第190話 ノースウエストに帰ってから報告する

 乗合馬車も確認できたし、料理店に貸している冷蔵庫と冷凍庫の魔道具に問題がないことも確認できた。

 これで今日、やろうと思っていたことは全て終わったね。

 最後にサリー嬢が病になっていたのは予想外だったけど、無事に元気になったみたいだし、よかった、よかった。


「念のため、サリー嬢をニャーゴさんに見てもらった方がいいのかな?」

「どうだろうな。確かにニャーゴは優秀な錬金術師なのかもしれねえが、病にまで詳しいとは限らないからな」

「それもそうだね。フェロールがもう大丈夫だって言ったことだし、もう心配はいらないよね」


 確認するかのようにフェロールに問いかけると、力強くうなずいてくれた。どうやら自信があるみたいだね。これなら問題なさそうだ。


「もしまた病状が悪化したら、今度はノースウエストにサリー嬢を連れてくると思いますよ。ノースウエストへ来れば、リディル様が作った魔法薬があることが分かっているでしょうからね」

「それなら、ニャーゴさんにお願いして、また魔法薬を作らせてもらわないといけないね。今度はもっとすごい魔法薬を作りたいかな。どんな病気や毒でも治せる魔法薬を」


 そんな魔法薬があるのかは分からないけど、ボクが作った魔法薬を飲んだ人が元気になるのなら、どんどん作っていきたいところだね。

 そのままフェロールやルミ姉さんと話している間にノースウエストへ戻ってきた。


「ただいま」

「お帰りなさい。隣町はどうでしたか?」

「前に行ったときとあまり変わりませんでした。料理店で使っている魔道具はどれも問題ありませんでしたよ」

「それはよかった。ノースウエストは大きく変わりましたからね。これからも変わるのでしょうけど。それと比べると、様変わりはしていないかもしれませんね」


 屋敷にはすでにアルフレッド先生が戻ってきていた。ニャーゴさんはいないみたいだな。離れの錬金術工房に引きこもっているのかな? それならちょうどいいかもしれない。

 ニャーゴさんのところへ行く前に、サリー嬢が病気だったことを話す。


 トマスさんや奥さんには感染していないみたいだったので、感染力のある病ではないと思うんだけど、念のためである。ノースウエストで流行すると大変だからね。もちろん、隣町で流行しても大変だ。


「そんなことが……よかったですね、リディルくんが作った魔法薬が役に立ったみたいで。これでリディルくんも少しは自信がついたのではないですか?」

「そう言われればそうですね。少し自信がついたかもしれません」


 そうだよね、ボクだってだれかの役に立つことができたのだ。ニャーゴさんに魔法薬の作り方は教えてもらったけど、ボク一人の力で作った物だからね。自分の力で解決したと言えるのかもしれない。


「病については気になりますが、感染するような病ではないのですよね?」


 ふむ、とアゴに手を当てて、アルフレッド先生がそうフェロールに尋ねた。感染力のある病だったら、フェロールが色々と助言してくれているはずだから、大丈夫だと思うんだよね。


「今のところは感染力のある病ではないと思っています。ですが、これから隣町へ行くときには、十分に注意をしておこうと思います」

「よろしくお願いしますね、フェロールさん」


 うなずくフェロール。アルフレッド先生とフェロールが、お互いに何か言いたそうだけど、ボクがここにいるから話せないのかな? それならボクはミューと一緒にニャーゴさんのところへ行くことにしよう。ニャーゴにも今回のことを話したいからね。あとはお礼を言わないと。


「ボクはこれからミュート一緒にニャーゴさんのところへ行って、同じ話をしておきますね」

「ミュ!」

「分かりました。それではよろしくお願いしますね」


 アルフレッド先生とフェロールがうなずいたところで錬金術工房へと向かう。デニス親方とルミ姉さんも二人と一緒にこの場に残るようだ。そのまま二人と一緒に、乗合馬車の話をするのかもしれない。忘れずにはっ水効果のある錬金術の道具がないかを聞いておかないといけないね。


 錬金術工房へ行くと、そこではちょうどよくニャーゴさんが休憩していた。そのままニャーゴさんに隣町でのできごとを話す。


「ニャーゴさんのおかげでサリー嬢を助けることができました。ありがとうございます」

「お礼なんてそんな。私はただ、魔法薬の作り方を教えただけですし、魔法薬を作ったのはリディル様ではないですか」


 そう言って謙遜するニャーゴさん。でも、ニャーゴさんからの教えがなければ、魔法薬も作れなかったし、サリー嬢も救えなかったかもしれない。そんな風に思っていると、ニャーゴさんがちょっと困った顔になっていた。


「私だけのおかげではありませんよ。リディル様もしっかりと貢献しておりますよ」

「ミュ」

「そうだといいのですけど」


 ダメだ、ダメだ。アルフレッド先生に言われたように、もっと自分に自信を持たなくちゃ。もうボクは何もできない、ダメダメ王子じゃないんだぞ。ちゃんとだれかに貢献できる、何者かになれたはずだ。





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