれたからですか?」
「おそらくそうではないかと思います」
笑顔を浮かべているニャーゴさん。どうやらボクと同じ考えになったようである。と言うか、考えてみればそれしかないよね。王子様だからということはないだろう。
それこそ、王子様が特殊な力を持っているとか、聞いたことがない。もちろん、国王になると特殊な力が備わるという話も聞いたことがないぞ。
「あとでアルフレッド先生にも確認をしてみようと思います」
「私がどうかしましたか?」
「アルフレッド先生!」
ちょうどよく、アルフレッド先生とフェロールが錬金術工房へやって来た。そのまま二人に先ほどの話をする。
アルフレッド先生はその話に興味を持ったようで、ボクが作った解毒剤をじっくりと観察していた。何か分かるのかな?
「どうやら間違いなさそうですね。この解毒剤にはほんの少しですが、リディルくんの魔力が混じっているようです」
「ボクの魔力が?」
「そうです。おそらくそれが解呪の効果を生み出しているのではないでしょうか」
そんなことってあるんだね。そしてさすがは魔力が見えるアルフレッド先生の目。魔法のことに関してはなんでもお見通しのようである。すごい。
そうなると、ボクが作った回復薬にも何か効果があるのかもしれない。そう思って、改めて、鑑定板を使って確認してもらった。
「どうやらリディル様が作った回復薬には、持続回復効果が追加で付与されているみたいですね」
「持続回復効果……それも珍しいのですか?」
「もちろんです。希少な素材を使う必要がありますよ」
「ミュ」
ニャーゴさんの言葉を聞いて、ミューも驚いているようだった。アルフレッド先生も驚いているのか、何度もボクが作った回復薬を見ていた。
「確か、解呪の効果や持続回復効果のある素材は、どれも世界樹の素材ですよね?」
「よくご存じですね。さすがはアルフレッドさん」
感心しているニャーゴさん。アルフレッド先生が錬金術を使っている姿は、ニャーゴさんがくるまでは見たことがなかったけど、世界中を旅していたことがあるだけに、色々と知っているようである。
すごいなー。世界を旅するか。やっぱり憧れちゃうね。
「そうなると、やっぱり世界樹の守り人と何か関係だがありそうですよね」
「あるでしょうね。リディルくんは世界樹の素材が生み出す希少な効果を、それを使わずに再現できるのかもしれませんね」
「それはすごいですね!」
ニャーゴさんが興奮しているな。目がランランと輝いている。尻尾も立ってるし。
どうやら世界樹の守り人としての力は、植物を育てるのが得意になるだけじゃなかったみたいだね。
もしかすると、他にも何かしらの不思議な力を持っているのかもしれないね。いつの日かそれが分かるといいんだけど。
「それなら、これからはもっと錬金術の道具を作った方がよさそうですね。そうなると、素材がたくさん必要になりますよね」
「そうなりますね。でも、これまで通りに作るのならば、今のままでも素材が不足することはないと思いますよ」
ニャーゴさんはそう言っているけど、今のところ、素材を集めているのはニャーゴさんだけなんだよね。もし大量生産するようになったとすれば、全然足りないと思う。
それならば。
「ニャーゴさん、屋敷のお庭に薬草園を作るのはどうですか?」
「薬草園ですか?」
ちょっと驚いた様子のニャーゴさん。どうやらその発想はなかったようだ。もしかして、素材になる植物を育てるのって難しいのかな? でも、みんなの力を合わせれば、やれそうな気がするんだよね。
「ボクは植物を育てるのが得意みたいですし、植物に詳しいアルフレッド先生もいます。そこにニャーゴさんの知識が組み合わさったら、色んな種類の素材を育てることができると思うんだけど」
「なるほど」
「いい考えですね。私は賛成ですよ」
「ミュ!」
うなずくニャーゴさん。そしてアルフレッド先生はすぐに賛成してくれた。もちろんミューも手をあげて、参加を表明してくれているぞ。
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