第191話 解毒剤の効果を確認する

「それにしても、町長が購入した魔法薬では病状が回復しなかったとは。一体、どんな魔法薬を使ったのかが気になりますね」

「確かに気になるかもしれない。でも、トマスさんには鑑定の魔道具を渡しているので、変な魔法薬は使っていないと思うんですよね」

「うーん、そうなると、リディル様が作った解毒剤には、何か別の特殊な効果があったのかもしれませんね」


 腕を組んで考え込み始めたニャーゴさん。別の特殊な効果ってなんだろうか。鑑定の魔道具で見た限りでは普通の解毒剤だったと思うんだけど。


「リディル様が作った解毒剤は一つだけでしたよね?」

「そうです。それで、ここでまた新しい解毒剤を作らせてもらえないかと思って」

「もちろん構いませんよ。一緒に作りましょう」


 よかった。これでまた、解毒剤を補充することができるぞ。今度はいくつか、作っておきたいところだね。マジックバッグに入れておけば、場所を取らない。錬金術の道具なら、食べ物と違って、そう簡単に品質は悪くならないはずだ。


 ニャーゴさんと一緒に解毒剤を作る。使う道具も、使う素材も、ニャーゴさんとまったく同じ物を使っている。

 解毒剤は一度作ったことがあるため、ニャーゴさんから一から十まで聞かなくても作ることができた。


「ニャーゴさん、完成しました」

「私もできあがりましたよ。そうですね、せっかくなので見比べてみましょう」


 何か思うところがあったのか、ニャーゴさんが鑑定の魔道具を取り出して、お互いに作った解毒剤を確認し始めた。

 どうやらニャーゴさんはボクが作った錬金術の道具が普通ではないと思っているみたいだな。


 でも、見ての通り、ニャーゴさんと同じ作り方をしたんだよね。素材も同じ物を半分にして使ったし。

 そして見た目も、どこをどう見ても同じにしか見えない。


「ミュ」

「ミューは何か気になることがあるの?」

「ミュ」


 うなずくミュー。どうやらミューには何か気になることがあったみたいだ。言葉が分からないのでそれがなんなのか、サッパリ分からないけどね。


「うーん、鑑定の結果は同じなんですが、何かが引っかかりますね」

「ニャーゴさん、鑑定の魔道具で読み取れない特殊な効果があるんですか? なんだかミューも気になることがあるみたいなんだけど」

「もちろんありますよ。この鑑定の魔道具は万能ではありませんからね」


 知らなかった。勝手にどんなことでも鑑定できるのだと思っていた。希少性が高い効果については事例が少なくて、簡単には読み取れないのかな?

 鑑定の魔道具を使っても分からない効果をどうやって調べるのだろうか。疑問に思いつつもニャーゴさんを見ていると、ニャーゴさんがマジックバッグから、板状の物を取り出した。初めて見るんだけど、なんだろうか。


「これは鑑定の魔道具の上位品になりますね。鑑定板という名前です」

「鑑定板ですか。なんだか鑑定の魔道具よりも大きいし、使いにくそうですね」

「リディル様のおっしゃる通り、とても使い勝手が悪いです。そのため、今ではほとんど使われていませんね。私も使うのは久しぶりです。まずは壊れていないか確かめないと」


 どうやらこの魔道具は「旧式の鑑定の魔道具」みたいだね。今の鑑定の魔道具は持ち運びに便利なように小さくなっている。

 鑑定の魔道具の上位品ということは、きっとなんでも調べることができるんだろうな。ちょっとドキドキしてきたぞ。


「どうやら壊れてはいないようです。それではさっそく使ってみましょうか。まずは私が作った解毒剤から鑑定してみましょう」


 鑑定板の上に自分が作った解毒剤を置くニャーゴさん。ニャーゴさんがスイッチらしき物を操作すると、一瞬だけ板が光った。そしてすぐに板の表面に鑑定結果が表示された。

 うん、鑑定の魔道具と同じ結果が出ているね。特に変わったところは見られない。


「それでは次はリディル様が作った解毒剤を鑑定してみましょう」


 そう言ってニャーゴさんがボクの作った解毒剤を鑑定板の上に載せた。そんなニャーゴさんの様子をドキドキしながら、ミューと一緒に見つめる。

 ニャーゴさんがスイッチを押した。


「これは……!」

「解呪? これって、のろいを解く効果ですか?」

「ええ、そうです。そうですが、解毒剤にこの効果が備わっているのは初めて見ましたよ」


 ニャーゴさんが目を大きくして驚いている。どうやらとても珍しいことみたいだね。それもそうか。これまでたくさんの魔法薬を作ってきたニャーゴさんが驚いているのだから。それに、希少な効果みたいだし。

 もしかしたら、ニャーゴさんが気づかなかっただけかもしれないけど。


「鑑定板を使わないと分からない効果なら、ニャーゴさんが作った物の中には、同じ効果の物があったのかもしれませんよ?」

「その可能性は低い、いや、まずないと思います。解呪の効果をつけるためには、それ相応の素材が必要になるのですよ。しかもそれらはなかなか手に入らない素材ばかりなのです」


 キッパリと、そしてちょっと興奮気味にニャーゴさんが話した。どうやらそれらの素材を使うことなく、解呪の効果のある魔法薬ができあがるのはあり得ないことのようだ。それならどうしてボクが作った解毒剤にその効果が?

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